巨人・菅野智之【写真:Getty Images】

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15日の阪神戦で自己ワーストの4本塁打10失点を喫した菅野

 今やNPBを代表する投手となった巨人の菅野智之投手の不振が大きな話題になっている。15日の阪神戦では自身ワーストとなる4本塁打を浴びて、こちらもワーストの10失点と大炎上して6回途中KO。ここまで5勝をマークしているものの、3敗を喫し、防御率4.36となっている。菅野は昨季、初めて200イニングを投げ、投球数も3129球と初めて3000球を超えた。その疲労を憂慮する声もある。

 そこで、投手の各種指標で、入団以来の菅野の数値の推移を見ていき、今季に何か変化が起こっているか、探ってみたい。(P/BFは打者1人当たりの投球数。K9は9回当たりの奪三振数。BB9は9回当たりの与四球数。H9は9回当たりの被安打数。HR9は9回当たりの被本塁打数。NPはレギュラーシーズンの投球数)

2013年 P/BF3.88 K9/7.93 BB9/1.89
    H9/8.46 HR9/0.51 NP2832

2014年 P/BF3.83 K9/6.92 BB9/1.87
    H9/7.83 HR9/0.68 NP2454

2015年 P/BF3.82 K9/6.34 BB9/1.86
    H9/7.47 HR9/0.50 NP2710

2016年 P/BF3.94 K9/9.28 BB9/1.28
    H9/7.65 HR9/0.59 NP2863

2017年 P/BF3.92 K9/8.22 BB9/1.49
    H9/6.21 HR9/0.48 NP2795

2018年 P/BF3.91 K9/8.91 BB9/1.60
    H9/7.38 HR9/0.62 NP3129

2019年 P/BF4.00 K9/7.88 BB9/1.68
    H9/9.72 HR9/2.18 NP913

 2013年に巨人に入団した菅野。入団当初の奪三振数は9回当たり6〜7前後、三振もそこそことるが、打たせても取る投手だった。だが、2016年に、菅野の投球スタイルは変化する。K9が急上昇している。つまり三振を数多く取るタイプのピッチャーになったのだ。

 三振を取るためには、少なくとも打者1人当たり3球を投げなければならない。そのため、打者1人に対しての投球数を示すP/BFが、この年から0.1増えた。小さな数字ではあるが、消耗度がやや高まった可能性は否定できない。しかし、被安打や与四球、被本塁打などの数値は大きな変動はない。

 奪三振数は2016年リーグ1位、2017年リーグ2位、2018年リーグ1位。制球力、スタミナに加え、奪三振力もアップして、圧倒的なエースになった。昨年は1978年の近鉄鈴木啓示以来のシーズン8完封。文句なしの成績で、2年連続の沢村賞に輝いた。しかし、投球数はキャリア初めて3000球を超えた。ポストシーズンでも、ヤクルト戦で史上初のノーヒットノーランを記録したが、この試合でも113球を投げた。これも含めれば3242球に上った。

 今季をデータでみると、奪三振数はやや下落し、与四球数も少し増えてはいるが、大きな変動とは言えない。データ上は、制球力が目に見えて落ちているということはない。はっきり違うのはHR9、被本塁打が激増しているのだ。

 菅野は昨年まで、1試合2被本塁打がワーストだったが、今季は4月26日のヤクルト戦で3被本塁打、そして阪神戦では4被本塁打。13被本塁打は12球団ワーストで、自身のシーズンワーストに、あと1本となっている。また、1試合を通じて1球も150km/h以上の速球を投げなかった試合が、8試合中3試合あった。この2点が、これまでとの違いに挙げられる。(広尾晃 / Koh Hiroo)