「サムスンのGalaxy S10シリーズ、使ってわかった6つの「優れたポイント」:製品レヴュー」の写真・リンク付きの記事はこちら

スマートフォンが、またしても“奇抜さ”を争うようになっている。そのトレンドの真っただなかにいるのがサムスン電子だ。2019年に入って折りたたみ式スマートフォンを披露[日本語版記事]したが、このほど発売された「Galaxy S10」もまた、新しいパンチホールカメラやディスプレイ一体型の指紋センサーといった独自の個性を放っている。

スマートフォン市場では、高級モデルの新しいカテゴリーが徐々に生まれつつある。サムスンの新しいGalaxy S10も、このカテゴリーに入りそうな製品だ。価格は基本モデルでも750ドル(約83,000円、日本ではキャリアによって異なる)。1TB(テラバイト)のストレージ容量を誇る最上位モデルでは、1,600ドル(約17万6,000円)にもなる。

折りたたみ式モデルの予定価格(1,980ドル=約21万8,000円)に匹敵するモデルこそないものの、どれも決して安いとはいえない。少なくとも2〜3年前に買った携帯電話から買い換えるわけでもない限り、アップグレードの検討には時間をかけたくなる価格だ。

1)大きく見やすい“穴あき”ディスプレイ

このハイエンドのGalaxy Sシリーズには、3つのモデルが存在する。最も小さい5.8インチの「Galaxy S10e」、中位モデルの6.1インチ「Galaxy S10」、最も大きい6.4インチ「Galaxy S10+」だ[編註:S10eは日本未発売]。この3つのモデルは、多くのDNAを共有している。

最初に目につくのはディスプレイだろう。すべてのモデルがHDR表示に対応した鮮やかな有機ELディスプレイを搭載している。画素数が極めて多いことから、ディスプレイの隅に軽く触れただけでも非常によく反応する。上下左右どの端でもだ。

実際、表面積に占めるディスプレイの割合があまりに大きいので、ほかの機能を配置できる空間はほとんどない。「iPhone」のようにディスプレイ上部にノッチを設けてカメラやセンサーを配置することもできただろうが、それでは面白くない。

そこでサムスンは、ディスプレイの右上隅に小さな穴を開けた。同社はこのディスプレイを「Infinity-O Display」と呼んでいる。奇抜なアイデアだが、いまのところ個人的には気に入っている。

自撮り用のフロントカメラが埋め込まれたこの奇妙なパンチホールを、じゃまに感じたりうっとうしく思ったりしたことはない。目立たないように技術的にうまく処理されているからだ。この穴が気に入らない人は、上部が暗い色の壁紙を利用するか、ステータスバー全体を黒くして、穴が目立たないようにすればいい。

PHOTOGRAPH BY SAMSUNG

2)秘密の新機能「バッテリー共有」

3つのモデルは、どれも「IP68」対応の防水性能を備えており、金属とガラスのサンドイッチ構造になっている。この構造は、サムスンとアップルがここ数年で普及させたものだ。確かに傷つきやすい(ケースを買うことをお勧めする)が、背面がガラス素材で覆われているおかげで、ワイヤレス充電と、秘密の新機能であるバッテリー共有が可能になっている。

バッテリー共有とは、ほかのデヴァイスをワイヤレスで充電できる機能のことだ。充電スピードは遅いが、iPhoneを充電することもできた。サムスンが新たに発売したワイヤレスイヤフォン「Galaxy Buds」もワイヤレスで充電できる。

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どのモデルもバッテリーのもちがそれほど長くないため、ほかのデヴァイスに惜しみなく電気を分け与えたいとは思わないかもしれない。それでも、この新機能は面白い。S10が電源コンセントに接続されて100パーセント充電されている状態であれば、別のデヴァイスをワイヤレス充電できるのはとても便利だ。

サムスンは、どのモデルも24時間連続でさまざまな目的に利用できると主張している。実際に試用してみたところ、バッテリーは寝る前の時点で40パーセントほど残っており、たいてい1日半は極めて快適に利用できた。

5時間近く通話し続けた日でも(その理由は聞かないでほしい)、寝る前のバッテリー残量はそれなりにあった。ただし、「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」や「フォートナイト」など、高いグラフィック性能を必要とするゲームをプレイすれば、バッテリー残量は一気に減ってしまう。

また、どのモデルも10メガピクセルという高画質のフロントカメラを搭載しており、2基ないし3基ある背面カメラもかなり高性能だ(詳しくは別途説明する)。ハイスペック好きの人なら、全モデルに6GBまたは8GB以上のRAM、128GB以上のストレージ、microSDスロット、クアルコムの最新かつ最強のチップセット「Snapdragon 855」が搭載されていることも見逃せないだろう。

3)見えない指紋認証センサーのスムーズさ

OnePlus「6T」と同じように、S10とS10+の2つのモデルでは、指紋認証センサーがディスプレイに埋め込まれている。ロックを解除するには、親指を直にディスプレイにタッチすればいい。

ただし、ディスプレイ内部で実行されていることは、光学センサーのOnePlus 6Tとはやや異なる。サムスンは超音波センサーによって3次元で指紋をスキャンしているのだ。このセンサーをだますのは、はるかに難しい。

もっとも、使うには慣れが必要だ。初めて親指をスキャンするときは、指示に従って正確に指を動かす必要がある。いったんコツをつかめば、その信頼性は通常の静電容量式指紋センサーと同等になる。つまり、指紋が認識されないこともあるレヴェル、ということだ。

この機能は、それでもサムスンがなし遂げた大きな成果と言える。本体の裏にある指紋センサーを指で探るより、ディスプレイを指で押すほうがはるかに簡単だからだ(しかも、手を洗った直後でも動作するようだ!)。

最小モデルのS10eに超音波センサーはない。代わりに、通常の指紋センサーが本体の右側面に搭載されている。この場所は使いやすく、デモ機でもごく自然に操作できた。ディスプレイ内センサーのようなクールさはないかもしれないが、電源ボタンと同じ場所にあるのはとても便利だ。

4)大型になっても使いやすい操作系

S10シリーズではすべてのモデルに、「Android 9 Pie」と、サムスンが新しく開発した「One UI」が搭載されている。One UIはこれまでのサムスンのUIと非常によく似ているが、操作ははるかに簡単になった。長期間の開発の末に、サムスンはようやく大型のスマートフォンを楽に使える方法を編み出したのだ。

例えば、多くのアプリが、ディスプレイの下半分だけですべてのボタンを操作できるようになっている。画面を上にスクロールしても、いつでもボタンをタップできる位置にまで戻ってこられる。

なお、電源ボタンは不思議なことに、どのモデルも本体右側面の上部に置かれている。S10eならすぐに手が届くが、S10+では少し苦労するかもしれない。

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音量ボタンのすぐ下には、電源ボタンに似たボタンがもうひとつある。これはサムスンの音声アシスタント「Bixby」用のボタンだ。個人的にはこのボタンが好きではない。Bixbyは、わたしが本当に聞きたいことは何も教えてくれないのだ。誤ってこのボタンに触れてしまい、Bixbyに付き合わざるを得なくなることがたびたびあった。

とはいえ、このボタンの機能は変更できるようになっている。電源ボタンに変更したり、ボタン自体を無効にしたりすることはできないが、1回か2回押したときに別のアプリが立ち上がるように変更することは可能だ。

個人的な最善策は、このボタンを2回押さない限りはBixbyが起動しないようにすることだった。サムスンによると、そのうちにBixbyはユーザーの生活習慣を学習し、日常生活に役立つツールになるという。だが現時点では、このボタンは“とげ”みたいなものだ。

Bixbyは、高性能のカメラアプリ「Bixby Vision」にも登場する。このアプリを使っているユーザーに、カメラに写っているものが何であるのかを教えてくれたり、役立つ情報を提供したりしてくれるという。

しかし実際に使ってみたところ、たいていの場合はカメラで何を狙っているのかを意図した通りには認識しておらず、決して欲しいとは思っていない製品を売りつけようとしてきた。カメラを床に向けると、タイルを買わせようとしてきたのだ。Bixbyの狙いはカメラを購入ボタンにすることにあるようだが、その目的を実現できるほどの賢さは現時点では期待できない。

5)高画質な写真が撮れる3つのカメラ

「Galaxy S」シリーズは、高性能の光学カメラを内蔵していることで知られるが、S10シリーズも例外ではない。すべてのモデルが、光学式手ぶれ補正機能を備えた12メガピクセルカメラと、視野角123度の超広角カメラを搭載している。S10とS10+には、光学2倍ズームの12メガピクセル望遠カメラも追加されている。

LGエレクトロニクスの「LG V40 ThinQ」と同じように、ユーザーはレンズを切り替えることができる。しかも、サムスンがその手間を軽減してくれる。通常のカメラのように被写体をズームインしたりズームアウトしたりすると、それに合わせてレンズが自動的に切り替わるのだ。

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インターフェイスもわかりやすく、プロ級の写真を撮影できるモードや、強化されたパノラマモードなど、さまざまな調整機能や高度な機能が豊富に用意されている。サムスンのアルゴリズムによって、適切なアングルを勧めてくれる機能もある。

つまり、ユーザーは素晴らしい写真を撮るために、特別なモードをあれこれ試す必要がない。S10シリーズなら、ほかのほとんどのスマートフォンよりも優れた写真を撮影できる。しかもそのレヴェルは「iPhone XS」や「Google Pixel 3」と同程度で、「OnePlus 6T」を軽々と上回っているのだ。

夜景の撮影は、Pixel 3の新しい「夜景モード」には及ばないものの、ほかのほとんどのスマートフォンに匹敵する(あるいは上回る)。特に夜の公園を歩きながら光の多い景色を撮影したときには、予想よりも多くの光や色合いを再現するなど、S10のレンズは素晴らしい性能を見せてくれた。

ただし、シーン判別機能にはがっかりさせられることもあった。理由はわからないが、サムスンのアルゴリズムは、あらゆる街灯を星のように輝かせなければならないと判断しているようだ。最初は魅力的な機能だと思ったが、必ずしもそうではない。街灯が輝かないようにするには、シーン判別機能をオフにしなければならなかった。

LGもそうだが、サムスンは現実の風景をやや強調しすぎる傾向がある。例えば、セルフィー写真を“普通に”保存するために、わざわざ設定画面にアクセスしなければならないことに当惑した。標準設定では、セルフィーは左右が反転した状態で保存されるのだ。つまり、自分ではうまく撮れた写真だと思っていても、ほかの人からは奇妙な顔に見えることがある。

一方で、「ライヴフォーカス」モードは特にセルフィーにはうってつけだった。これは人の顔を認識し、背景をさまざまな方法でぼかすことができる機能だ。4種類のエフェクトをあれこれ試しては楽しんだが、個人的に最も素晴らしいと感じたのは、背景をモノトーンにしてくれるものだった。このモードは背面カメラでも利用できる。

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6)付属のヘッドフォンが高音質

Galaxy S10+を使うまで、自分がどれほど3.5mmのヘッドフォンジャックを恋しく思っていたのかわかっていなかった。サムスンはすべてのモデルにAKG製の有線イヤフォンを付属品として提供しているが、これは素晴らしい。携帯電話に付属されるイヤフォンで、これほど高品質なものは見たことがない(オーディオファンは怒るかもしれないが)。無料で付いているイヤフォンにしては、十分な性能だと思う。

オーディオ機能は全体的に素晴らしい。すべてのモデルがハイレゾと「ドルビーアトモス」に対応し、便利なイコライザーを内蔵している。

手ごろなS10eにも強み

実際に使ってみたS10シリーズの3つのモデルをすべて気に入ったが、S10eは最も妥協を迫られるモデルだろう。

S10eは小型で、HDディスプレイの側面がカーヴしていない。RAMは最も安価な構成では8GBではなく6GBになる。指紋センサーは、超音波式でない通常のものが右側面に配置されている。背面カメラも光学2倍ズームではない。

とはいえ、もし自分で買うならS10eを選ぶだろう。価格面で最も手ごろなモデルでありながら、プロセッサーは高速だ。しかも持ちやすい。

大型のS10+では、手のひらがディスプレイの側面に当たってしまい、誤ってアプリを起動したり画面をスクロールさせたりすることがあった。ケースに入れれば手が触れないようにできるが、フラットディスプレイのS10eなら、こうした問題はまず起こらないだろう。

上位モデルならではのメリット

ただし、上位モデルには明らかなメリットがある。標準モデルのS10は、扱いやすいサイズながらカメラの数もRAMも増え、ディスプレイ内蔵式の指紋認証センサーを利用できる。S10+になれば、フロントカメラがもうひとつ追加され、ディスプレイがさらに大きくなる。また、1TBのストレージや12GBのRAMを選ぶこともできる(それほどの容量はまず必要ないだろうが)。

どのモデルであるかに関係なく、Galaxy S10シリーズはサムスンにとって大きな前進と言える。もちろん、半分に折りたたんだり、5G回線を使ったりすることはできないが、Galaxyシリーズにかつてあった欠点を感じさせない仕上がりになっている。

指紋センサーはようやく最適な場所に配置され、ユーザーインターフェースは劇的に改善されている。さらに、サムスンがセキュリティアップデートを毎月公開しているのも素晴らしい。

Androidスマートフォンにはもっと安く買える製品もある。だがサムスンは、すでに「19年の新基準」をつくりだしたと言えるだろう。

◎「WIRED」な点

全画面ディスプレイは美しく、プロセッサーは最高レヴェルだ。また、たくさんの楽しい機能が詰め込まれている。超音波指紋認証センサー、ほかのスマホとバッテリーを共有できるワイヤレス充電機能、それにヘッドフォンジャックもある! サムスンのUIもついに改良された。セキュリティアップデートの定期配信も計画されている。

△「TIRED」な点

カメラは素晴らしいが、「Pixel 3」の夜景モードには及ばない。設定メニューは、必要な機能を見つけるのが難しいことがある。ワイヤレス充電によるバッテリー共有は時間がかかる。エッジディスプレイには、手が誤って当たっても反応しないようにする機能が必要だ。わずらわしいBixbyボタンを追加したのは、いったい誰なのだろうか?