森保監督は3−4−2−1というシステムを選手に与え、あとは自主性と個性に任せた。写真;金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 気のせいでしょうか。勝利への執着心が、ゴールへの渇望が、わずかですが淡白に見えたのは。
 
 結果論でしょうか。だからスコアレスドローに終わったと見るのは。
 
 フルメンバーで臨むのはワールドカップ予選前最後となるテストマッチ、キリンチャレンジカップ。その初戦トリニダード・トバゴ戦は消化不良に終わったように感じました。
 
 エクスキューズはたくさんあります。森保監督が初めて3バックを試した試合でした。ヨーロッパ組はシーズンが終わったところで、特に昨年のロシア・ワールドカップに出場した選手たちは精神的に限界でしょう。「淡白に見えた」とする見解自体も、正確にピッチ内の選手たちの汗を表しているとは私自身思っていません。
 
 ただ、そう見えたのです。

「鬼気迫るものがあったか。その目に生死をかけた炎が宿っていたか」と言えば、「そういう試合ではない」という人もいるでしょう。しかし、「日本代表」とはそうであっていいのでしょうか。
 

 私が感じた「消化不良」感は、おそらく3バック云々よりもそこにあったと思いました。確かにいろいろな難しさはあったのだと思います。ただ、それならなおさら、結果を出さなければいけない危機感がもし選手にあれば、もっと違う色の試合になったのではないかと。
 
 そのうえで、森保監督がここで初めて導入した3バックについて見ていきましょう。
 
 森保監督はおそらく、システムと配置以外はほとんど何も明確なことは言わずにピッチに送り出した、完全なテストとしてこの試合を使ったと思われます。
 
 攻撃時には3−4−3で基本的には定められた立ち位置に立つこと。守備時には5−4−1でブロックを組み、前向きな状態から守備に入ること。
 
 そこから先。例えば、攻撃時に中島選手がサイドや下りた位置取りをしたり、守備時に右サイドの堂安選手と酒井選手で縦にズレてプレスに行く構えを時折見せたことは選手たちによるアレンジだと思われます。
 
 まずは、3−4−3に現時点での主力を並べて試合をさせてみて、どうなるか見てみた。それが良いかどうかは別にして、森保監督はこの試合をそういう場にすることを選んだ。だから、最後までシステムをいじったりはせず、選手の特徴でアレンジを加えることに終始したのでしょう。
 
 こうなると、正直、評価できるものは多くありません。
 
 トリニダード・トバゴのウイングはほとんどサイドに蓋をしに戻ることはしませんでした。だから、長友選手と酒井選手の両ウイングバックにはスタート位置をもう5メートルほど高くして、縦ではなく斜めのランニングを求めたいところでしたが、どうだったのか。
 
 ウイングバックが少し低めの位置を取るなら、シャドーの中島選手、堂安選手にサイドバックとセンターバックの間をもっと回数多く取りに行かせたいところでしたが、どうだったのか。
 
 ウイングバック一枚でサイドをえぐることができないなら、ボランチにリスク管理を任せてセンターバックの攻撃参加で攻撃に厚みをもたせたいところでしたが、どうだったのか。
 
 大迫選手との絡みのなかで、相手ディフェンスラインを突破する絵を描きたいなら、バイタルエリアで人が少なくなってしまう現象を解消したいところでしたが、どうだったのか。
 
 5バックの状態で守備に入る場面ばかりでしたが、もっとアグレッシブにボールを奪いに行く形を試してもいい相手だったと思いましたが、どうだったのか。
 

 これらの具体的なものはすべて、この試合だけでは評価できませんでした。
 
 良かったのは、とにかく3バックで1試合戦えたこと。そして、様々な組み合わせを実際に試して、森保監督も選手たちもイメージが想像だけではなくなったことでしょう。
 
 この試合を経て、次戦のエルサルバドル戦、コパ・アメリカ、そしてその後に続いていく森保ジャパンの積み上げがどのように為されていくのか、俄然楽しみになりました。
 
 森保ジャパンは第二段階に突入。これからは、きっとシステムも戦い方も様々な試みが見られていくはずです。そんな時にも、そんな時だからこそ、勝利の執着心やゴールへの飢餓感を見せつけて戦って欲しい。そう感じたトリニダード・トバゴ戦でした。日本を代表した限られた人にしか立つことを許されない舞台ですからね。
 
【著者プロフィール】
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。鹿島で不動のCBとし2007年から前人未踏のJ1リーグ3連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。現在は解説者として活躍中。