全仏オープンに出場した大坂なおみ【写真:Getty Images】

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NYタイムズ紙ウォルドースタイン記者「米国人の心を鷲づかみ」

 2019年の全仏オープン、大坂なおみ(日清食品)は3回戦でトーナメントを去った。それでも、世界ランク1位で第1シード。さらには、昨夏の全米、今年1月の全豪とグランドスラム2連勝。「ナオミ・オオサカ」の名前は世界中に知れ渡っており、ローランギャロスでもファンから大きな人気を誇った。

 大坂が人気を博しているのは、ファンの間だけではない。海外メディアの間でも同じ。もちろん、現世界女王という事実はあるが、試合後の記者会見には数多くの海外メディアが集まった。中でも、物心ついた時から暮らしているアメリカでは、ファンもメディアも大坂が大好き。「彼女は本当にチャーミングで、誰も想像つかないような発言が多いから、ファンにとってもメディアにとっても、とても新鮮な存在ですね」と語るのは、米紙ニューヨーク・タイムズのデビッド・ウォルドースタイン記者だ。

 昨夏の全米オープン決勝で、憧れだったセリーナ・ウィリアムズを破り、日本人選手としてグランドスラム初制覇の快挙を達成。それまでテニス好きなら大坂の存在を知っていたが、全米優勝後には米国では誰もが知る存在となった。

「やはりセリーナに勝ったことは衝撃でした。でも実際のところ、決勝戦のコートには『セリーナはナオミに勝てない』という雰囲気が流れていた。出産から復帰して半年あまりの36歳。かたや、メキメキと力を伸ばす20歳の新鋭。おそらく、勝機がないと一番強く感じていたのはセリーナ自身だったと思います。だから、ラケットを壊したり、暴言を吐いたり、という流れになったんでしょう。セリーナに乱されることなく優勝したナオミが天真爛漫だったことも、アメリカ人の心を鷲づかみにしました」

米国ファンが待ちわびた“次なる”スターの誕生

 タイミングも絶妙だったという。米国では長らくヴィーナス、セリーナのウィリアムズ姉妹が名実ともにトップに立ってきた。姉妹揃ってシングルスでもダブルスでも世界1位を獲得。あまりに偉大すぎる2人だが、ともに30代後半となり、アメリカのファンは次なるスターの誕生を待ちわびていた。

 そこに姿を表したのが大坂だった。日本人ではあるが米国で育ち、現在もフロリダに拠点を置く。自然に口から出るのは英語で、ウォルドースタイン記者も「時々、ナオミがアメリカ人じゃないのを忘れてしまうくらい(笑)」というほど、米国では自国のスターとして受け止められ、愛されている。

「テニスと同じくらい、みんなナオミの発言にも注目しています。彼女の会見は本当に面白い。今まで誰も持たなかった発想をするし、自分をネタにして笑わせたり、メディアを巻き込んで笑いを取ったり。予想がつかない言葉が出てくるので、みんな聞き入ってしまう。発言の面白さで言えば、スローン・スティーブンスもユニークですね。

 ただ、最近のナオミはさらに興味深くなっている。それというのも『優勝したい』と、はっきり公言するからです。そういう気持ちを隠さなくなったのは、全米、全豪と優勝して自信が持てるようになったからでしょう。自分に対する期待を高めることはいいこと。今回の全仏ではプレッシャーに負けた部分もあるでしょうが、彼女は必ず乗り越えると思います」

年間グランドスラム達成は至難の業も「一番可能性が高いのはナオミ」

 大坂はここ数年で飛躍的に成長し、サーブやショットの強さは世界屈指。21歳と若く、フィジカル面でも恵まれている。ウォルドースタイン記者は「いつか世界1位になるとは思っていたけど、こんなに早くなるとは」と驚きを隠せないが、同時に「まだまだ技術面にもメンタル面にも伸びしろがある。ここからどんな選手になるか楽しみです」と期待を込める。

 大坂自身は「いつかカレンダー通りに勝つ年間グランドスラムを達成したい」と話しているが、それも夢とは言い切れない。

「年間グランドスラム達成は本当に難しい。セリーナが年またぎで2度グランドスラム4連勝をしていますが、同じ年に4回優勝したことはありません。テニスはサーフェスが変わると全く違ったアプローチをしなければいけない。ハードコートの全豪から始まり、全仏はクレーコート。クレーに慣れた頃には芝のグラスに変わり、ウィンブルドンまでの期間はたった3週間ほど。シーズン後半で体力が落ちてきた頃に再びハードコートの全米を迎える。同じ年に全大会を制覇するのは、並大抵のことではありません。

 でも、今の現役選手で一番可能性が高いのはナオミでしょう。21歳という若さで世界女王となり、プレッシャーの中で戦う厳しさも味わった。そして、まだ成長していることが何よりも大きい。ぜひ達成する姿をみたいですね」

 力強いテニスとは裏腹の、愛くるしい個性でファンもメディアも虜にする大坂。並み居る強豪たちを圧倒し、年間グランドスラムを達成する日が来ると期待したい。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)