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メルセデス・ベンツSL(1963年)

W113こと2代目SLの基本形は2シーターだが、オプションで簡易的な後席を備え、実用性を高めた仕様も存在した。ハードトップのルーフ形状からパゴダの愛称でも知られるW113の中でも、このオプションを選択した例は少なく、いまやコレクターズアイテムとなっている。

ところが、この第3のシートは横向きに座らされ、乗員は遮るもののない走行風に晒される。しかもソフトトップを上げると、首を曲げなければならなくなる。

フェラーリ365Pベルリネッタ・スペチアーレ(1966年)

マクラーレンF1がセンターコクピットのスーパーカーというアイデアを世に問うはるか以前に、フェラーリは365Pベルリネッタ・スペチアーレでその可能性を探っている。これはマラネロとピニンファリーナ、そして元レーサーでアメリカでフェラーリのインポーターを務めていたルイジ・キネッティとのコラボレーションから生まれた。

ベースはレースカーの365P2で、トレ・ポスティ、すなわち3シーターとしても知られるベルリネッタ・スペチアーレは、完成後の数ヶ月は各地のモーターショーで会場を飾った。スタイリングはディーノ206/246へと繋がるものだが、それらは2シーターだった。

ビッザリーニ・マンタ(1968年)

イタルデザインの処女作であるビッザリーニ・マンタは、ビッザリーニがル・マンに挑むもほんの30分ほどでコースから姿を消したP538がベース。ジョルジエット・ジウジアーロは新作コンセプトカーを製作する際に、その土台として余っていたレースカーのシャシーを用い、この時期でも屈指の衝撃的なショーモデルへと変貌させたのだ。

元がレーシングカーであるだけに、コクピットはセンターに配置されている。これをロードカーへ仕立て直すにあたり、ジウジアーロは極端なほどワイドなボディを活かして、運転席の両側にシートをプラスしたのだ。シフトレバーはドライバーと右側乗員との太ももに挟まれる位置にあるので、右の助手席にはよほど親しい相手しか乗せることができないだろう。

マトラ・バゲーラ(1973年)

マトラ・バゲーラは、妻と愛人を乗せて週末のドライブを楽しめるクルマ、などと呼ばれた。もちろんそれはジョークだが、スポーツカーがハンドリングを犠牲にすることなく実用性を高めようとするなら、これは賢明なパッケージングかもしれない。3つのシートを真横に並べるので、ホイールベースを長く取らなくて済むのだ。

さらにはミドシップレイアウトなので、これよりはるかに高価なクルマに対抗しうるハンドリングを実現。エンジンはシムカの慎ましやかな1294ccだが、よく回り、騒がしいものの、883kgのバゲーラを12.3秒で97km/hまで加速させる。

マクラーレンF1(1993年)

いつ、どのように発表されたとしても、マクラーレンF1はセンセーショナルな存在となっただろう。無駄を削ぎ落としたこのクルマは自然吸気の6.1ℓV12を搭載し、0-97km/hは3.2秒、最高速度は386km/hに達する。しかもそれを、ドライバーのほかに2名を同乗させても実現するのだ。

2座の助手席は、センターにある運転席の左右に配置されるが、やや後方へオフセットすることで、いたずらに車幅が広がるのを防いでいる。ボディサイドには荷物を収納することもでき、究極のスポーツカーの走りを妥協することなく、スペースを最大限活用している。当時の価格は54万ポンド、日本ではおよそ1億円といわれた。

この写真、ステアリングホイールを握るのはかつてマクラーレンを率いていたロン・デニス、助手席に収まるのはこのクルマをデザインしたゴードン・マーレイだ。

イオンGT3(2003年)

このイオンGT3はキットカーだが、デビュー当時にこれ以上のキットカーはほぼなかった。それは、構造面の水準だけの話ではない。サーキット走行を存分に楽しむため、コクピットはセンターに配置されるが、加えて2名が同乗できる、マクラーレンF1のようなパッケージングを採用していたのだ。

軽量なボディには300psオーバーにチューンされたフォード・デュラテックユニットを搭載し、かなりの速さを誇る。オープントップ版のGT3スパイダーもラインナップされたが、2011年には生産がエクシード・オートクラフトに移譲された。その後もイオンの名で製造されているが、現在のラインナップは2シーターとなっている。

ボルボ3CC(2005年)

この3CCが見慣れたクルマに思えるとしたら、それはスタイリングの要素が市販されたC30に受け継がれているからだろう。ただし、電動パワートレインと2+1のシートレイアウトは、今のところ量産に至っていない。

多くの3シーターと異なり、このクルマはフロントに2席、その背後の中央に1席が配置される。これにより、空力を意識したルーフラインが実現しているのだ。ボルボはまた、この功績が大人なら1名、子供なら2名が楽にくつろげるサイズだと説明している。つまり、大人だけで乗るなら3シーターということになる。