U−20ワールドカップで、すでに決勝トーナメント進出を決めていた日本だが、その1回戦で対戦する相手は、グループリーグのすべてが終わる最後の最後までわからなかった。

 B組2位の日本が決勝トーナメント1回戦でするのは、F組2位。ところが、このF組が大混戦となったからだ。

 ポルトガル、韓国、アルゼンチン、南アフリカが入ったF組は、グループリーグ最終戦を前に、すべての国が日本の対戦相手となる可能性を残していた。

 しかも、同時刻にキックオフとなった韓国vsアルゼンチン、ポルトガルvs南アフリカの2試合は、どちらも1点を争う接戦に。試合終了の瞬間まで、ひとつのゴールが順位を入れ替えかねない、ハラハラドキドキの展開で推移した。

 はたして、日本との対戦が決まったのは韓国。アルゼンチンを2−1で下した韓国は、勝ち点6でアルゼンチンと並び、得失点差で及ばなかったもののF組2位となった。


日本が決勝トーナメント1回戦で対戦する韓国

 韓国にとって最後のアルゼンチン戦は、引き分ければ、少なくとも3位でのグループリーグ突破が確定する試合。と同時に、アルゼンチンにとっては、引き分けで首位通過が決まる試合だった。

 韓国はアルゼンチンに敗れると、グループリーグ敗退が濃厚。その一方で、勝利したとしても、2位以上になる保証はなかった(結果的に、韓国が2位になったのは、ポルトガルが南アフリカと1−1で引き分けたためだ)。

 要するに、勝っても引き分けても3位に終わる可能性がある以上、アルゼンチンと”暗黙の了解”のもと、無難に引き分けに持ち込む手もあった。それはアルゼンチンにとっても悪い話ではなかったからだ。実際、2年前の前回大会でほぼ同じ状況となった日本vsイタリアでは、2−2で迎えた試合終盤、両チームの退屈なパス回しが延々と続いた。

 しかし、「決勝トーナメント(進出の条件)は考えていなかった。目の前のアルゼンチンとの試合だけに集中していた」と、韓国のチョン・ジュンヨン監督。試合はアルゼンチンの攻勢でスタートしたものの、アルゼンチンの攻撃が停滞し始めた30分あたりから、徐々に韓国がチャンスを作り始めた。

 そして、いずれも自陣左サイドでのボール奪取からのカウンターで、韓国は42分にFWオ・セフンが、後半12分にFWチョ・ヨンウク(※選手のポジション表記はすべて、実際の布陣ではなく、大会登録時のポジションによる。以下同じ)がゴールを決めて、2点をリード。反撃に出るアルゼンチンに1点を返されたが、完勝と言っていい内容で勝ち点3を手にした。

 今大会の韓国は、ポルトガル、アルゼンチンという実力上位の相手には、守備重視の5−3−2で戦い、勝たなければならない南アフリカには、中盤の枚数を増やす4−4−2で臨んでいる。チョン・ジュンヨン監督が「今日(アルゼンチン戦)の戦術は気に入っているが、次の試合はまた別だ」と話しているように、日本戦でどのようなフォーメーション、戦術を採用してくるかはわからない。

 ただ、今大会の韓国を見る限り、4−4−2にしたからと言って、さほど攻撃の脅威が増しているわけではない。むしろ、5バックでしっかりと守備を固め、明確な武器を持つ2トップを生かしたカウンターに徹してくるほうが、日本には厄介かもしれない。

 2トップとはすなわち、先制点を決めた身長193cmのストライカー、オ・セフンと、それをアシストした左利きのテクニシャン、MFイ・ガンインである。

 18歳ながら(久保建英と同じ2001年生まれだ)、すでにバレンシアでトップデビューを果たしているイ・ガンインは、卓越した技術を生かしたキープ力で、攻撃に不可欠な存在となっている。その際立った活躍は、チョン・ジュンヨン監督も「守備から攻撃へとうまくつなげてくれる」と絶賛する。

 劣勢を強いられたアルゼンチン戦の序盤、もし彼のキープ力がなければ、韓国は攻撃の時間を作り出せず、アルゼンチンの猛攻にさらされる時間がもっと長くなり、最後まで持ちこたえることはできなかったかもしれない。

 2、3人の相手選手に囲まれても、ほとんどボールを奪われないイ・ガンインのテクニックは、中立であるはずの地元ファンを魅了した。彼がボールを持つと、スタンドは沸き、(判官びいきもあっただろうが)次第に韓国への声援を大きくしていった。

 また、自陣に押し込まれる苦しい状況が続くときには、前線のオ・セフンをターゲットにしたロングボールも有効だった。彼に放り込めば、確実にヘディングで競り勝ってくれることは、韓国の戦いを楽にしていた。

 とはいえ、警戒すべきは彼らだけではない。2トップと同等か、それ以上に要注意なのは、貴重な追加点を決めたチョ・ヨンウクだろう。2年前の前回大会にも飛び級で出場していたチョ・ヨンウクは、運動量豊富で、機を逃さないスペースへの飛び出しが抜群だ。2トップばかりに注意を払えば、痛い目に遭いかねない。

 アンカーのMFキム・ジュンミン、センターバックのDFキム・ヒュンウを中心とした守備も、今大会3試合で2失点と安定。初戦のポルトガル戦を黒星でスタートしながら、試合を重ねるごとにチームとしての完成度が高まっている様は、日本に通じるものがある。

 対する日本も、グループリーグ3試合で、失点は初戦のエクアドル戦での1点のみ。ディフェンスは計算できる状態にあり、点の取り合いは予想しにくい。韓国とは我慢比べの展開になるだろう。

 そうなると、どちらがワンチャンスをものにするかの1点勝負になりそうだが、日本にとって痛いのは、イタリア戦で負傷したFW田川亨介、MF斉藤光毅がチームを離脱したことだ。爆発的なスピードを持つ田川と、切れのいいドリブルが武器の斉藤光。ワンチャンスを生かすにはうってつけのふたりを一気に失ったことは、かなりの痛手である。

 しかしながら、日程面では、日本にアドバンテージがある。日本は韓国よりも2日早くグループリーグを終え、中5日で決勝トーナメント1回戦を迎えるのに対し、韓国は中3日。今大会の日本は、攻守の切り替えの速さと、ボールを奪いにいく際のプレー強度の高さが生命線となっており、コンディションを高く保つうえでも日程面での優位性は見逃せない。

 韓国のチョン・ジュンヨン監督も、「日本でも、他の国でも、相手がどこかは重要ではない。すぐに試合があるので、コンディションを整えたい」と話していたが、それが本心だろう。

 歴史を紐解いてみると、ことU−20年代に関しては、日本は韓国戦でかなり分が悪い。

 日本は過去、U−20ワールドカップのアジア予選(アジアU−19選手権)で何度も韓国と対戦し、そのつど、苦杯をなめさせられてきた。日本が誇る黄金世代のとき(1999年大会)ですら、グループリーグと決勝で2度対戦し、2連敗。極めつきは2009年、2011年大会で、いずれも準々決勝で敗れ、2大会連続で韓国に世界への扉を閉ざされている。

 ただし、U−20ワールドカップ本大会では、2003年大会の決勝トーナメント1回戦で一度だけ対戦があり、GK川島永嗣、MF今野泰幸らを擁する日本が2−1で勝利し、ベスト8へ進出している。韓国に先制を許しながら、途中出場のFW坂田大輔が同点ゴールを、さらに延長戦でもゴールデンゴールを決め、劇的な勝利を収めた。決勝点が決まった瞬間、歓喜に沸く選手たちの輪のなかで、先発を外されたことに納得していなかった坂田だけは、まったく喜んでいなかった様子が印象深い。

 そして、日本はこの大会を最後に、U−20ワールドカップで準々決勝へ進出できていない。16年の歳月を経て、再び韓国を下してベスト8へ駒を進めることになれば、どこか因縁めいていて面白い。

 世界大会では2度目となる対戦で、日本は16年前の再現なるか。あるいは、これまでの分の悪さが、そのまま結果に出てしまうのか。

 注目の日韓戦は、日本時間6月4日、深夜24時30分キックオフである。