【福井工大福井】大阪桐蔭出身の田中監督が考える「高校で伸びる子」の傾向

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中学時代の軟式、硬式は関係ない

県内のみならず、関西圏の選手も多く受け入れている福井工大福井では、毎学年40人を超える選手が入学してくる。それだけたくさんの中学生を迎え入れるにあたり、指導者も迎え入れる選手には様々な着眼点を置いて見ている。

母校・大阪桐蔭で長いコーチ経験も持つ田中公隆監督は、どこに重きを置いて中学生の一挙一動を見ているのだろうか。

「ありきたりですけれど、まずは足の速い子、肩の強い子は目につきますね。そこから伸び代を感じさせる子は多いです」(田中監督)。

ただ、プレーヤーとしての技量だけではなく、決め手となるのはキャラクターだ。内面をチェックするとなるとやはり周囲の評価を参考にすることが多い。

「そこで聞いた話は、実際に入学してきてからの印象とほぼズレがないです」と田中監督は言う。野球が好き、とにかく甲子園に行きたいという強い思いを持っている子はもちろん大事にしたいが、何より今に至るまでの取り組みは重要だ。練習での姿勢、しぐさ、表情などもその選手の性格を見るには必須ポイントとなる。

中学時代に軟式だったか、硬式だったかについては特に「関係ない」と田中監督は言う。軟式の大会を見に行った場合は、硬式になればこの辺はできる、という目安があり、そこをクリアしていれば硬式にもなじむという。軟式だからどうこうという物差しは田中監督の中には一切ない。

高校に入ってから伸びる子の傾向は意識の高さだ。「練習での姿勢ですね。うまくなりたいと心から思えて、努力ができる子。いくらセンスが備わっていても努力が出来なければ結果は出ません。ただ、頑張れない子にどう頑張らせるかというのはテーマです。入寮して3年間頑張ろうと覚悟を決めてきた子でも、いざ高校の生活が始まると環境の変化などで努力が出来なくなる子もいる。たとえ状況が変わっても、努力できるようにしてあげるのが指導者の役目です」。

そして、大事なのは授業態度など普段の生活の過ごし方だ。「これは大前提ですね。授業態度が悪い場合は、必ず野球に影響してきます。野球部は全員、体育コースで同じクラスなので、何か目につくことがあれば担当の科目の先生から情報は逐一入って来ます」。

陰でものすごく努力していた森友哉

入学を志す選手の多くは、大阪桐蔭で培ってきた田中監督の教えを受けたいという子たちだが、昨年からは田中監督の大阪桐蔭での同級生の古川卓コーチと、田中監督の大阪桐蔭時代の教え子で、12年の大阪桐蔭の春夏連覇メンバーの白水健太コーチが加入した。

白水コーチはエースの藤浪晋太郎(現阪神)や女房役の森友哉(現西武)らとプレーしていた。今の高校生は、当時は小学生だったため、テレビを通してその戦いぶりを見ながら憧れた選手の生の話を聞けるとなると、白水コーチに興味深く聞いてくる選手が多いという。

「一番よく聞かれるのは藤浪より森のことですかね。どんな練習をしているのかとか、普段のこととか。森はああ見えて陰ではものすごく努力していたので、こういう時はこんなことをしていたよとか、よく話します。生徒が聞きに来たことに具体的に答えてあげると目標設定がしやすいみたいです。ウチのチームは貪欲な子が多いので、本当によく聞きにきますね」と白水コーチ。

白水コーチは大阪桐蔭時代は副キャプテンで、同志社大ではキャプテンを務めていた。プレーヤーとして派手さはなかったが、要所で大きな声を出してベンチを盛り上げるなどチームを鼓舞する重要な役目となっていた。指導者となった今は、田中監督と選手を繋げるだけでなく、選手たちの良きアドバイザーとなっている。

チームとしては近年、夏の県大会では2年連続で大敗しているだけに、今年こそはという思いは強い。

「チームを挙げて日本一という目標は常にあります。勝ちたいとは思ってきましたが、選手の間でも日本一という言葉が飛び交うようになってきて、日本一を意識できるチームにはなってきたと思います。厳しい戦いは続きますが、この夏こそはまずは県を勝ち抜いて甲子園に行きたいです」。

激戦地大阪で鍛え上げられた戦う精神を宿した指揮官は、悲願達成へ向け、今日もタクトを強く握りしめている。(取材・写真:沢井史)