アジアのカフェ・レストランチェーンのなかでも、行列が絶えない店のトップとして挙げられるゴンチャ。人気の理由は、2000種類に及ぶカスタマイズバリエーションの広さだ(写真:ゴンチャ ジャパン)

旅行先としてのアジア人気とあいまって、アジアングルメが人気だ。アジアのカフェ・レストランチェーンの日本展開も盛んになっている。その1つが、台湾茶のチェーン、貢茶(ゴンチャ)だ。

タピオカ入りのミルクティーや、そのほかにもお茶の種類やトッピングを合わせれば2000種類以上にカスタマイズできる点が大人気の1つの理由となっている。2015年に上陸したゴンチャだが、このところ、タピオカブームの再燃を背景に、あちこちの店舗で行列ができるほどの快走を見せている。

では、ゴンチャとはどんなチェーンなのだろうか。そして、多くの人を引きつけるポイントはどこにあるのだろう。

「台湾茶」を全面に掲げた戦略

ゴンチャは、2006年に誕生した台湾のチェーン。2008年に、アジアを中心とした各国に展開を始めた。転機となったのが2012年、韓国での出店。目覚ましい成長を見せ、3年で100店舗を出店するに至った。現在はアジア、オセアニア、北米の約1400店舗にまで広がりを見せている。

日本での運営を担うのがゴンチャ ジャパン。社長の葛目良輔氏は、2015年に経営コンサルティングや経営者派遣による支援を行っているリヴァンプに入社し、現職に就いた。スターバックスコーヒーやマクドナルドなどでの店舗運営の経験も生かし、世界的にも難しいといわれる日本市場での舵取りを行っている。国内では現在30店舗が営業中で、2019年中に50店舗を展開、2020年末までに100店舗展開を狙う。

葛目氏は、日本での展開において、日本市場の特性を踏まえ、方針をいくつか立てたという。

「マーケティングにおける4P、すなわちプロダクト、プライス、プレイス、プロモーションで、日本市場にふさわしいものは何かを考え、取捨選択を行いました」(ゴンチャ ジャパン取締役社長兼COOの葛目良輔氏)

まずプロダクトでは、あえて「王道」を外す選択をとった。

「タピオカミルクティーを押すのが王道ですが、それではアジアのスイーツ、という狭い市場で一部の注目を集めるにすぎない。ブームが終わればすぐに飽きられてしまいます。私は、カフェという大市場の中で、お茶のチェーンという潮流をつくりたいと思いました。

また、コーヒーはメニューから外しました。これは、ゴンチャが展開している約20カ国のうち日本だけです。海外では『コーヒーがあれば男性が頼めるからカップルでも入れるし、客層が広がる』という考えですが、日本の場合はコンセプトがぼやけてしまう。むしろお茶好きの男子へと広げていく考え方です」(葛目氏)


ゴンチャ ジャパン取締役社長兼COO葛目良輔氏(編集部撮影)

なるほどメニューを見ると、主役はあくまで4種類のお茶。タピオカはトッピングの1つとして記載されているにすぎない。また、スムージー系も当初はメニューから外し、2016年から扱いを始めたというように、「お茶の店」を前面に出した。

もともと同チェーンは、“貢茶”という店名にも表れているように、皇帝に献上するような品質のよいお茶を気軽に飲める店、がコンセプト。加えて、葛目自身が以前から抱いていた思いが重なっている。

「スターバックスは上陸当初こそ“シアトル系”などと言われましたが、今はスタバ自体がスタイルになっていますね。コーヒーが好きな人というよりは、ミルクたっぷりのコーヒー味の飲み物とか、空間や雰囲気が好きでスタバに行く。いわばコーヒー嫌いのスタバ好きがいるんです。そのなかにはお茶好きな人もいるだろうし、その人たちの選択肢の1つになれればと思いました」(葛目氏)

つまり、お茶におけるスタバというポジションが狙いのようだ。ただ、スタバは“サードプレイス”をうたっているように、空間を含めてブランディングに加えている。一部の店舗を除きスタンド型であるゴンチャでは、商品のみが勝負だ。

「プレイス」もあえて「王道」を外す

次に、マーケティング戦略の2つ目、「プレイス」についても、葛目氏は意表をつく選択を行ってきた。第1号店は原宿表参道店だが、竹下通りや表参道に面したいわゆる原宿というエリアからは少し離れている。また2号店は阿佐ヶ谷だ。ターミナル駅である新宿、渋谷には2017年になってやっと進出した。これも、プロダクトと同じ考え方。

「竹下通りやショッピングモールへの出店は戦略に入れませんでした。競争が激しく、飽きられたら廃れる。家賃にコストもかかります。今はSNSの時代だから、“表参道”というキーワードさえあれば、実際に表参道から見えない場所でも、集客には問題ありません」(葛目氏)

同社では「デイリー・ティー・プレイス」をコーポレートビジョンとしており、店舗を客にとっての“止まり木”のような存在と位置づける。自宅から目的地である学校や勤務先へと向かう動線のなかで、ターミナル駅・日常・非日常という3つの段階に分け、それぞれに出店しているのだ。

目的地に近く、非日常という性格も併せ持っているのが表参道。反対に、目的地に近く日常に近いのが、2018年6月に出店した日本橋だ。2号店を出店した阿佐ヶ谷は、自宅に近く日常的。ブランドにリアリティを持たせる作戦で出店したという。

「プライス」では、タピオカ入りのミルクティーを490円の設定にし、ほかのブランドよりほんの少し上を目指した。客単価は550円前後で、ゴンチャのなかでも、ジャパンは世界一高く、シンガポールや台湾の2倍ぐらいとのことだ。


左から「マンゴー 有里山ティーエイド+パール+ナタデココ」640円 、1番人気の「ブラックミルクティー+パール」490円 、「ミルクフォーム グリーンティー」420円(筆者撮影)

「10代の若年層が『ちょっと高い』と思う程度に設定しました。中高生などの若年層が気軽に行けるようにすると、大人がくつろげない。若年層にとっては、ちょっと背伸びして行く、ぐらいの位置づけのほうがいいんです。そうすることにより、ブームに終わらずスタイルとして確立する。長く続きます」(葛目氏)

最後の「プロモーション」については、ほとんどしないのが方針だ。お客を呼び込むためのディスカウントもしないという。

さて、ここまでで気になるのが、タピオカの位置づけだ。最初の「プロダクト」についての説明にあったように、タピオカは商品戦略のうえで強調されていないものの、同チェーンではタピオカミルクティーが1番人気である。

また同社にとっても重要なアイテムであることに変わりはなく、チェーンの誕生にも関わっているようだ。現在到来しているタピオカブームの第2波にも実は関係している。

「目新しいもの」が大衆へと広がる「臨界点」

「1990年代に起こったタピオカブームでは、さまざまな品質の店が多くできて、商品品質に関わる事故も起きました。そのため、かえって市場が縮小してしまったという経緯があります。タピオカミルクティーは世界で“バブルティー”と言われていますが、まさにバブルがはじけたわけです。ゴンチャの創業者は、洗練された雰囲気でよりクオリティの高いお茶を提供したいと考え、ゴンチャを起こしました」(葛目氏)

日本でもゴンチャと並べてよく紹介されるのが「春水堂(チュンスイタン)」だが、同チェーンは1983年に台湾で誕生。「タピオカミルクティー発祥の店」をうたっている。1990年代に起こったというタピオカブームは、このチェーンが震源地と言えそうだ。

日本では、2013年に代官山に1号店をオープン。都内に6店舗のほか、埼玉、神奈川、大阪、九州などに7店舗を展開している。また、ゴンチャと同じスタンド型のブランド「TP TEA(ティーピーティー)」を2005年に立ち上げており、2016年からグローバル展開しているのも気になるところだ。

葛目氏の話にもあるように、タピオカミルクティーは“バブルティー”と呼ばれ、アメリカ・カナダ圏でも親しまれている。今、世界的なブームとなっているのは春水堂やゴンチャのようなチェーンが世界展開を始めたことがきっかけになっているのかもしれない。

日本に上陸してから4年、現在は、出店のたびに行列ができるほどの爆発的人気を見せているゴンチャ。この事態は葛目氏にとっても「想定を超えている」という。

「2018年の3月あたりから、こうした傾向が出てきました。一般的に流行を分析した場合、新しいもの好きや一部のファンから大衆へと広がる臨界点があると言われます。おそらく、当社もそれを超えたのかなと」(葛目氏)

同チェーンでは、新規出店時の集客パターンが変わっており、出店後3カ月後ぐらいから客が急増することが多いという。確かに、出店後すぐは来店客数が一気に高まるが、3カ月ほどかけて落ち着いていくのが普通だ。

この理由としては2つ考えられる。ゴンチャでは飲み方や量、トッピングなどのアイテム数が多く、初心者ではオーダーに時間がかかる。多くの人に浸透するまでにはある程度の期間が必要だ。

また、同じことが店舗スタッフにも言える。スタッフがオーダーへの対応に習熟してきたところで回転が上がり、多くの客を呼び込むことができるようになる。これが、出店3カ月後に客が増える理由だ。


スタッフはサービスの要だ。ゴンチャファンならではの熱意に支えられた、フレンドリーな対応が特徴(写真:ゴンチャ ジャパン)

このことも合わせて考えると、 “臨界点超え”の大きなきっかけになっているのが、2017年9月、10月の渋谷、新宿への出店だと、葛目氏は分析する。当然と言えば当然のような気もする。このように、ゴンチャの今の人気も流行の1つであれば、流行には必ず終わりがくる。それをどのように考えるのだろうか。

「もちろんビジネスなので山もあれば谷もあります。しかしコアバリュー、チェーンにとっての原点を失わないようにすれば、乗り切れると考えています」(葛目氏)

コアバリューとはつまり、4つのPで説明したような商品やブランド戦略。安定した価値を客に届けていくことで、一時のブームに終わらず勝ち残れるという。

また、そうした一定の価値を支えているのが、実はスタッフだ。

「ゴンチャ好き」スタッフが接客クオリティに不可欠

「安定した価値の提供。これはつねにヒューマン・スキルです」(葛目氏)

まず、カスタマイズで2000種を超えるアイテム数に対応する必要がある。メインとなるお茶も、今は多くの店舗で1〜2時間で使い切ってしまうものの、もともとは4時間以上置かない、というポリシーを立てている。

また、550円という単価に見合うサービス品質、店舗での体験という価値をお客に提供する必要がある。これらをなしうるには、スタッフのマインドや情熱が欠かせないという。


ゴンチャではスイーツも充実。定番のマンゴーケーキ、パイナップルケーキのほか、提供店舗が限られるが、タルトやプリンなども扱っている。写真は「エッグタルト」250円(筆者撮影)

しかし、一人ひとりにそれを持たせるのは簡単なことではない。同チェーンでは、今は7割がフランチャイズ店。そこに、平均的に店舗あたり常時15人が在店、在籍スタッフ数は50〜70人に上る。となれば、もはや小社会だ。トップとなる店長の采配はもちろん、スタッフ同士の人間関係などもモチベーションに関係する。時給も、他のチェーンに比べ高給というわけではないそうだが、いかに維持するのだろうか。

「当社としては、お客様と同じぐらい大事な存在。スタッフに応募してくるのは、9割がゴンチャのファンですね。さらに、当社のビジョンをしっかり説明して、お客様に価値を提供するんだということをわかってもらう。だからスタッフはゴンチャが本当に好きで、前向きなマインドをもって働いていると思いますし、逆に言えばそういったスタッフが残っているのだと思います」(葛目氏)

今後は2020年に100店舗を1つの目安にし、「今までやってきたことを年齢、性別問わず提供していく」(葛目氏)ということを方針としている。といっても、変化に対応しないわけではない。例えば今流行している「チーズティー」や「バター茶」などトレンドを取り入れつつ、新しいお茶の楽しみ方を伝えていくという。

カフェチェーンのなかのお茶のブランドとして、確固たる地位を築けるか。挑戦は続いていく。