5Gが新たな社会をデザインする! 運転の安全、遠隔医療、透過型ARなどの実現が間近に

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2019年5月29日〜30日の3日間、東京ビッグサイトにて、無線通信技術の研究開発に関する国内最大級のイベント「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2019(WTP2019)」が開催された。

テーマは
「ワイヤレスで新たな社会をデザインする〜5G搭載、そしてSociety 5.0へ〜」

会場内の特設パビリオン「5G Tokyo Bay Summit 2019」では、NTTドコモの5G技術を用いたソリューションや実証実験、体験コンテンツなどが展示されていた。

5Gとは「第5世代移動通信システム」であり、
・高速大容量
・低遅延
・多接続
この3つが大きな特長となっている。

スマートフォンだけでなく、遠隔医療や自動運転などの分野での活用が期待されている。


■5Gで視覚効果を拡張する「透過型ARデバイス」

顔や物体を認識させ、画面に情報を表示できる「透過型ARデバイス」


マイネットワーク構想のブースでは、5Gスマートフォンをハブとして、様々な周辺機器と接続することにより、5Gによる新しい可能性や価値を、来場者は実際に体験することができた。

「透過型ARデバイス」は、端末のカメラを通して顔や物体を認識させ、画面に情報を表示させるものだ。視覚体験を拡張するデバイスであり、5Gの技術により遠隔地の認識エンジンとの低遅延通信が可能となる。


顔を認識させると、Travelling(旅行者)であることが確認できた


たとえば、コンビニで売られている商品を撮影して、その商品に使われている原材料を調べるといった使い方ができる。
ムスリム(イスラム教徒)の方はハラールフード(許されるモノ)しか食べないという厳しい戒律がある。ハラールフードか否かをチェックしたいときにも利用することができる。


Muslim friendlyなので、ムスリムの方でも食べることができる。


応用だが、透過型ARデバイスは、表面と裏面とで、異なる映像を表示させられるので、
・表面:日本語
・裏面:海外の方の母国語
といったような、リアルタイムの翻訳時にも便利に使うことができる。


■複合現実の世界が楽しめる「Magic Leap」

MRグラス「Magic Leap」の世界をスマホで表示させた様子


5Gでは、その特長を幅広く活用したXR(AR/VR/MR)への取組みが加速するという。
具体的には、
・臨場感のあるゲーム
・リアルとバーチャルの融合
・3D映像によるレポート
こうした分野での活用が見込まれている。

たとえば、NTTドコモはマイネットワーク構想の一環として、Magic Leap社との連携を発表している。
Magic Leap社は、「Magic Leap」というMRグラスを利用して、複合現実のサービスを提供している会社だ。


左が鈴鹿サーキットの立体モデル、右がMRグラス「Magic Leap」


デモでは、鈴鹿サーキットの立体モデルの左下にあるQRコードをスマホで読み込むと、サーキットの情報が複合現実の世界としてMRグラス「Magic Leap」に表示されていた。


■5G×自動運転×AR/VRで変わる自動車の体験価値、現実と仮想空間を繋げる「Invisible-to-Visuble」

遠隔地にいる人は、仮想世界を通じて、3Dアバターとして表示される


「Invisible-to-Visuble(I2V)」は、遠隔地にいる人が仮想3Dアバターとして車両の室内に出現させる技術。自動車に乗っている人(搭乗者)はVRグラスを装着することで、仮想世界(メタバース)を通じて、遠隔地の人と同乗しているように感じられる。
また遠隔地にいる人は、あたかも乗車しているような感覚を体験することができる。

I2Vは自動運転の自動車が当たり前になった未来を見据えたもので、ドライビングの魅力を向上させる新しい乗車体験として期待されている。
・家族や知人との会話
・観光ガイドによる解説
・語学の先生による講義
これまで車室内で体験できなかった乗車体験が可能となるという。


搭乗者はVRグラスを装着することで、遠隔地の人の3Dアバターと会話ができ、同乗しているかのように感じられる


実際に体験してみると、5Gの特長でもある「高速大容量」「低遅延」により、タイムラグがなく、3Dアバターと会話が楽しめた。未来の自動運転社会の一端を垣間見たような感覚だ。


搭乗した車両内の3Dアバターで表示されていた遠隔地にいる人の様子



■5Gで実現する遠隔高度医療「モバイルSCOT」

5Gで実現する遠隔高度医療「モバイルSCOT」による手術の模型


5G時代に医療の考え方を根本から変えてくれそうなのが、遠隔高度医療「モバイルSCOT」だ。

「SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」は、東京女子医科大学が開発したスマート治療室。手術室内の医療機器のネットワーク化と可視化により、安全で高度な医療を実現する。遠隔地にいる経験豊かな医師と相談することで、現地にいる医師が手術を行うことができるという。


遠隔高度医療「モバイルSCOT」を提供する車両の模型


5Gで実現する「モバイルSCOT」の構想では、
・モバイル医療車
・モバイル戦略デスク
この2つからなる。

モバイル診療車は、場所や時間を問わず、高水準で安全な診断や治療を提供することができる。執刀医とモバイル戦略デスクの医師間で合意形成しながら、高度な手術を遂行できる。この仕組みは、医療機器をネットワークで接続して、可視化情報をモバイル戦略デスクと共有するかたちをとる。

一方、モバイル戦略デスクでは、経験豊富な医師が司令塔の役割を果たして、手術全体を監視する。5Gにより出張先や移動中でも、俯瞰した立場から執刀医に助言を与えることができる。
下記のような活用シーンを想定している。
・有事の際に病院搬送が困難な場所でも、高度な診断や治療を実施
・経験豊富な医師がモバイル戦略デスクからサポート
・地方などの過疎地域でも、高水準な医療を提供


左が5G、右が4G。5Gは高速大容量かつ低遅延なので、より高精細な画像がリアルタイムに得られる


今後、SCOTによる最先端の臨床研究を推進する東京女子医科大学との実証試験を目指していくとしている。


ひとつの画面にあらゆる医療情報が集約されている。東京女子医科大学が開発した



■自動車の死角がなくして事故防止、前方の車両が透けて見える「Invisible-to-Visible」

前方の車両が透けて見える「Invisible-to-Visible」


自動車事故をなくす新しい試みが、Valeoの車両間映像伝送システム「XtraVue」である。
車両に搭載したカメラの映像を、後続の車両に送信し、後続車はリアルタイムに映像を見ることができる。低遅延可変コーデックによる遠隔監視システムを採用しており、5G/LTEの帯域に応じて映像レートを変更するという。

たとえば、前方車両が透けて見えるので、前方車両の前にいる歩行者でも確認することができる。前方が見えづらい後続車に、前方車両の映像を見せることで、安全運転の支援を実現するとともに、車両の遠隔監視の実現も期待されている。


車両の先端には、「Invisible-to-Visible」のためのカメラが搭載されている



■車いすレースを疑似体験、遠隔地で対戦できる「5G×CYBER WHEEL」

近未来の都市で車いすレースを楽しめる「5G×CYBER WHEEL」


CYBER WHEEL(サイバー ウィール)は、ワントゥーテン(1→10)の近未来型の車いすレーサーだ。パラスポーツのひとつである車いすマラソンや、車いすレースを楽しく体験することができた。NTTドコモの5Gと連携することで、離れた場所にいるプレーヤー同士でも、車いすレースを体験することができるようになった。

今回のコースは実際の都市をベースに設計されており、来場者はよりリアリティあふれるVR体験を楽しむことができた。


対戦中の画面。実際の都市をベースに設計された近未来の都市だ


筐体は繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)であり、VRゴーグルを装着して近未来の都市を走り抜けることができる


「5G×CYBER WHEEL」で対戦している様子


5Gはオリンピックイヤーである2020年の開始を目処に進められている。
2019年秋に開催されるラグビーのワールドカップでは、NTTドコモが5G端末の無料貸出を計画しており、ほかのキャリアも5G端末の限定貸出を検討している。
5G時代は、もうそこまで来ているという印象だ。


執筆・撮影:ITライフハック 関口哲司