1/7月も“日焼け”することをご存じだろうか? われわれの「空の友人」である月には磁場があるが、その存在の仕方は局所的で、不規則だ。磁場は太陽風が月の表面に直接吹きつけた場合に生じるダメージを防いでくれる場合があるが、磁場が弱すぎて太陽風を阻止できないところもある。そうした場所では、太陽放射を受けたところに「月の渦巻き(lunar swirls)」と呼ばれる痕跡が残される。この写真は、NASAの無人月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が撮影した「ライナー・ガンマ(Reiner Gamma)」という渦巻きだ。日焼け止めクリームを塗ったときにムラがあったため、ビーチから戻ってみたら体のあちこちにブチ模様ができていたようなものである。PHOTOGRAPH BY NASA 2/7火星にあるマウルス渓谷(Mawrth Vallis)を捉えたこの写真は、火星表面に豊富にある粘土や鉱物を研究したい科学者にとっては極めて興味深いものだ。これらの物質や特色は、火星にかつて水が存在していた証拠である。とりわけ興味をそそられるのは、処理を施したこの写真で見てとれる色だ。暗い色の部分は玄武岩質岩で、はるか昔に火山活動があったことを示している。一方、黄色と青、緑の部分は含水鉱物である可能性が高い。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/UNIVERSITY OF ARIZONA 3/7NASAの火星探査機「インサイト」は、これまで地震計などの観察機器を慌ただしく配置してきた。ところが3月初め、地下約5mまで掘って熱流量などを観測する「Heat and Physical Properties Package(HP3:通称モグラ)」が掘削を開始したところ、「岩」に突き当たってしまった。火星は岩だらけだったのだ。チームは掘削を中断し、次にとるべき手段を考えざるを得なくなった。火星の表面にはいたるところに岩が転がっているが、インサイトのチームは、地下はそれほどでもないだろうという望みをもっていた。なので、ちょっとした驚きだったわけだ。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/DLR 4/7「葉巻銀河」という異名をもつ「M82」では、驚異的なスピードで星が誕生している。その速さは、わたしたちの地球が属す銀河系の10倍だ。NASAの遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)に搭載された望遠鏡で観察した天文学者たちは、その理由をついに解明できたのではないかと考えている。M82の中心部から吹き出している銀河風が、膨大な量のガスや粒子を移動させる役目を果たしており、それが新たな星の誕生を促す力になっているというのだ。この銀河風はとても強いため、磁場は物理的に外へと引っ張り出される。それに伴って、物質も外へと放出されるわけだ。この合成写真はその様子をとらえている。PHOTOGRAPH BY NASA 5/72組の銀河系がまさに合体しようとしている様子を、NASAのスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡がとらえた。大きいほうが「NGC 7752」、上部に見える小さいほうが「NGC 7753」と呼ばれる銀河だ。銀河が合体する現象は太陽系の初期のほうがより頻繁だったとはいえ、いまでも起きている。しかも、合体で何が起きるのかは予想がつかない。こうした衝突が起きると、合体後に生まれた新しい銀河がさらに星を誕生させることもある一方で、合体によって銀河が消滅し、新しい星を産むことなく光を永遠に失ってしまう場合もある。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH 6/7ニュージーランド在住の市民科学者が、国際宇宙ステーション(ISS)が太陽の前を横切るタイミングを完璧に計算して撮影したのがこの写真だ。ISSは地球の周りを92分ごとに周回しており、その速さは時速27,700km(秒速7.7km)。つまり、ISSが太陽の前を通過するのは、ほんの一瞬の出来事だ。あまりにも速すぎて、ISSの姿をとらえるのはきわめて難しい。空中を飛ぶ銃弾を撮影するようなものだ。この場合、銃弾とは6人を乗せて宇宙空間を突っ切る科学実験室なのだが。PHOTOGRAPH BY IAN GRIFFIN/ESA 7/7ヨーロッパ南天天文台は、新しい望遠鏡「SPECULOOS(Search for habitable Planets EClipsing ULtra-cOOl Stars)」を使って宇宙を楽しんでいる。この望遠鏡は最終的に、科学者が星を識別し、太陽系外惑星を観察するうえで理想的なものになると考えられている。しかし同天文台の天文学者たちは、まずはテストのために、地球から5,000光年離れた有名な干潟星雲をとらえた。こうして撮影されたのが、この写真だ。この新しい望遠鏡は今後、きっと大活躍するだろう。PHOTOGRAPH BY ESO

今週の宇宙ギャラリーは、地球からさほど遠くない約38万kmの地点に浮かぶ月から始めよう。

「月を覆う“日焼け止め”がつくる渦巻き、火星で働く「モグラ」に立ちはだかるもの:今週の宇宙ギャラリー」の写真・リンク付きの記事はこちら

月のところどころに磁場が存在していることは、あまり知られていない。それらの磁場は弱く、局所的で、不規則に変化する。しかし、おおかたは太陽風をかろうじて防ぐ程度の強さがあるため、美しい月面が傷つけられることはない。月にとって、磁場は日焼け止めのようなものなのだ。

新たな観測で判明した月の特徴として「月の渦巻き(lunar swirls)」と呼ばれるものがある。磁場がかなり弱いため、太陽風が吹きつけた痕跡が残った場所のことだ。地球からでも確認できるほど大きな痕跡となっている。

火星で働く「モグラ」がぶつかった障害

次に、火星へと目を移そう。このほど米航空宇宙局(NASA)の火星探査機「インサイト」が、着陸地点の周辺にすべての観測機器を配置し終えた。

最後の仕事は、「モグラ」とも呼ばれるドリル付きの熱流量・物性測定装置「HP3(Heat Flow and Physical Properties Probe)」を設置することだった。HP3は地下約5mまで掘り下げて、火星内部の温度測定と地殻の構成要素の確認を行う装置だ。

ところがインサイトのチームは、HP3の設置にあたって、ちょっとした障害にぶつかってしまった。その正体は「岩」だ。掘削の障害となっているのが、ひとつの岩なのか、分厚い砂礫層なのか、科学者たちはまだ解明していない。このため現在、次に進むべきステップが見つかるまで任務は中断している。

古い鉱物から明らかになること

インサイトが指示を待つあいだ、火星の「マウルス峡谷」を訪ねてみよう。古代からの堆積物があるとても奇妙な場所で、ジャロサイト(鉄ミョウバン石)という古い鉱物が存在する。ジャロサイトは湿気が多く、酸性の環境下で形成される鉱物だ。火星探査機「オポチュニティ」の観察地点でも見つかっている。

見ての通り、火星は水源がまったくなくて極度に乾燥しており、砂塵だらけだ。しかし、火星にはかつて、川や湖が多く点在していた。鉱物を探し出して観察すれば、地球の隣人である火星の謎に、科学者たちはより近づくことができる。

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