1/13アリストテレス・ルーファニスは、生まれ育ったギリシャからロンドンへと数年前に移り住んだ。そしてすぐに、英国に住む多くの人々の心を孤独がむしばんでいることに気づいた。 2/13英国政府は2018年に「孤独担当大臣」を新設した。900万人を超える人々が孤独を感じているという公式の調査結果を踏まえた対応だ。 3/13ルーファニスは、都市に蔓延する孤独の問題に、最新の写真プロジェクトを通じて真正面から取り組むことにした。 4/13シリーズ「Alone Together」の各作品は、夜の都市を写した数百枚あるいは数千枚の写真で構成されている。それらの写真はデジタル処理でつなぎ合わされ、観る者がイマーシヴな感覚を得られる巨大パノラマに仕上がっている。 5/13ロンドン、パリ、アテネ、香港、メキシコシティの各都市で、ルーファニスは高くて見晴らしのいいポイントを選び、そこで一夜を過ごして街並みを撮影した。使用したデジタルカメラはハッセルブラッドのものとソニーの「α7」だ。 6/13スタジオに戻ると、スティッチングソフトウェアの「PTGui」と「Autopano Giga」を使い、撮影した写真を組み合わせて構成を終える。こうした作業では、ひとつの作品につき最長6カ月かかった。 7/13出来上がった画像は、とてつもなく高解像度だ。最大8ギガピクセルで、数百ギガバイトのメモリーを占めている。 8/13ルーファニスは、自前の大判プリンターで作品を印刷する。「これほど長時間を費やしてくれる印刷所はまずありませんから」 9/13シリーズの画像のほとんどが、幅10フィート(約3m)のプリントで表示されている。しかし高解像度のため、技術的にはその10倍のサイズで印刷できる。 10/13作品の印象はほとんど真っ暗だと言っていいだろう。ただ、都会を舞台に窓からこぼれる明かりがぽつりぽつりと点在している。これこそが、真っ暗なオフィスや高層アパートで、「孤独な人たち」が活動している証拠なのだ。 11/13明かりのついた窓に見える人やものからは、しばしば物語を感じることができる。注意深く見つめればわかるはずだ。フルサイズの場合は特に──。 12/13数えきれないほどの写真から、ルーファニスは明かりのついた窓が写ったものを1枚ずつ選び出した。こうした光は“希望のしるし”として彼の目に映る。 13/13自分の孤独を友人や家族に打ち明けたことで、この状態がどれほどありふれたことなのかをロウバニスはようやく認識した。「話したことで気分がよくなり、本当に楽になりました。これこそが、まさにわたしがこのプロジェクトでやろうとしていること──悲しい現実に隠された楽観的なメッセージを伝えることなのです」

英国政府は2018年に「孤独担当大臣」を新たに設けた。900万人を超える国民が、しばしばあるいは日常的に孤独を感じているという公式の調査結果を踏まえた対応だ。テリーザ・メイ首相は当時「現代においてはあまりにも多くの国民にとって、孤独は悲しい現実です」と語っていた。

「ぼくらは、みんな「孤独」を生きている:大都会の深夜、ぽつりと光る小さな明かりから見えてきたこと」の写真・リンク付きの記事はこちら

写真家のアリストテレス・ルーファニスも、この900万人のうちのひとりにほかならない。彼はファインアートの修士号を取得するため、生まれ育ったギリシャからロンドンへと数年前に移り住んだ。

「たくさんの友人や家族がいたにもかかわらず、深い孤独を感じていました。そのことがとても辛くなっていったのです」と、ルーファニスは振り返る。それから、この話題をロンドンの友人たちにもちかけたとき、あることに気づいた。友人たちの多くは同じように感じていながらも、それを認めようとしなかったのだ。

「自分が孤独であることを誰もが認めません。病気であることを認めるのは簡単なのに、孤独を感じていると認めるのは難しいのでしょう」

都市の巨大化と孤独のパラドックス

土木工学の学士号を取得したルーファニスは、ロンドンのような巨大都市に住む人々が孤独を感じる原因のひとつは、都市の設計方法にあると考えるようになった。「大都市の設計では効率が重視され、社会的な交流は必ずしも重んじられません。規模が大きくなればなるほど、そこに住む人々は孤独を感じます。まさに矛盾です」

ルーファニスは都市に蔓延する孤独の問題に、最新の写真プロジェクトを通じて真正面から取り組むことにした。シリーズ「Alone Together」の各作品は、夜の都市を写した数百枚あるいは数千枚の写真で構成されている。これらの写真がデジタル処理でつなぎ合わされ、観る人がイマーシヴな感覚を得られる巨大なパノラマに仕上がっているのだ。

ロンドン、パリ、アテネ、香港、メキシコシティにおいて、ルーファニスは高くて見晴らしのいいポイントを選び、そこで一夜を過ごして街並みを撮影した。使用したデジタルカメラはハッセルブラッドのものとソニーの「α7」だ。

それからスタジオに戻ると、スティッチングソフトウェアの「PTGui」と「Autopano Giga」を使い、撮影した写真を組み合わせて構成を終える。こうした作業では、ひとつの作品につき最長で6カ月かかることもあった。

高解像度で眺める“希望のしるし”

出来上がった作品は、とてつもなく高解像度だ。最大で8ギガピクセルで、数百ギガバイトのメモリーを占めている。ルーファニスは自前の大判プリンターで作品を印刷する。「これほど長時間を費やしてくれる印刷所はまずありませんから」とルーファニスは言う。

シリーズの写真のほとんどが、幅10フィート(約3m)のプリントで表示されているが、高解像度のため、技術的にはその10倍のサイズで印刷できる。

作品の印象はほとんど真っ暗だと言っていいだろう。ただ、都会を舞台に窓からこぼれる明かりがぽつりぽつりと点在している。これこそが、真っ暗なオフィスや高層アパートで、「孤独な人たち」が活動している証拠なのだ。明かりのついた窓に見える人やものからは、しばしば物語を感じることができる。注意深く見つめればわかるはずだ。フルサイズの場合は特に──。

数えきれないほどの写真から、ルーファニスは明かりのついた窓が写ったものを1枚ずつ選び出した。こうした光は“希望のしるし”として彼の目に映る。自分の孤独を友人や家族に打ち明けたことで、この状態がどれほどありふれたことなのかを彼はようやく認識した。

「話したことで気分がよくなり、本当に楽になりました。これこそが、まさにわたしがこのプロジェクトでやろうとしていること──悲しい現実に隠された楽観的なメッセージを伝えることなのです」