早期退職者を募る上場企業の数、既に昨年上回る 東京商工リサーチ調査

写真拡大

 2019年に入り5月初旬までに社員に対し希望・早期退職者を募った上場企業は16社にのぼることが14日、民間の調査機関、東京商工リサーチ(東京都千代田区)の調査でわかった。前年1年間で希望・早期退職者を募集した上場企業は12社で、今年は半年足らずで前年を大きく上回るペース。同社は、今後の経済状況によっては、6年ぶりに1万人を超える可能性があると分析している。

【こちらも】リストラ企業、史上最少も業種によりバラツキ

 調査によると、募集・応募人数が最も多かったのは富士通(グループ会社を含む)で、2850人が応募した。次に多かったのは、東芝(グループ会社含む)で1060人の募集に対し、823人が応募した。

 富士通は、成長が見込めるITサービス事業を強化し、間接部門の効率化を目指す「成長に向けたリソースシフト」の一環として、退職者を募集。対象は45歳以上の間接・支援部門に所属する正社員などだった。

 経営再建中の東芝は、収益力強化に向けた構造改革の一環として実施。19年3月までに823人が退職した。しかし東芝は、5月13日にも半導体市況の悪化が加速しているとして、半導体部門の社員を対象に追加で早期退職者を募集すると発表した。350人を予定しているという。  富士通と東芝以外にも、今年に入って、コカ・コーラボトラーズやアステラス製薬、アルペンなどが希望・早期退職者を募集した。

 業種別でみると、電気機器と医薬品が4社ずつで最も多い。医薬品では過去最高の売上収益・営業利益を達成するなど業績が好調な中外製薬が退職者を募ったのが目立つ。これは、薬価引き下げの影響や新薬開発費の上昇に対する懸念が理由とみられる。

 また年齢条件をつけた企業では、45歳以上を対象とした企業が10社で最も多かった。

 希望・早期退職者を募集する企業は、リーマン・ショック後の2009年に191社にのぼったが、13年以降は減少。昨年は2000年以来過去最少の12社にとどまった。しかし今年は、既に3年ぶりに応募者が5000人を突破。1万人を超えれば、1万782人だった13年以来となる。

 東京商工リサーチは、これまでの経営不振を原因とする「リストラ」型から、成長分野への事業転換を図るために余裕のあるうちに人員適正化を進める「先行実施」型の退職者募集が今後増えていくのではないか、と分析。今後は対象年齢をさらに引き下げる動きが強まる可能性もあると指摘している。