アップル、インテルのスマホ向けモデム事業買収を協議していた?(WSJ報道)
アップルが米半導体大手インテルのスマートフォン向けモデム事業の一部買収について協議していた(すでに打ち切り)との噂が報じられています。米ウォール・ストリート・ジャーナルの複数の情報筋によると、アップルとインテルの協議は昨年の夏頃からスタート。そしてアップルとクアルコムが和解して複数年の半導体供給契約を締結したことを受けて、中止されたと伝えられています。

現在インテルはモデムチップ事業の戦略的な代替策を検討しており、これにはアップルやその他の企業への売却も含まれる。すでに多くの関係者から興味を示されており、その売却プロセスを管理するためにゴールドマンサックスグループを雇用したが、まだ初期段階。もしも売却が成立すれば、インテルに数十億ドルの利益をもたらすかもしれないーー関係者はそう述べているとのことです。

もともとアップルはiPhone用モデムチップをクアルコム一社から調達していました。が、両社間のライセンス契約をめぐる関係の悪化から、2018年iPhoneについてはインテルのみが独占供給することに。そしてiPhone向け5Gモデムチップもインテル製が採用と予測されていた経緯があります。

が、アップルとクアルコムが和解したことを受けて、インテルはスマートフォン向け5Gモデムチップ製造からの撤退を発表。両社の和解はiPhone向け5Gモデムチップとしてクアルコム製が採用されることを意味しており、つまりはインテル製チップの採用拡大が見込めず、収益化への明確な道筋が描けなくなったためとされていました。

インテルのスマホ向け5Gモデム事業はかなりの重荷になっていたらしく、同社の事業に詳しい人物によれば売却によって年間10億ドルもの損失から解放されるとのこと。同社のロバート・スワンCEOも事業の売却を検討しているかどうかをインタビューされて「我々の知的財産と従業員にとって何がベストの道筋か、選択肢を考えている」と述べています。

今年3月にアップルが5Gモデム調達に苦労していると報じられた際、証券会社アナリストは「インテルのモデム事業を買収して、チップを自社開発」も選択肢としてあり得ると分析していましたが、なんらかの情報をつかんでいた可能性がありそうです。

その一方、これまでアップルは自社の事業に統合しやすい中小企業の買収を好む傾向がありました。同社の事業に詳しい複数の人物によると、今回の件はアップルが大型事業の買収に前向きになっていることや、売上げが鈍化しつつあるスマートフォン市場の変化を反映しているとのことです。

アップルはiPhoneのSoCであるAシリーズを初めとして、長期的には主要パーツを自社開発に置き換える方針を推進しています。昨年末にも「モデムチップ技術者」を募集していると報じられていましたが、クアルコムとの和解後も、アップル社内で独自モデムチップの開発が進められるのかもしれません。