京都大学の相撲部出身 ©JMPA

 公明党の太田昭宏前代表(73)が次期衆院選で小選挙区から出馬しないことが5月23日に発表され、波紋が広がった。太田氏の地元、東京12区は、足立区議選(26日投票)の真っ最中だった。「大事な選挙中に衆院候補の交代は混乱を来しかねない。いくら衆参W選が取り沙汰されているとはいえ、衆院議員の任期はまだ2年以上ある。なぜこの時期に?」(野党幹部)と揣摩臆測が乱れ飛んだ。

「背後には支持母体・創価学会の原田稔会長と太田氏の微妙な関係がある」と語るのは政治部デスク。太田氏は、第一次安倍政権時、連立を組む党代表として安倍晋三首相と良好な関係だった。一方、後継の山口那津男代表は安倍首相とそりが合わなかった。太田氏は2012年末に第二次安倍内閣が発足すると、国交相に就任。度々首相官邸に足を運び、存在感を保ってきたのだ。公明党を長年見てきた記者は言う。「原田会長は、首相の近況や情勢分析を報告する太田氏の偉そうな態度に複雑な思いを抱いてきた」。最近、原田氏自身が首相と直接話せるパイプを築き、太田氏の存在感も薄まった。党が定める69歳の定年も過ぎており、「太田降ろし」の動きが今年初めから密かに始まっていた。だが、当の太田氏はそんな動きをつゆ知らず、「新年会を100カ所以上回った」とやる気満々。ここで安倍首相が解散すれば、太田氏が「今さら他の候補を立てられない」と続投に突っ走るのは想像に難くない。もちろん、解散風が吹く中で太田氏を外せば「学会がW選を容認した」との見方が広がる危惧はあったが、原田氏ら幹部は、それでも「太田降ろし」を完遂したかったのだ。

 記者会見で山口氏は太田氏が比例に回る可能性にも言及したが「建前だけ。絶対にありえない」との見方が公明党内では支配的だ。前代表なのに引き際も自分で決められず、太田氏の落ち込みは激しい。

 後任として12区に転じるのは岡本三成衆院議員。ゴールドマン・サックス証券の執行役員時代には、ビジネスマン時代のトランプ米大統領と交渉したこともあるエリートで、小選挙区転出について「ゴールドマンを辞める時は数億円の年収を捨てた。その決断に比べれば、小さい決断だ」と余裕を見せる。自民党議員以上にドブ板選挙に徹した太田氏からのバトンタッチは、池田大作名誉会長が追求した「大衆政党」としての終わりを象徴するようでもある。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年6月6日号)