俳優の坂上忍氏が司会を務める情報トークバラエティ番組「バイキング」が、ピエール瀧氏の逮捕をめぐる報道の中で、ライブストリーミングサイト「DOMMUNE(ドミューン)」が5時間に渡り電気グルーヴの楽曲だけを配信する特別企画を行ったことを紹介。番組中では出演者が「DOMMUNEを知らない」と相次いで発言したことやDOMMUNEの売名ではないかとスタジオが盛り上がったことに対して、批判の声が殺到。

 久田将義氏と吉田豪氏は自身がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「タブーなワイドショー」において、ゲストの映画史・時代劇研究家の春日太一氏とともにこの話題に言及。

 番組中では、久田氏が坂上氏について「本当に人相が悪くなっている」と述べると、春日氏もタレントのコロッケ氏がモノマネする美川憲一氏を例に挙げ「昼のワイドショーの司会をやると顔が似てくる」と顔真似を披露する一幕も。

生ホンネトークバラエティ バイキング
(画像はフジテレビ公式サイトより)

※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。

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ワイドショーの司会者の顔は“コロッケがやる美川憲一”に? 左から久田将義氏、春日太一氏、吉田豪氏。

吉田:
 これ、世間の人がDOMMUNEを知らなくても全然いいというか、バイキングに出演しているような人たちが知っているほうが異常なので……知らなくてもいいんだけどっていう前提ですよね。

久田:
 たしかにそういう前提だけど、これは“知らないマウンティング”ですよね。僕も思ったんですけどワイドショーは不愉快だから見ないほうがいいんですよ。

 僕は仕事だから見ないといけなかったんですけど、この放送はひどかったですね。吉田くんもよく言っていることですけれども、知らないということは恥じたほうがいいんじゃないでしょうか。

吉田:
 ネットが普及してからの“知らないマウンティング”というのは、「俺が知らない=つまり世間に知られていない=お前は大したことではない」という意味の攻撃手段なんですけど、それは違う。あなたの知識が大したことないってことなんですよ。

久田:
 僕もDOMMUNEって全部通しては一度くらいしか見たことないので、そこまで詳しく知らない前提で話すんですが。電気グルーヴの楽曲を配信することは売名でも何でもないじゃないですか。

春日:
 売名する意味がないですからね。

久田:
 バイキングと言えば、MCの坂上忍さん、本当に人相が悪くなっているんです。ぼくと同じ歳なんですけど、前はちょっとアイドルっぽい顔だったのに、みのもんたみたいな顔になってきてますよね。

 大宅壮一【※】さんは「男の顔は履歴書」とおっしゃってますが、本当にそう思いますよ。坂上さんは笑顔が張り付いているし、上に媚びていて下には厳しいみたいなのが嫌い。

※大宅壮一
ジャーナリストでありノンフィクション作家。「一億総白痴化」「恐妻」「口コミ」など、数々の名言を生み出した。

春日:
 昼のワイドショーの司会をやると顔が似てくるというのがあって、“コロッケがやる美川憲一のモノマネみたいな顔”になってくるんですよ。ちょっと口が半開きになって……この顔なんですよ。

 最初に、この顔が出はじめたのがみのもんたさん。司会者は番組中、ずっとこの表情でニュースを聞いているんですよ。

吉田:
 複雑な表情を表現してるつもりなんでしょうね(笑)。

春日:
 次に宮根誠司【※1】ですよ。そのあとが恵俊彰【※2】。それで今は坂上忍がこの表情です。

※1宮根誠司
「情報ライブ ミヤネ屋」の司会者。

※2恵俊彰
お笑いコンビ「ホンジャマカ」のメンバー。「ひるおび!」の司会者。

久田:
 すごい似ていますね(笑)。

春日:
 なんで知っているかと言うと、実家暮らしなので昼間にだいたい起きるんですよ。すると親が大好きで見ているんです。朝飯をとるときにずっとワイドショーをつけているんですね。消せとも言えないから。最近は「バイキングの時は消して」って言うようになりましたけどね。

久田:
 顔つきとか見ていると吉田くんがインタビューをしたときの尖った坂上忍ではないですね。

春日:
 たまたま見た回では、更生施設に入っていた“あっち側の人たち”をゲストに呼んで、スタジオでは彼らが更生する風景のドキュメントをタレントさんたちに見せる、みたいなのをやっていたんです。更生施設の人たちのコメントをすごく撮る回があったので、ちょっと反省したんだなと思ったら坂上忍が「でもやっぱりね」って話題を持って行ったんですよね。これでも尚やるか? と思いました。

 スタジオでは松嶋尚美が泣いている感じの表情をしていて、番組のムードもそういう方向に行くかと思いきや、坂上忍が力で「でもさあ」って、この顔でやりだしたんですよ。

テレビ仕事にうまみを感じると当たり障りないことを言う癖が

吉田:
 基本はキャスティング次第なんですよね。ゲストにある程度事情がわかっている人がいたら空気も変わるけれども、それがなかった場合は司会も含めた番組の空気にどんどん流されていっちゃう。

久田:
 ワイドショーのコメンテーターは本当に調子に乗りすぎだと思います。荻上チキ【※】くんが真面目にやっているじゃないですか。あれは必要ですよ。僕も嫌なんですけれど、ワイドショーのコメンテーターを橋下徹さんが「小銭稼ぎ」って言っていて、僕は当たっていると思うんです。

※荻上チキ
評論家、編集者。サンデーモーニング、NEWS23クロス、朝まで生テレビなどの番組にゲスト出演している。

 中にはいい人もいますよ。だけど調子に乗っている人たちは、どうせ僕は何か言っても何にもならないんだろうと思っているのかもしれないけれども、結構な影響力を持っているし、それで傷ついている人もいるんです。

吉田:
 調子に乗るというのがボクの解釈だとちょっと違っていて、ワイドショーのコメンテーターはテレビの世界で生きる人にとって“手堅い出世コース”なんですよ。ボクも何度か出てみて実感したのは、出演するうちにどこかで自分の役割をなんとなく理解して、その役割に徹するようになっていく。

 そういうショーとしての役割に応じたやり取りが、ボクらとしては「何それ?」みたいな世界になっていくんですけど、出演者側にとっては居心地がいいポジションを発見しただけのことで。だから調子に乗ってるわけではなくて、番組が求める役割をキッチリやりきれるようになったってことだと思うんですよ。ただテレビで手堅く高額な定期収入というのを覚えてしまうと……。

春日:
 そこですよね。

久田:
 そのとおり。週1の出演でサラリーマンの2倍は稼ぐじゃないですか。それはでかいですよ。

吉田:
 最初は安い。言っちゃうと基本3(万円)ぐらいなんですよね。テレビって実績なんですよ。一回その金額で出ると実績になるから、同じテレビ局の番組に一回でも安く出るとそれも実績になっちゃう。

 ボクはテレビ朝日に一回コメント1万で出たことがあって、簡単な仕事だったからそれでもいいかと思ったら、その後も「吉田さんの実績は1なので」みたいなことを何度か言われて(笑)。良かれと思って安く出たら実績にされるの!? っていう(笑)。

久田:
 1はきついな。文化人が3万なので。TOKYO MXが結構高かったですね。

吉田:
 それぐらいの金額で地上波のレギュラーになった場合、下手なことを言うと炎上するっていうところもあって、なんとなく役割をやりきりつつも最終的には当たり障りのないことを言う癖が絶対につくはずなんです。世間の声を汲んだ上で「これは本当に許されないことですね」みたいな無難なことを言うようになっていく。

春日:
 「これはどういうことなんでしょうね」とか。

吉田:
 そうそう。

春日:
 説教癖ですからね。

吉田:
 中身ゼロな(笑)。

久田:
 あまり言いたくないけれども、僕の知り合いの人も出ているときに、うわつまんないこと言ってるなって思っちゃってる。でもそれはぶっちゃけお金ですよね。その人の生活もあるし僕も情があるから、あぁそうかな……って思いながら見ていたりしているけれども、ちょっと看過するのはやめようと思いましたね。

吉田:
 ボクはたまにああいう番組に呼ばれてスパイ活動的に様子を探ってくるくらいが一番いいバランスなんだろうなと思っていて、何も知らずにとやかく言うのもちょっと違うと思うし、だからといってあそこにどっぷり浸かると本業へのマイナスがある気もする。(コメントを読んで)「DOMMUNEの話はどこにいった?」(笑)。

春日:
 いい進行をありがとうございます(笑)。  

ピエール瀧をどう意識するかで、事件の捉え方は180度違う

吉田:
 DOMMUNEの話をすると。今回の『バイキング』で雑な叩かれ方をしたことに対して、坂上忍の特集【※】で返すというやり方は、要は無知に対してこちらは坂上忍を知ろうと思います、ということなんですね。前半が子役からの成長みたいなテーマでなぜかボクも呼ばれてコメントをしました。で、後半が坂上忍の曲でDJをやるっていうアンサーを返したのが、とにかくスマートで。「ふざけるな坂上忍!」と叩くよりも、うまい返しだったと思います。

※今回の坂上忍の特集
DOMMUNEではバイキングでの坂上忍氏の発言を受けて、“坂上忍を知る”ことを意図とした、氏の半生を音楽で間接的に振り返るプログラムおよび、氏がこれまでリリースした楽曲縛りのDJプレイが配信された。

 あと、個人的に最近笑った話があって。歌手の大森靖子さんが言ってたんですけど、あの人は弱者に寄り添うタイプの人なんですよ。この前一緒に歌舞伎町の路上でトークイベントをやったら、「最近、私がいま大好きなのが坂上忍」って言っていて。あまりにもみんなが叩いているから坂上忍がかわいそうになってきて大好きになって、タイムラインに坂上忍を批判するツイートが流れてきてほしくないから、「今”電気グルーヴ”っていう言葉をミュートにしている」って(笑)。

 それぐらいに坂上忍愛があって。大森さんの愛はすごいなと思ったんですよ。「サブカルが全員坂上忍の敵に回るなら私が坂上忍を守る」ぐらいの(笑)。

春日:
 かっこいい!

久田:
 大森靖子さんは二歩進んでいるね。

吉田:
 その視点はなかった。坂上忍を弱者と考えることはなかったから。

春日:
 テレビを背負っている段階で強者と思っちゃいますよね。画期的だった(笑)。改めて思ったのは電気グルーヴっていう存在が特殊だということ。お茶の間と電気グルーヴが好きだという人間のズレが……。

吉田:
 ピエール瀧の知名度と電気グルーヴというもののズレですよね。

春日:
 ピエール瀧をどう意識するかで、今回の捉え方って180度違うんですよね。ファブリーズのCMに出たりとかしているお茶の間のピエール瀧がいて、一方には俺たちの兄貴としてのピエール瀧がいるわけですよね。

久田:
 僕はピエール瀧さんと同じくらいの歳なんですけれど、全然引っかからなかったんですね。『Shangri-La』と『N.O』くらいしかわからないんですよ。

春日:
 メジャーなところですね。

吉田:
 久田さんは不良文化で育っているので当たり前なんですけれども(笑)。

春日:
 中高生の時にラジオを聞いていて、出会っちゃって人生を変えられた……とかなんですよ。

吉田:
 不謹慎なふざけた大人がいたわけですね。

春日:
 彼らが30になる前ですよ。本当にふざけたこと言っていて一番印象的だったのが「オールナイトニッポン(以下、オールナイト)」で石川よしひろさんという歌手がいて……。

吉田:
 とにかく電気グルーヴが敵視していた人がいたんですよね。

春日:
 彼が『We Are the World』みたいなことをオールナイトのパーソナリティ全部でやろうみたいなことを言って、『今、僕たちにできる事』という歌を全員のパーソナリティでやると。武道館でコンサートやるみたいなことでユーミンさんから福山雅治さんまで全員参加したんです。強制的に全員参加したんですけれども電気だけ参加しなかったんです。

 それで、当時の番組のジングルが全部『今、僕たちにできる事』がジングルだったんですよ。CMがあけて入ってくるということで流れると。そして、それがその後に流れる電気グルーヴの番組のオリジナルジングルが、瀧さんの「やめちまえー! 電気グルーヴのオールナイトニッポン!」っていう。こっちだよ、やっぱ! って(笑)。

 はじめて「たまむすび」に出て瀧さんに遭遇したときに、誰と共演しても緊張しなかったのに瀧さんにだけ緊張しちゃったんです。本当にガチガチになって。高校時代のスターですから全然駄目になっちゃって。俺、高校時代に唯一モテた時期があるんですよ。なんでモテたかというとピエール瀧ならどうする? ということを意識していたんです。瀧さんならどう返す? ということばかり考えていたらモテたんです。

吉田:
 電気グルーヴきっかけで女の子と何とか……って言っていましたね。

春日:
 電気好きの女にモテたんですよ。その女性と初体験ができた。俺はまず瀧さんにラジオで人生救ってもらったし、セックスもさせてもらったみたいな(笑)。俺はピエール瀧に決めました。もう一生を捧げる。本当に瀧さんに戻ってきてほしい。瀧さんを悪く言うやつは俺の敵。そう決めました。

久田:
 童貞捨てたのはデカいですね。

春日:
 デカいですよ。

吉田:
 春日さんはすごいですよ。イギリスの留学中に童貞を捨てていますからね。超かっこいいんですよ(笑)。

久田:
 かっこよすぎるじゃないですか(笑)。

吉田:
 そこだけ聞くとかっこいい(笑)。

春日:
 ピンポイントで俺自身がかっこいいときがあったっていう。最も人生が輝いた2週間。

吉田:
 その後また暗黒期に(笑)。

春日:
 もう暗黒が長いです(笑)。電気グルーヴってそういう暗闇であがいているやつらの星だったんです。

「卓球さんに常識を説いてもしょうがないんですよ」

春日:
 やっぱり瀧さんはいいですね。

吉田:
 電気グルーヴというか石野卓球さんも、本来であったら地上波でも成功するくらいの腕があったんですよ。実際にそういう道にもいきかけていたんですよね。バラエティのスキルも相当あって司会とかもやっていたんだけれども、あるところで完全にやめたんです。

春日:
 『ドグラ・マグラ』【※】でしたっけ?

※ドグラ・マグラ
小説家・夢野久作の代表作。

吉田:
 「モグラネグラ」です(笑)。

春日:
 面白かった(笑)。「ごきげろよう」というコーナーをやっていたんです。サイコロトークで「子供の頃にあった嫌な話」とかそういう嫌な話を語るトーク番組があったりとか。僕らみたいなモテないやつらが、すげえ楽しい! と思える感じ。

久田:
 「有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER(以下、サンドリ)」みたいな感じなんですか。

春日:
 近いです。

吉田:
 そういう腕があった人で、でもあえてそっちをやめた人なんです。

久田:
 かっこいいんだな。

春日:
 「タモリの音楽は世界だ」に出ても徹底してタモリさんをおちょくるとか、そういうことを演る人たちだったから裏切らない。瀧さんがだんだんメジャーになっていったから、ラジオでもリスナーとか僕らがおちょくっていたんですよ。瀧さんがそういう雰囲気があるのは気づいていたんでしょうね。

 いずれ「平成教育委員会」とかに出て、ヒデちゃんの隣とかに座って俺たちのことなんか忘れちゃうんだろうなっていう手紙とかが当時来ていたんですよ。そういうおちょくり方をしていたんですけれども、本当にそうなっていったからちょっと驚きながらも。

吉田:
 電気のラジオはテクノの啓蒙番組でもあったわけで、当時日本にそんな伝わっていなかったテクノの曲を毎週ちゃんとかけていたんですよね。で、オランダなりの海外のテクノカルチャーというのは薬物とも密接につながっていたというか。

春日:
 だから俺は高校時代の電気ファンの俺にもう一回戻ろうという気になりましたね。ラジオ復帰してほしいですね。

吉田:
 復帰はして欲しいけれど、ちょっと難しいと思いますよ。特にテレビとかは相当厳しいはずで。音楽の復帰が一番簡単なんですけれども、ラジオはどこまで大丈夫なのか。スポンサーがほとんどついてないTBSラジオなら、まだ可能性はあるのかどうか。

春日:
 また昔みたいに深夜ラジオにきてほしい。だってオールナイトの時とか、卓球さんですけれど本番中にオナニーしに行ってましたもんね。

久田:
 マジですか⁉ すっげえ。

春日:
 よく考えたらそういう人たちだったので何も驚かないんですよ。

吉田:
 そんな卓球さんに常識を説いてもしょうがないんですよ。

春日:
 バカじゃないのって(笑)。オールナイトニッポンでオナニーした人だから(笑)。Twitterでブサイクいじりをやっていますけれど、オールナイトのノリそのままなんですよ。

吉田:
 ずっとブスをいじりつづけている。

春日:
 だから何も変わっていないです。俺は懐メロを聞いてる感じがします。

吉田:
 これだけブスいじりが厳しい時代にまだ頑張っているっていうね。

春日:
 美空ひばりが年に一度出てくるとか、テレ東で細川たかしを見るとか、ああいう雰囲気に近いといえば近いかもしれませんけれども。卓球さんやってるな……俺ももうちょっと頑張らないとな、みたいな。

吉田:
 確かに頑張ってるな感はありますよ。これだけ厳しい時代で頑張っているんですよ。

久田:
 セクハラとかうるさいから。

春日:
 しばらくブサイクいじりをやっていて、そいつのアカウントの写真を自分のアカウントの写真にしたりとか。

吉田:
 わけのわからない絡み方をしているやつの顔写真を探してきて(笑)。あの無邪気な邪気はさすがですよ。アイコンもそれに変えたりして(笑)。

春日:
 ずっとそれ見てます。でもこれが当時のオールナイトのノリなんですよ。叩けるやつは誰だろうと片っ端から叩くっていうのは当時の卓球さんのノリで、瀧さんはどっちかって言うとボーッとしている感じではあったんですけれど。

吉田:
 瀧さんはいい人感があるというか、懐の大きさがあるんですよね。ボクが初めて瀧さんにインタビューをしたときに印象的だったのは、「吉田くんは僕よりも卓球のほうが好きだと思ってた」って言われたことで。確かに影響を受けたのは卓球さんの方なんですけど、瀧さん的な存在への憧れもあるんですよ。

春日:
 僕も瀧さんラブラブで行ったら、「たまむすび」で一緒に写真を撮ったときだってジョジョ立ちのポーズでやってくれましたから。すごいそれだけで嬉しかったですね。俺は普通のレスラーのしょうもないポーズで撮りましたけれど(笑)。緊張しすぎちゃって、俺もジョジョをやればよかったって思いました。もう別格ですね。

久田:
 勉強になります。全然違う文化なので。

春日:
 団塊の世代にとっての石原裕次郎ぐらいのすごさなので。

吉田:
 そこまでじゃないと思いますけど! まあ一部の人にとってはね(笑)。

春日:
 そうです。僕らの世代はサブカルに目覚めさせてくれたり、梶原一騎【※】とかそういうのを啓蒙してくれたり、そういうのがありましたから。

※梶原一騎
漫画原作者であり小説家、映画プロデューサー。代表作は『巨人の星』『あしたのジョー』『タイガーマスク』など。

久田:
 町山【※】さんはちょっと年上ですかね。

※町山
映画評論家の町山智浩氏のこと。

春日:
 町山さんを知る前に電気を知っているんです。町山さんは『映画秘宝』で知っているから。それまで宝島でみうらじゅんにいじられていた側じゃないですか。

吉田:
 ボクはそっちの世代ですが春日さんはちょっと下なので。

春日:
 アラフォーくらいが電気のオールナイト直撃。春風亭一之輔さんとも盛り上がりましたけれども、アラフォーのちょっと変な人はみんなだいたい電気。当時電気を知っているかどうかっていうのがひとつの通行手形みたいになっていましたもんね。電気を知っているやつだったら話せるやつだみたいなそんな感じでしたね。

久田:
 すごい面白いですね。

50年前からワイドショーの図式は変わらない

吉田:
 ワイドショーの是非の話なのに普通にピエール瀧の話になりそうです(笑)。

春日:
 ワイドショーなんて最初から非ですよ。このあいだ見た映画に『経営学入門より ネオン太平記』という50年前の今村昌平の作品があるんですけど、小沢昭一が大阪にキャバレーの第二号店を作るという話で、その場所が文教地区だったんです。それですごいPTAから叩かれるんですね。それがワイドショーに取り上げられて討論会をやろうみたいなことになっていく……というものだったんですけれど。

『経営学入門より ネオン太平記』
(画像は経営学入門より ネオン太平記 | Amazonより)

 PTA軍団がいて、小沢昭一がいて、まさに「バイキング」みたいにひな壇に常識屋がいてバンバン小沢昭一が叩かれていたんです。「これは何ざますか!」と。それを小沢昭一が「ふざけるな、こういうのは男たちには大事なんだ」という描写をやっていたんです。

 これが50年前です。要はそういう感じで50年前からワイドショーって変わらないですよね。

久田:
 図式は変わらないですね。

春日
 つまらない社会常識の代弁者としているんですよ。

吉田:
 でも昭和のワイドショーが完全にどうかしていたというのも事実で、キャスティングがやっぱり異常だったんですよね。サラ金の帝王の杉山治夫【※1】さんっていたじゃないですか。杉山治夫対ミッキー安川【※2】が札束をバラ撒きながらバトルをしてジャッジが梶原一騎とか(笑)。

 アントニオ猪木が脱税騒動を起こしたときの新間寿の独演会1時間生放送で、「女性の方は耳を塞いで下さい。アントニオ猪木のPKO、パンパン、コイコイ、オーマンチョやろう」って言い出したりとか、そういうのが昔は普通にやっていたので。

※1杉山治夫
元消費者金融経営者、元実業家。

※2ミッキー安川
タレントでありラジオパーソナリティ。上述の杉山春夫氏とワイドショーで論争を幾度も繰り広げた。

春日:
 その映画でもワイドショーの司会になるやつが出てきて、野坂昭如ですかね。「君はどうなの? キャバレーはいかがわしいと思うの?」とかそんな感じでいきましたよ。

吉田:
 昭和のワイドショーが持つ、モラルのなさゆえの面白さはちょっとありましたね。今はワイドショーがモラルの側にいきすぎちゃっているのが気持ち悪い。昔はアンモラルでいかがわしいものだったんですよ。

春日:
 あれを見て主婦が毒されるんですよ。うちの母親なんかも「ピエール瀧って……」とか言ってくるんですよ。俺の横でそれを言うかって、40にもなって親子喧嘩ですよ(笑)。

吉田:
 ワイドショーがモラルの側に立たなきゃいけなくなっちゃったことで、テレビを情報源にしていない層とのズレが出てきている気はしますね。

春日:
 坂上忍が最近テレビで人気が出たのって、本来モラルじゃない側だったから人気が出たわけですもんね。

久田:
 はじめはブス叩きで出てきましたもんね。

吉田:
 完全に電気グルーヴの側ですよね。

春日:
 有吉弘行さんがすごいと思うのは、やっぱりあれだけ売れても未だにどんな番組でもブレないところ。坂上忍とかはすぐにブレていますけれど。

吉田:
 ラジオを持っているのが大きいですね。

久田:
 坂上忍さんは本当にみのもんたさんみたいに、目が八の字になって。あんなに人は変わるんだなって思いましたね。

吉田:
 (コメントを読む)「松本人志もその顔になってきた」って。

久田:
 松本さんもな……。その顔になっちゃったな。好きだったのに残念です。
 

▼記事化の箇所は43:30から視聴できます▼

「久田将義×吉田豪のタブーなワイドショー」

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