東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(6)
サンフレッチェ広島・松本泰志@後編

 センターバック、ボランチ、攻撃的MFと、これまでのキャリアであらゆるポジションをこなしてきたことが、オールラウンドに能力が高い要因かもしれない。Jリーグでの出場機会を増やす今、自信を大きく膨らませ、U−22日本代表のミャンマー遠征では欧州組から新たな刺激も得た。「日々充実している」と語るU−22日本代表のボランチ、松本泰志が思い描く未来とは?(インタビュー日は4月17日)

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MF松本泰志(まつもと・たいし)1998年8月22日、埼玉県生まれ。昌平高出身

―― 以前、ボランチの選手ではセルヒオ・ブスケツ(バルセロナ)とケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)が好きだと言っていましたが、それは変わらず?

松本泰志(以下:松本) 変わらないですね。めちゃめちゃ好きです。ブスケツのバランスを取ってゲームをコントロールしてボールを散らすところと、デ・ブライネの一発で局面を変えられるパスとドリブル。あのふたつを組み合わせられたら、最強ですよね。

―― 今シーズン、背番号が32番から17番に変わりましたが、それもデ・ブライネの影響?(デ・ブライネは所属するマンチェスター・シティで背番号17をつけている)。

松本 そうなんです。デ・ブライネが好きなので、17番を背負いたいなっていうのがあって。カズさん(森粼和幸)の8番にも憧れはありますけど、まだ結果を残せていないので。結果を残せるようになったら、いつか8番を背負いたいという想いはあります。

―― 昌平(しょうへい)高時代は2列目でドリブルをしているイメージが強いですが、過去にボランチでプレーしたことはあったんですか?

松本 中学時代はボランチだったんですけど、その頃はドリブルをすることが全然なくて。(所属していた)クマガヤSCは蹴るサッカーなので、セカンドボールを拾ってサイドに散らす感じでしたね。

―― じゃあ、ボランチの面白みはあまり感じることもなく?

松本 そうですね。あまりわからなかったですね。

―― 小学生時代の江南南サッカー少年団では?

松本 センターバックでした。

―― なんで、また?

松本 足が速かったんですよ。

―― 普通、足が速いならFWなのでは?

松本 そうなんですけど、前にはタレントがいたんです。僕自身も前をやりたかったんですけど、みんなのほうが明らかにうまかったので、センターバックしかないかなって。足が速いから、カバーリングして。で、負けていたらFWに移るという感じで。だから、センターバック、ボランチ、2列目ってだんだん前に上がっていったんです。

―― 高校時代の監督は「将来はボランチだろう」と言っていたそうで。

松本 当時、トップ下とか左サイドで使ってもらっていて、ボランチはタケ(針谷岳晃/ジュビロ磐田)がやっていたんです。でも、「お前は絶対、将来ボランチだよ」ってずっと言われていて。ドリブルが得意だったし、得点力もあるほうだったので、前で使ってくれていたと思うんですけど。

―― それに対して、どう思っていた?

松本 いや、ないだろうって(笑)。正直、これだけ前でやっていて、ボランチは無理でしょうって。でも、プロになって実際、ボランチになったので、ずげえなって。

―― なぜ、将来はボランチなのか、理由は言われたんですか?

松本 いや、言われていないんですよね。だから今となっては、気になりますね。

―― 今、ボランチになって、高校時代に2列目をやっていてよかったな、と思うことは?

松本 前の選手の気持ちがわかることかな。いつほしいとか、どこでほしいとか、今、出されたらきついとか、そういうのがわかるのは、前をやっていてよかったなと感じることですね。あと、ボランチはパサーが多いと思うんですけど、あの位置からドリブルでかわしていけるのも、前をやっていたおかげですね。

―― ボランチにどっぷりハマっている?

松本 ハマってますね。高校時代には考えられなかったですけど。ボランチが楽しいとか、守備が楽しいとか思えるようになることは(笑)。

―― U−22日本代表のことも聞かせてください。3月のミャンマー遠征は、クラブでコンスタントに試合に出られるようになって初めての代表活動でしたが、変化を感じました?

松本 帰ってきてすぐにJリーグの試合に出たので、正直身体はきついし、代表とクラブの両立はタフじゃないと務まらないなって感じました。でも、毎週試合を経験できているから、代表でもプレーの質を維持できましたし、ミャンマーでのU−23アジア選手権の予選は、Jリーグに比べたら相手からのプレッシャーが全然ないので、気持ちよくプレーできましたね。

―― U−22日本代表にはコンスタントに選出されていますが、主力としての自覚は芽生えてきました?

松本 いや、とくにそれはないですね。呼んでもらえるのはうれしいですけど、その時々で結果を残していかないと、すぐに呼ばれなくなる。どこかで変なプレーをしたら外されるのが代表だと思うので、1回、1回が勝負。だから、主力という感じはないですね。

―― 昨年9月のアジア大会あたりから、チーム内での存在感は高まった感じがします。

松本 みんながプレーしやすいように、周りが気持ちよく動けるように、下から支えたいなと思いながらやっています。

―― 今回の遠征には中山雄太選手(ズウォレ)、板倉滉選手(フローニンゲン)が欧州のクラブに移籍して初めて代表に合流しましたが、彼らから感じたものは?

松本 雄太くんはゴール前に入っていく意識が高まった。ミャンマーでも2点を取りましたから。昔は真ん中でドンって構えて散らしたり、縦パスを入れたりしていたんですけど、すごく前に行くなと感じましたね。海外で評価されるのは結果、数字じゃないですか。だから、ゴールへの意識が強くなったのかなと。滉くんは守備がすごく変わったというか。寄せが速くなったし、球際の強さが周りのメンバーと比べて際立っていた。



―― 彼らは3バックでもプレーできるけど、ボランチでもプレーできるから、ライバルにもなるし、身近なお手本でもある。

松本 海外を経験している選手と一緒にできるのは、すごくうれしいですし、ふたりは僕にないものをたくさん持っているので、たくさん吸収したいなという想いはあります。

―― 寄せの速さとゴールへの意識も取り入れて。

松本 そうですね。そうすれば、もっと上の段階に行けるんじゃないかって思います。

―― チームの成長はどう感じていますか?

松本 みんな、フォーメーションにも慣れてきて、位置取りもわかってきましたし、選手間のコミュニケーションも試合を追うごとに増えてきています。すごくいい成長ができていると思います。

―― A代表は意識しませんか? 堂安律選手(フローニンゲン)、冨安健洋選手(シント・トロイデン)は同級生ですが。

松本 もちろん、目指すところはそこですけど、現状の力ではまだまだだなって思っています。トミや堂安は全然違いますし、トップクラスだと思うので、彼らに追いつくためには、もっともっと試合経験を積んで、できることを増やしていかないと。

―― 将来的に海外でプレーしたいという想いは?

松本 今のところ、そんなに考えていないです。ここで一流になってから行けたらいいなって思いますけど、まずはここでトップ選手になりたいですね。

―― 今、掲げている大きなテーマは?

松本 やっぱり、ゲームをコントロールできるようになること。あと、バランスを取るだけでなく、決定的な仕事に絡むこと。そのふたつが今の僕の課題なんじゃないかって思います。1試合、1試合、新しいことがたくさん経験できるし、しかも結果もついてくる。試合が終わったあと、練習で自分の課題に取り組めるので、毎日が充実しています。

【profile】
松本泰志(まつもと・たいし)
1998年8月22日生まれ、埼玉県東松山市出身。昌平高時代は1年時に高校選手権、3年時に高校総体に出場する。2017年、サンフレッチェ広島に入団。同年11月、U−20日本代表メンバーに選ばれる。ポジション=MF。180cm、69kg。