キリンチャレンジカップと南米選手権に向けて、日本代表の招集メンバーが発表された。

 主将を務めるDF吉田麻也は、サウサンプトンのシーズン終盤に患った肺炎の影響で、招集が見送られた。代表の最終ラインは柱を欠くことになるが、そんななかで大きな期待を寄せられるのが、シント・トロイデン所属のDF冨安健洋だ。


アジアカップのサウジ戦でゴールを決めた冨安と抱き合う吉田

 1、2月に行なわれたアジアカップで、冨安は決勝までの7試合中、6試合に先発。6試合のうち、セントラルMFとして出場したトルクメニスタン戦を除けば、センターバックで吉田とコンビを組んだ。

 そのアジアカップで、冨安は20歳とは思えぬ落ち着いた守備を披露した。対人プレーでは強さと速さで競り負けず、最終ラインの安定に貢献。吉田とのライン統率も巧みにこなした。

 また、シント・トロイデンでも充実のシーズンを過ごした。アジアカップ期間を除き、全試合にレギュラーCBとしてフル出場。ポテンシャルの高さを存分に示した。

 現在、吉田は「30歳」で、冨安は「20歳」。ふたりには10の年の差があるが、「若くして欧州に渡った」という共通点がある。吉田は、21歳で名古屋グランパスからオランダのVVVフェンロに移籍。対する冨安は、19歳でアビスパ福岡からベルギーのシント・トロイデンに移った。

 そこで、吉田に聞いてみた。「20歳の頃の自分と比べて、今の冨安はどう映っている?」と。吉田は冨安の精神面を褒めながら、次のように語った。

「やっぱり、精神的に成熟していると思います。もちろん、『プレーがいい』『体格がいい』ということもありますけど、なによりヨーロッパで活躍できるかどうかのカギは、精神的な部分だと思うので。

 すごく成熟している。アジアカップで1カ月ぐらい一緒にいて、そう感じた。伸びるなと思いましたね。パフォーマンスを見ても波が少ないし、僕の20歳の時に比べたら、冨安のほうが全然いいと思います」

 さらに、吉田の高評価は、冨安のプレーにも及んだ。

 現代サッカーにおいて、センターバックに求められる能力やタスクは実に多い。相手FWとの競り合いはもちろん、ハイラインを敷いて背後のスペースをカバーしたり、足もとの巧さも必要になる。最終ラインからのビルドアップや、ドリブルでの持ち上がりなど、さまざまな仕事をこなさなければならない。

 世界最高峰と呼ばれるプレミアリーグで7季目を過ごした吉田は、その重要性を痛感しているという。求められるのは「オールマイティなCB」。実際、今季の吉田は3バックのCB中央として最終ラインを統率し、縦パスやビルドアップで攻撃の起点にもなった。

 プレミアで7季にわたり生き抜いてきた30歳DFは、自身と冨安のタイプが似ていると話す。

「冨安は、僕とタイプが似ていると思うんですよね。自分で言うのもアレなんですけど、何かが突出しているというのではなく、全体的にベースがある。全体的にそつがない。

 足が遅くもないし、身体が弱いわけでもないし、高さがないわけでもない。オールマイティにできるセンターバックは、現代フットボールで欠かせない。現代のCBは競り勝たないといけないし、パス出しもしないといけない。つまり、何でもやらないといけない」

 プレミアリーグの強豪クラブには、リバプールのフィルジル・ファン・ダイク(オランダ代表/27歳)やトッテナム・ホットスパーのトビー・アルデルヴァイレルト(ベルギー代表/30歳)、マンチェスター・シティのジョン・ストーンズ(イングランド代表/25歳)やアイメリク・ラポルテ(前U−21フランス代表/24歳)といった、オールマイティなセンターバックがひしめいている。対峙するFWも、ワールドクラスのストライカーばかりだ。

 そんなハイレベルな場所に身を置いているからこそ、吉田は冨安にアドバイスを送る。移籍でステップアップし、自身のレベルアップにつなげていくことが大事になると説いた。

「(シント・トロイデンから)次のステップを踏み、リーグのレベルをもう一個上げる。そして、代表の一員として日本との行き来をし、時差やコンディション、所属クラブの監督からの信頼など、いろいろなものと戦わないといけない。それができるかどうかが、今後のカギになると思います。

 それは冨安だけではなく、海外に出ている他の若い選手たちも一緒です。僕より上の世代の人たちも、みんなそうやってきた。代表からクラブに帰ってくると、試合に出られない。僕はそういう歯がゆい思いを毎回しているけど、こうした状況もなんとか変えてほしい。僕はあんまり変えられていないので、若い世代で変えていってほしいですね」

 吉田がVVVフェンロから、サウサンプトンに籍を移したのが24歳の時。VVVフェンロでの活躍が認められ、2012年のロンドン五輪後にイングランドへ渡ってきた。

 そこで、吉田にもうひとつ尋ねてみた。「冨安選手に『プレミアに来いよ』と言ったりしないの?」。吉田は答える。

「いずれ来るんじゃないですか。その時のためにも、『語学も勉強しろよ』と言ってあります。アジアカップは長かったので、いろいろ話す機会があってよかったなと思っています。冨安もそうだし、他の若い選手たちも向上心があり、これからが楽しみだなと感じています」

 そう語ると、吉田は柔和な笑顔を見せた。その表情は、冨安を含む若手の成長を温かい眼差しで見守っているようだった。おそらく、吉田が発した言葉や助言は、アジアカップの大会期間中に冨安のもとにも届いているだろう。

 果たして、日本代表はキリンチャレンジカップと南米選手権でどのような戦いを見せるか。冨安にとっても、今シリーズは大きな試金石となる。