中国・新疆ウイグル自治区とパキスタンのギルギット・バルティスタン州にまたがるクンジュラブ峠を歩くパキスタン人ら(2015年9月29日撮影、資料写真)。(c)AAMIR QURESHI / AFP

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【AFP=時事】2017年、パキスタン人と結婚したウイグル人女性たちが、中国政府によるイスラム過激派排除の捜査網にとらわれ、その姿を消した。これらの女性たちが最近になって解放されはじめている。しかしパキスタン人の夫らは、その解放には大きな代償が伴ったと話す。戻ってきた妻たちが「中国社会への適応」の証明を強要されており、宗教的戒律をも犠牲にしているというのだ。

 中国には「職業教育センター」と称する強制収容所がある。ここには100万人近くの収容者がいるとみられているが、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)出身のウイグル人妻約40人もその一部だった。

 夫たちによると、強制収容所で妻たちはイスラム教で禁止されている行為「ハラーム」を強要され、それは解放された今でも同じように続いているという。

 最近、妻に会うため新疆にある妻の実家を訪ねたというあるパキスタン人の男性は、匿名を条件にAFPの取材に応じ「妻は豚肉を食べたり酒を飲んだりしなければならず、今でもそれを強要されていると話していた」と述べた。

 また「当局者から、連れ戻されたくなければ、過激思想を捨てたことを証明する必要があると言われたようだ」と説明し、実家に戻った妻は礼拝をやめ、コーランの代わりに中国関連の本を読んでいると続けた。

 貿易商を営む男性たちは、妻を新疆に残し、仕事のために数週間から数か月間パキスタンに戻ることがある。そのため、イスラム国家であるパキスタンとのつながりを理由に収容所に連れて行かれたと考える夫もいる。

 強制収容所はウイグル人を含むイスラム教徒弾圧の一環で設置されたが、国際社会から激しい批判を受けたことや中国とパキスタンの経済的結びつきが深まっていることを踏まえ、政府は2か月前から徐々に女性たちを解放している。

 新疆に接するパキスタンのギルギット・バルティスタン(Gilgit-Baltistan)地域当局の報道官は「(ウイグル人妻の)大多数」が解放されたことを確認している。

■試される「中国社会への適応」

 AFPが取材したウイグル人妻の夫9人は、解放された妻たちは3か月間、新疆を離れることができず、その間厳しく監視されることになると語った。

 ある宝石商の男性は「妻が中国社会に適応しているか確かめるための監視だろう。適応していないと判断されれば、戻されてしまう」と述べた。

 この男性は、妻が「収容所で踊ったり、肌を露出した服を着せられたりしたほか、豚肉を食べさせられたり、酒を飲まされたりもした」ことも明らかにした。男性の妻は現在、モスクに赤いバツ印が付けられ、中国国旗には緑のチェックマークが描かれたイラスト付きのガイドブックを携帯しているという。

 また「以前は決まった時間にお祈りをする習慣があったが、今はしていない。レストランで(アルコールを)飲むこともある」と話し、中国当局がこうした行為を求めているのだろうと付け足した。

 解放された妻たちについては、被害妄想に陥ったり、通報を恐れたりしていると、多くの家族が指摘している。

 前述の宝石商の男性は「最悪なのは、妻が何も話さないことだ」「両親や家族、私のことさえ疑っている」と語った。

 また、匿名を条件にAFPの取材に応じた別の夫ら7人も、妻との連絡はまだ電話のみだが、同じような状況にあると証言している。

■パキスタンへの多額投資の影響も

 解放に関して、中国外務省はコメントを拒否している。パキスタンの外務省報道官も取材に応じなかった。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch )の中国担当上級研究員マヤ・ワン(Maya Wang)氏は、収容所から解放された後、自宅軟禁に置かれたり、行動を厳しく制限させられたりしている話を聞いたことがあると話す。

「今回の解放は、新疆での厳しい弾圧に対する国際社会からの圧力の高まりに、中国政府がますます敏感になっていることを示すものだろう」

 また、豪ラトローブ大学(La Trobe University)で中国の公安問題を専門としているジェームズ・リーボールド(James Leibold)氏も、中国政府は「新疆における政策への国際社会からの批判が、イスラム教国家、とりわけパキスタンにまで広まることを見過ごすことはできないのだろう」と指摘する。

 中国は近年、パキスタンとの関係を強化しており、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の下、インフラ事業に多額の資金を投じている。

 一方パキスタンは、新疆でのイスラム教徒弾圧に対する国際的批判に表向きは同調している。同国のイムラン・カーン(Imran Khan)首相はこの問題について、英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)のインタビューで「率直に言って、それについてはよく分からない」と述べた。

 パキスタン人の夫にとって、妻は今も行方不明も同然だ。愛する妻や母親の解放を最初は喜んだものの、帰って来た女性たちが別人のようになっているのを見てその喜びが消えたと話す男性もいる。

 宝石商の男性は、「妻はまったく別人になってしまったので、私たちの結婚はもう長く続かないのではないかと心配している」と語った。

【翻訳編集】AFPBB News