全国の高速道路SA・PAで駐車マス不足、特に大型車用の不足が顕在化。駐車マスの増設だけでなく、空いている駐車エリアに誘導するための新システムなど、様々な対策が進められています。

駐車場大拡張の厚木PA、「光る」対策も

 NEXCO各社が全国の高速道路SA・PAで駐車マスの増設を進めています。NEXCO東日本・中日本・西日本の3社合計で、2018年度には約500台ぶんの増設を完了。2019年度にはさらに、約1200台ぶんが増える予定です。


厚木PAには駐車マスごとに満空を表示するライトが設置された(画像:NEXCO中日本)。

 2019年4月に増設工事が完了した圏央道 厚木PAでは、既存の駐車場から少し離れた第二駐車場ができたことで、駐車マスの数は小型車用、大型車用あわせ、内回りは約1.6倍、外回りは約1.4倍に増加しました。

 この厚木PAではさらに、ひとつひとつの駐車マスにライトが埋め込まれ、空いていれば緑、埋まっていれば赤く点灯するという新システムの運用も開始。駐車中の車両に隠れた空きマスもわかりやすくなるというもので、NEXCO中日本東京支社によると、高速道路の休憩施設では初めての採用だそうです。このほか、場内の案内板でも、まとまった区画ごとの空き状況をリアルタイムに反映させる仕組みが導入されました。

「駐車マスごとのライトや、案内板での空き状況表示は、場内の混雑具合を『見える化』するためです。空いている駐車マスに誘導するほか、特定の区画に車両が溜まらないようにして、ご利用の平準化を図ります」(NEXCO中日本東京支社)

 厚木PAは東名高速に接続する海老名JCTから近いこともあり、昼夜とも駐車場が慢性的に混雑し、車路に停めるクルマも多かったとのこと。こうした大都市近郊のエリアや、東名、新東名など物流の基幹をなす路線において、駐車マス不足に起因するエリアの混雑が顕在化しているといいます。

 NEXCO中日本では2019年度内の完成を目標に、新東名の静岡SA上り線、および浜松SA上り線の駐車場増設にも着手していますが、前者では小型車用が約1.9倍、大型車用が約2倍、後者では小型車用が約1.2倍、大型車用は約2倍に増える見込みです。

全国的に不足の大型車用、どう増やす?

 一連の駐車マス不足対策において、特に重点が置かれているのは大型車用です。たとえば東名の海老名SAでは、深夜帯を中心に大型車の長時間駐車が増え、滞在台数に対して大型車マスが50台ぶん以上不足する場合もあるとのこと。しかし、大きなスペースを必要とする大型車マスは、限られた敷地のなかで十分に増設するのが難しい側面もあります。

 それを解決する施策のひとつが「兼用マス」の増設。大型車用の細長いマスを白線で2つに区切った形で、状況に応じ小型車用(2台ぶん)にすることも、大型車用にすることも可能な駐車マスです。たとえば新東名の駿河湾沼津SAでは、小型車用と大型車用で駐車エリアを大きく分けていましたが、2018年度に小型車用の多くを兼用マスに変更。さらに大型車エリアの区画も見直し、施設を大きく拡張することなく、大型車の駐車可能台数を上下線とも約2倍に増やしました。


小型車・大型車「兼用マス」のイメージ(画像:NEXCO中日本)。

 2018年4月にNEXCO西日本へ取材した際には、物流業界で運行管理が厳格化していることから、SA・PAへの立ち寄り回数だけでなく、仮眠や時間調整のため長時間駐車する人が増えていると話していました。この傾向は全国的で、NEXCO中日本では新東名を中心に、物流ドライバー専用のシャワースポットなども整備し、休憩環境を整えようとしています。駐車マスの増設も、その一環です。

 ちなみに、東名下り線では2019年4月に、高速道路で初となる予約制駐車マス(大型車のみ対象)を設けた豊橋PAが新規オープンしました。このように物流ドライバーへ配慮した施設整備が進められる一方で、SA・PAにおける長時間駐車の抑制を目的とした広報・啓発キャンペーンなども、NEXCO各社で実施されています。