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もくじ

ー 失われたコンセプトカー
ー ガンディーニ、開発当時を語る
BMW、ガルミッシュ製作の思い

失われたコンセプトカー

1度発表されたクルマが再び公開される時に、これほど歓迎されることは滅多にない。しかし、週末にイタリアで開催されるコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステでは、間違いなくそうなるはずだ。

そのクルマとは、長いこと行方がわからなくなっていたBMWのコンセプトカー「ガルミッシュ」。デザインを担当したのは他でもない、ベルトーネ在籍時のマルチェロ・ガンディーニだ。

このクルマが初めて発表されたのは1970年のジュネーブ・モーターショーだった。しかし、それから姿を消し、行方不明となっていた。最近まで。

とはいえ、写真のクルマは49年前に製造されたものではない。BMWグループ・デザインとBMWクラシックのチームが、わずかな当時の写真(しかもその多くの白黒だった)をもとに、数カ月かけて複製したものなのだ。

3Dモデリングなど21世紀の技術が駆使され、オリジナルのデザインが見事に蘇った。そのボディは半世紀近く前と同じようにトリノで製作された。ガンディーニからの助言もあり、例えばボディのペイントとインテリアのトリムはオリジナルと同じ色で再現されている。

車名はバイエルン州のスキー・リゾート地から

BMWのキドニー・グリルは角張った形状に再解釈され、これが四角い箱形のガラスで覆われたヘッドランプと確かに良く合っている。

さらにCピラーのルーバーやリア・ウインドウのメッシュ・カバーなど、独自のディテールはすべてガンディーニのトレードマークであるスリークな輪郭と統合されている。

インテリアも細心の注意を払って再現された。助手席の前に備わる格納式のミラーや、センターコンソールに縦向きに搭載されたラジオをご覧いただきたい。

このクルマは、車名からもひとびとにある印象を想起させた。

「われわれはバイエルン州の有名なスキー・リゾート地にちなんでガルミッシュと名付けました。当時、イタリアでスキーは非常に人気が高かったからです。ウインター・スポーツの夢とアルプスの優美さを思い起こさせます」

ガンディーニ、開発当時を語る

BMWからガルミッシュを復元したいと初めて聞かされた時、わたしは少し驚きました」と現在80歳のガンディーニは語る。

それは2018年の夏、BMWグループ・デザインの上席副社長を務めるアドリアン・ファン・ホーイドンクは、ガンディーニから承認を得るため、トリノに住む彼を訪ねたという。

「このプロジェクトに関わることができ、わたしはとても幸せです。BMWが楽しかった昔を蘇らせようとしてくれたことを嬉しく思います。完成したクルマを見ても、わたしでさえオリジナルと見分けが付きません」

オリジナルのガルミッシュは、ベルトーネが独自のデザイン提案として製作した。

「当初のアイディアはヌッチオ・ベルトーネ自身が考えたものでした。彼はジュネーブ・モーターショーのために驚くようなショーカーをデザインすることによって、BMWとわれわれの協力関係をさらに強固にしたいと思ったのです」

「われわれが作りたかったのはモダンなミドサイズのクーペです。BMWのデザイン言語に忠実な、しかし、よりダイナミックで、さらに少々物議を醸すようなクルマにしたいと考えました」

BMW、ガルミッシュ製作の思い

「わたしにとってマルチェロ・ガンディーニは、カーデザインの巨匠の1人です。彼のデザインしたクルマは、常にわたしの仕事にインスピレーションを与えてくれる重要なソースでもあります」と、ファン・ホーイドンクは語っている。

「もう一度、BMWガルミッシュを製作することは、われわれにとってガンディーニ氏に敬意を表す絶好の機会となりました。同氏のあまり知られていない作品をひとびとに思い出させ、BMWデザインの進化にベルトーネが与えた影響にも光を当てることができました。わたしにとって、このプロジェクトに取り組む理由は1つで十分。すなわち、BMWの歴史に欠けてしまった空白を補完するということです」

「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステは、過去に思いを馳せる機会になるでしょう。しかし同時に、これから向かうべきところについても考えることになるはずです」とファン・ホーイドンクは続けた。

「マルチェロ・ガンディーニのデザインは、常にとてもクリーンです。しかし、非常にダイナミックでもあります。だから、わたしは彼の作品からこれほどインスピレーションを受けるのでしょう」

「彼は常に、ごく少ないデザイン要素を用いて、壮大な作品を創造することが可能でした。減らすことで大きな効果を生むというのは、今でも有効な現代的アプローチです」