■話題の翻訳機をガチンコ検証!

10年以上英語と向き合っていない私にとって、ソースネクスト社の翻訳機『ポケトーク』は、「英語嫌いな私でも外国人と話せるかもしれない」という希望を抱かせるものだった。

ツマミ具依/ライター●29歳●留学経験なし●英語は大学入試のときにやったきり。その後11年は英語と無縁な生活で、英語力ゼロ

使い方はシンプル。Wi−FiかSIMカードを使ってネットに接続し、翻訳したい言語を74言語から選択するだけで準備完了。あとはボタンを押しながら音声を吹き込むと、翻訳されたテキストが画面に表示され、音声も出る。これを繰り返しながら会話していくという仕組みだ。

2018年の日経優秀製品・サービス賞で最優秀賞を受賞するなど知名度も評価も高い代物だが、東京に住んでいる私ですら、使っている人を実際に見たことはない。はたして本当に外国人とコミュニケーションが取れるのか。外国人観光客が多い浅草で試してみよう。

「エクスキューズミー」

1人の欧米人男性に声をかけた。さすがに第一声から突然ポケトークを向けるのは不自然なので、挨拶くらいは自分で言うことにした。

ポケトークに「雑誌の取材に協力してください」と吹き込むと、ポケトークからは「Will you cooperete in the interview of the magazine(雑誌の取材に協力してもらえませんか)」と表示され、自動で音声が流れた。これが翻訳機だとわかってもらえたようで、男性は「OK」と言ってくれた。まずは簡単な英会話を試してみよう。

日本語の右ボタンを押しながら「日本の好きなところと嫌いなところを教えてください」と音声を吹き込む。こんな英語、自分の口で言えと言われたらきっと言えないだろう。

意味は通じたようで、男性は英語で返答してくれたが、翻訳ボタンを押すのが間に合わなかった。ボタンを押しながら話してください、とは英語で言えないからなぁ。ボタンを押してからもう1度話してもらう。

「寺院はとても美しい」

ちゃんと会話になった! ポケトークなしでは、この会話はありえなかった。思わず笑顔になる。

日常会話レベルなら問題なく使えることがわかった。この調子でほかの人にも声をかけていこう。友人といた欧米人女性に声をかけた。

「なぜ日本に来たのですか」

「私たちはライ悟空に滞在していて神社を訪問したいと思っていました。そしてそれからその前にここに滞在していた私たちの友人は神社からさらに離れてアクサ」

■固有名詞は苦手なのかもしれない。

「ライ悟空」? あ、両国のこと? ということは、「アクサ」はたぶん、浅草のことだろう。固有名詞は苦手なのかもしれない。ポケトークは3文にわたるボリュームでも、滞ることなく翻訳していたが、後日確認してみると、女性がしゃべった話について一部翻訳が抜けている箇所があった。

今度は逆に、彼女から質問をされた。

「私たちは何人かの日本人が彼らの口にマスクをかけるのを見ました。なぜ彼らがそれを使うのか知りたいです」

マスクが不思議なの? えっと、花粉症をわかりやすく説明すると……。

「花粉によってアレルギーが引き起こされるからです」

首を縦に動かしながら納得した表情を見せてくれた。

「デバイスの使い勝手はどうですか」

「それはおそらく使用された問題のいくつかの用途ですが、それは私がここで使用するためにダウンロードしたこの無料アプリよりもうまく機能するようです」

ポケトークは、スマホアプリよりも性能が良いという評価だった。

せっかく話せるんだから、外国の方に素敵な体験をして帰ってもらいたい。浅草寺の名物、常香炉を体験しないかと誘ってみよう。

カップルで来ていた外国人に声をかけると「ええ、どうしていいんじゃないの?」との返事。翻訳は怪しいが、画面に表示された原文と合わせて理解することができた。「体の悪いところに煙をかけると良くなると信じられています」と説明し、一緒に煙を被る。

感想を尋ねると、苦笑いとともに「どこでも喫煙」との答え。ちょっと滑稽な表現だが、言いたいことはわかった。

これがあれば、誰とでも楽に話せると思っていたが、直訳から趣旨を読み取る読解力が必要であり、話すときもポケトークが翻訳しやすい、易しい日本語を意識するので、結局頭は使う。

また、本体の操作が追いつかず相手の発言を拾いきれなかった場面もあった。そして通常版よりも高いeSIM内蔵版(定価2万9880円)を使用したのだが、屋外なのに電波を拾ってくれず、使用できない時間があった。

とはいっても、もしポケトークがなければ、今日出会った人の誰ともコミュニケーションを取ることはできなかった。今後のアップデートにより完全なコミュニケーションが取れる日もそう遠くないかもしれない。

■▼浅草の外国人観光客とトークした結果……。

(フリーライター ツマミ 具依 構成=網田和志)