島根の営業マンから国民的アーティストへ。Official髭男dismは「グッドメロディ」を武器に戦う

飛ぶ鳥を落とす勢い――Official髭男dismはそんな表現が似合うバンドだ。インタビューに答える言葉も慎重で力強く、大きな変化の渦中にいるという自覚が感じられる。

4人の出会いは島根県。もともとは営業マンや警察音楽隊員として働きながら音楽活動をしていた彼らが、月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)主題歌に大抜擢され、メジャーデビューしたのは2018年4月のことだ。それからわずか1年、今年の7月には日本武道館(東京)公演も決定した。

そんな通称“ヒゲダン”は、メジャーデビュー前から「国民的なバンドになりたい」と宣言していた。その目標は、彼らの信じる“グッドメロディ”と、メンバーをして「天才」と言わしめる、ヴォーカル・藤原 聡のたしかな才能によって、猛スピードで現実のものになってきた。今、彼らが生み出したい音楽とは、これから目指す場所とは。

撮影/曽我美芽 取材・文/坂本ゆかり 制作/iD inc.
▲左から、松浦匡希、藤原 聡、小笹大輔、楢崎 誠。

誰かの人生に刻まれるような音楽を生み出したい

ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌に抜擢され、5月17日から公開されている同作の劇場版の主題歌も担当されています。メジャーデビュー前から「国民的なバンドになりたい」と公言されていますが、その夢は叶いつつあるのではないでしょうか?
藤原 まだ途中です。ただ、“階段を上っていくときって、みんないい表情してるな”っていう実感はありますね。

売れることも武道館でのライブも嬉しいけれど、やっぱりいい音楽、いいライブを作るのが僕らの根本。メジャーデビューして、チームが大きくなって、みんなでいいものを作りたいという思いがどんどん強くなっていることのほうが嬉しいです。
改めて、「国民的」の定義って何でしょう?
藤原 誰もがそのバンドの名前を知ってることですね。Mr.Children(以下、ミスチル)、サザンオールスターズ、スピッツみたいに。
とはいえ音楽の聴き方が多様化している現代は、誰もが知っている「国民的ヒット曲」が生まれにくい時代とも言えます。その中であえて「国民的」を目指すことには、強い信念を感じます。
藤原 学校の卒業アルバムじゃないけれど、音楽には昔の感覚を思い起こさせてくれる力があると思うんです。「この曲を聴いたら、就活で苦しんでいた頃を思い出す」とか、「社会人になってミスばっかりしていた頃を思い出す」とか。そんな力を持った音楽を作りたいという思いはありますね。
人生のアルバムの1ページになる…ような?
藤原 そうですね。僕は社会人になってすぐ、会社の同期とカラオケに行ったんですけど、みんなで歌ったミスチルの曲にすごく大きなパワーをもらったんです。僕たちのバンドも、誰かにとってのそんな曲を歌えるバンドでありたいなって。
▲Vo/Pf 藤原 聡

『カブトムシ』を聴くと、母が乗っていた車まで思い出す

みなさんにとって、思い出がよみがえる曲を教えていただけますか?
藤原 いっぱいあるんですけれど…、ミスチルの『未来』かな。中学生の頃、プロのドラマーになりたかったんですけど、親に反対されて。「進みたい方向に行かせてほしい」って葛藤を抱えてたときに聴いていた曲です。聴くと、夢について考えていた当時を思い出します。
あとは小学生のときに聴いたaikoさんの『カブトムシ』。練習が厳しいバドミントンクラブに向かう車の中で「行きたくね〜」って思ってたときにラジオから流れてきた曲だったことを、よく覚えています。
『カブトムシ』とは、少々マセた小学生ですね(笑)。
藤原 そのときは「生涯忘れることはないでしょう」って歌詞とメロディのハマり方、そしてそのメロディの美しさとか、パワーが一聴で入ってきて。すぐに覚えてずっと頭の中でサビが流れていました。
『カブトムシ』を聴くと、お母さんが乗ってたトッポ(車)まで思い出す。音楽ってそういう力があるんですよね。aikoさんの曲だっていうのは、だいぶあとに知りました。
小笹 僕は松任谷由実さんの『Hello, my friend』が大好きで。初めて聴いたのは4歳だったかな? 僕もお母さんの車の中で聴いたんですけど。恋人と別れても友達でいることを「Hello, my friend」って言葉で表現するって、スゴいなって。こんな切ないことがあるんだって…。
藤原 えっ! 4歳でそんなこと思ってたの!?(笑)
小笹 歌詞の意味は後々気付いていくんだけど、曲とのファーストコンタクトは4歳ってこと(笑)。最初はメロディの美しさに惹かれて、だんだん歌詞を理解するようになって。

仲違いした人や別れた恋人…会えなくなってしまった人って誰しもいますよね。僕は、そういう人とも友達でいたくて。「もう二度と 会えなくても 友達と呼ばせて」は、僕の人生哲学に影響を与えてくれた歌詞なんです。
楢崎 僕は、加藤登紀子さんの『時には昔の話を』ですね。音楽をやるようになってこの曲の素晴らしさがわかるようになった気がします。

あのピアノのイントロが流れてきた瞬間に、主題歌として使われていたスタジオジブリの映画『紅の豚』のシーンが浮かびますよね。曲を聴いただけで映画や曲の感想をみんなで言い合ったりすることができるって、みんながその曲を知っているからこそ。
松浦 僕が聴いて、パッと情景を思い出すのは、レミオロメンの『3月9日』です。卒業シーズンにみんなで歌った思い出の曲なんですけど、僕がドラムを始めたきっかけの曲でもあって。

「レミオロメンのコピーバンドをやるから、ドラムをやって」って誘われて、『粉雪』と『3月9日』を最初にコピーしたんです。その曲を卒業のときにみんなで合唱して、号泣した思い出があって。青春してましたね(笑)。
ヒゲダンの曲も、誰かの思い出の曲になっているかもしれませんよね。
藤原 それは嬉しい…というか、奇跡に近いことなんですよね。バンドをやっててよかったなって思います。
▲Gt 小笹大輔

『コンフィデンスマンJP』は、ヒゲダンに転機をくれた作品

ドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の主題歌として制作された楽曲『ノーダウト』。だが、このタイアップが決まった当時、まだOfficial髭男dismはメジャーデビューも決まっておらず、「インディーズバンドが月9主題歌に初の大抜擢!」と話題になった。
メジャーデビュー曲『ノーダウト』のシンデレラストーリーについて改めて教えていただけますか。
藤原 フジテレビの制作の方から、オファーをいただいたんです。ドラマの主題歌なら売り込みもたくさんあるだろうに、その方は感性をコンパスに、知名度も認知度も高くない僕らを見つけて依頼してくれた。バンドマンとしてこんなに嬉しいことはないです。

ドラマの主題歌としても最高にカッコいい曲、そして曲だけ聴いても音楽の魅力に気付いてもらえるものを作りたいっていう意気込みで臨みました。
オファーの際は、どんな口説き文句があったのですか?
藤原 「このバンドに主題歌を頼むのは、大博打だと思う」って(笑)。そりゃ当然ですよね、インディーズバンドなわけですから(笑)。でも「あなたたちならこのドラマに合う曲を絶対に作ってくれると思って、オファーしました」って初対面のときに言ってくださって、その言葉はずっと覚えています。
その博打、見事に勝ちましたね!
藤原 勝ったつもりでいます(笑)。ドラマ制作チームと何度もキャッチボールしながら曲を作っていくのは初めてだったので、バンドとしての成長の機会にもなりました。
『ノーダウト』ができるまでのドキュメンタリーがYouTubeにアップされていますが、3週間しか制作時間がない中、デモ曲が2回もボツになったのに、ヘコまずに前向きに曲作りをしていたのが印象的でした。
藤原 キャッチボールの大前提は、曲の良し悪しじゃなくてドラマに合うかどうか、というクリエイティブなやりとりだったので、ヘコむことはなかったです。
映画『コンフィデンスマンJP』の主題歌となった新曲『Pretender』は、どんな思いで作られたのですか?
藤原 制作チームと話をしたり台本を読んだりして、登場人物たちに憂(うれい)やどこか達観している部分を感じたんですね。そのエッセンスに、僕自身の経験をどう加えようかなって思いながら鍵盤に向かったときに、この曲が生まれました。
ご自身の経験も入っているんですか?
藤原 具体的には言えないですけど、これまでの人生の中で、たしかに感じたことがある気持ちを盛り込んだ歌詞だと思っています。その感覚はメンバーとも「どうかな?」って話をしたのを覚えています。
「どうかな?」と相談されたみなさんは?
楢崎 「ヒゲダンの歌詞の中で一番好き」って言いました(笑)。リスナーとして聴くと歌詞の世界観に入り込めるし、プレイヤーとして聴くとライブをしたときの画が見える。聴き手それぞれが自分の人生に当てはめて、この曲の歌詞とメロディを受け止める様子が浮かびました。
松浦 制作チームとの打ち合わせで「今までになかったテイストのものを入れてほしい」と言われて、正直不安があったんです。でもそんな不安を「バチコーン!」って取っ払ってくれるくらいの素晴らしい楽曲を作ってきてくれて。本当に、彼(藤原)は天才だと思いました!
▲Ba/Sax 楢崎 誠

藤原 聡は、好きなものを見つけて努力する天才

メンバーを「天才」って言えるってスゴいことですよね。
小笹 (藤原のほうを向いて)天才です。
藤原 (立ち上がって)ありがとうございます!(笑)(ペコリ)
もっとその、藤原さんの“天才ぶり”を教えてください。
小笹 音楽愛の強さなんですよね。好きなものを見つける才能があるというか。

もちろん、努力もすごくしていて。この1年でさとっちゃん(藤原)の歌がめっちゃうまくなってるんですけど、僕はそのことに気付かなかったんです。なぜなら、さとっちゃんは以前からもっと高い次元を目指していて、その完成形のビジョンを常に僕らに見せてくれているから。それって尋常じゃないですよね。
藤原 あーー(恥ずかしそうにジタバタしながら恐縮)。
「天才」「努力」という言葉もありましたけれど、曲作りにおいては、戦略的なところもあるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?
藤原 「サビの頭は母音から始まったほうが覚えてもらいやすい」とか、「メロディは繰り返したほうが覚えてもらいやすい」とか、ヒット曲の条件やテンプレートみたいなものはありますけど、それに忠実になることだけが正解じゃないと思っていて。

やっぱり最後は、自分たちのセンス…。う〜ん、センスって言葉はあまり使いたくないんですけど、ジャッジをする自分たちの心がにじみ出ているものであってほしいんですよね。
みなさんのそのジャッジが、今の時代にマッチしてるんでしょうね。
藤原 そうであると、嬉しいですね。でも、世間に合わせたジャッジはしないほうがいいと思っています。売れたいとか、大きな場所でライブしたいってもちろん思うけど、周りに左右されないようにしようって、みんな常に心がけているんです。自分たちが「これでいいんだ」って思えるほうが、一番健全なメンタルとコンディションでやっていけるから。

だからメンバーには「思うことがあったら何でも言ってくれ」って言っていて、結成当初から自然にそれができてきたのが良かったんですよね。
何でも言いたいことを言い合っているからなのか、4人はすごく仲がいいですよね。撮影に入るときもずっと4人でお話をされていて。
藤原 仲はいいですね。いろんな意見が出るので、過去にはいろいろありましたけれど(笑)、本音で話をするとき、そこには必ず愛があるから。
楢崎 みんな喧嘩するつもりじゃないんですよ。自分の意見が通らないとイラっとするけど、そういうときこそ一旦飲み込む。それから伝えたほうが全体の動きがいいし、みんなが気持ちいいのがわかってる。だからこういう関係でいられるんだと思います。
過去を乗り越えての、今がある?
藤原 本音トークをしたほうが面白いし、結果的にクリエイティブが加速するんです。違うタイプの人間だから、それぞれが持っている音楽のツボや好みは当たり前に違うじゃないですか。それを持ち寄って形にしていくのがバンドなんです。自分の意見を通すより、4人のジャッジでいい音楽ができれば良くて。それだけを考えています。

あとは本当に全員音楽が好きで、「グッドメロディが好き」っていう共通点があるのがすごく大きなポイントなんですよね。
▲Drs 松浦匡希

営業マンの経験が、“いい音楽を作る”決意を強くさせた

藤原さんは、2016年に上京するまで、島根県で会社員として働きながら音楽活動をしていた。デビューが決まって会社を退職する際には、当時の上司から応援の手紙をもらったという。
藤原さんに聞きたいのですが、島根で会社員として働いた経験は、今のアーティストとしてのスタンスにどんな影響を与えていますか?
藤原 僕は営業職をやっていたんです。今は僕らが作ったものを広めるために誰かが頑張ってくれているけれど、当時は僕が誰かのものを売る立場でした。

自分が「これはいい商品だ!」って思えたものは、自然と言葉が出てきて商談に結びつくことが多かったけれど、ノルマのためだけに売らなきゃいけないものって心が重くなるし、それって不思議なくらいお客さんに伝わっちゃうんです。その経験があるから、「胸を張って薦められるバンドにならなきゃ」って思ってるんですよね。
上京当時と今とで、変わったことはありますか?
小笹 ちゃんまつ(松浦)が育った…
松浦 体格が良くなりましたね。育っちゃって(笑)。ストイックに肉体改造をしましたから(笑)。
楢崎 おかげですごくいいドラムを叩けるようになったよね(笑)。音に重みが乗るようになりました!
(笑)。
藤原 変わったことと言えばやはり、チームがどんどん大きくなっていることでしょうか。僕たちに関わってくれる人が増えたことで、「しっかりしなきゃ」って思いがより強くなりましたね。あとは地元で応援してくれる人のためにも夢に向かって頑張っていこうという気持ちが大きくなりました。
Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)
藤原 聡(Vo/Pf)、小笹大輔(Gt)、楢崎 誠(Ba/Sax)、松浦匡希(Drs)の4人で結成されたピアノPOPバンド。愛称は「ヒゲダン」。2012年に結成、15年4月に1stミニアルバム『ラブとピースは君の中』でインディーズデビュー。その後、18年に放送されたドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の主題歌となった1stシングル『ノーダウト』でメジャーデビューを飾る。6月から単独ツアー『Official髭男dism one-man tour 2019』を開催し、7月8日には日本武道館公演も控えている。

楽曲情報

New Single『Pretender』
ポニーキャニオンより発売中
https://lnk.to/Pretender_
©ポニーキャニオン

映画情報

映画『コンフィデンスマンJP』
全国東宝系にて公開中
https://confidenceman-movie.com/
©2019「コンフィデンスマンJP」製作委員会

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、Official髭男dismのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年5月31日(金)12:00〜6月6日(木)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/6月7日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから6月7日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき6月10日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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