東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(5)
FC東京・田川亨介@後編

 プロ1年目は4ゴールをマークし、強烈なインパクトを残したが、昨シーズンはフェルナンド・トーレス、金崎夢生の厚い壁に阻まれて調子を落とすと、エースとして期待されたU−19アジア選手権でも納得のいくパフォーマンスを見せられなかった。同じ過ちは繰り返せない――そう心に誓う田川亨介に、U−22、U−20両方の代表チームへの想い、同世代の選手たちへのライバル心について訊いた。

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FW田川亨介(たがわ・きょうすけ)1999年2月11日、長崎県生まれ。サガン鳥栖U−18出身

―― サガン鳥栖でプロになりたての頃は、「(ガレス・)ベイル(レアル・マドリード)が好き」と言っていて、1年後の2018年は、「ポストプレーを磨きたいから、(ロベルト・)レバンドフスキ(バイエルン)や(オリビエ・)ジルー(チェルシー)、大迫(勇也)さん(ブレーメン)を参考にしている」と言っていた。今、参考にしている選手は?

田川亨介(以下:田川) 今は、誰というのはないですね。サッカーは観ているんですけど、誰っていうより、この選手のここっていう感じで、いろんな選手のポイント、ポイントを参考にしている、そんな感じですね。

―― かつてはドリブルや裏抜けが武器で、その後、ポストプレーを磨こうとしていた。鳥栖からFC東京に移籍した今シーズンは、どういう選手になっていくことをイメージしていますか?

田川 もちろん、万能であればあるほど、監督にとっても使い勝手がいい選手になると思うんですけど、このチームは自分のストロング(ポイント)を生かせる場所だと思うので、そこをどれだけ磨けるか。今はそう考えています。自分のストロングであるスピードや抜け出しを、さらに磨いていきたいと思っています。

―― 原点に戻った、ということ?

田川 そうですね。やっぱり自分のスタイルはこれだなって。去年はいろんなものを求められて、2列目でワンタッチではたいたりしていたんですけど、なんか違うなっていうのがあって。今思えば、去年の自分は中途半端でした。なんでもできるのが一番いいんでしょうけど、自分は器用なタイプじゃないから、今は突出した武器を作りたいと思っています。

―― 子どもの頃からスピードを武器にしたストライカーだったんですか?

田川 点取り屋だったのは間違いないんですけど、プレースタイルは今とは全然違いましたね。

―― どういうタイプ?

田川 昔は足もとがけっこううまくて、FWではあるんですけど、10番タイプでした。自分でなんでもやる感じ。でも、中学生になって、身体が大きくなってスピードもついてきた頃から、技術面が下手になってしまって。

―― 大きくなって、スピードもついて、それでシンプルに点が取れるようになったのかもしれない。

田川 そうかもしれないですね。たぶん、10番キャラのままだったらプロにはなれていないでしょうね。それに、中学のときのチーム(雲仙アルディートFC)はボールを保持するスタイルではなく、「走れ」「戦え」っていうスタイルだったので、そういうのも自分に合っていたと思います。それは今も自分のベースになっています。

―― 代表についても聞かせてください。田川選手はU−22代表とU−20代表の両方に選ばれていて、U−22代表は3月にミャンマーに遠征してU−23アジア選手権の予選を戦った。結果は3試合とも大勝でしたが、田川選手は第2戦の東ティモール戦に先発して、先制のチャンスでPKを思い切り、外しましたね。それほど緊張するような場面ではなかったと思いますが。

田川 いや、別に緊張していたわけじゃないですよ。蹴る前に、外しそうだなっていう予感があって。

―― 蹴る前に?

田川 はい(苦笑)。蹴る直前、あ、今日は入らない日だなって。わかるんですよ、なんとなく。これまでも嫌な予感がしたときは、本当に入らないので(苦笑)。

―― じゃあ、仕方ないなってすぐ切り替えて?

田川 さすがに、ああ……はぁ……って落ち込みます。みんなも笑っていましたし。

―― でも、いつか大舞台で、大事な場面で、痛い目に遭うのでは?

田川 だから、大事なときは蹴らないです(笑)。PKは得意じゃないので。とくに試合中に自分で取ったPKは外すことが多いんです。

―― 東ティモール戦のPKも、田川選手が自分で取ったものでした。

田川 そうなんです。だから、蹴りたくなかったんですけど、キッカーが決まってなくて、自分で蹴りにいったら、案の定……(苦笑)。

―― U−22日本代表で、田川選手は3−4−2−1の1トップで起用されている。1トップは裏を狙うだけでなく、2シャドーを生かすなど、役割は多岐にわたります。

田川 ポストプレーで2列目を生かさないといけないんですけど、去年から経験してきて、相手DFとの駆け引きはわかってきたつもりです。シャドーの2枚にはうまい選手が入るので、簡単にはたいて裏を狙うのが一番効くというか。キープして展開するのはもちろんですけど、そのあと自分がどう関わればゴールに向かえるか、いろいろ整理できるようになりましたね。

―― 前田大然選手(松本山雅)、上田綺世選手(法政大学)、小川航基選手(ジュビロ磐田)といったライバルがいるなかで、彼らと異なる自身の強みは?

田川 大然とはタイプが似ていると思うんですけど、クロスからのヘディングは自分の強みだと思うので、そこは東京で磨いていきたいです。あのチームは相手を押し込むことができるし、サイド攻撃も武器のひとつなんですけど、ゴール前に自分しかいないことも多いので、簡単じゃないですけど、ピンポイントで決められるようになれれば。

―― すごく覚えているのが、2018年1月、中国でのU−23アジア選手権で、田川選手が「プロ1年目で点を取ってきたから、ここに呼んでもらえたと思う。今大会でもゴールにこだわってプレーしたい。自分がこのチームを引っ張るぐらいの気持ちでやりたい」と言っていたことです。実際、あの大会ではゴールこそ奪えなかったけれど、ゴールへの姿勢や意欲はかなり出せていた。

田川 そうでしたね。

―― その想いは今でもしっかり持ち続けている? それとも昨年、クラブで生じた迷いが代表でのプレーにも影響している?

田川 本当に去年は、何をしていたんだろうって思いますね。たしかに迷っていたというか……。中国では貪欲にゴールを狙っていたのに、チーム(鳥栖)に帰ってそういう気持ちが徐々に失われていって……。1年目、「自分が、自分が」っていう気持ちでゴールにガツガツ向かって行ったのに、2年目は「あれ?」って思うことが多くなって。



―― 昨年10月のU−19アジア選手権でも、エースとして期待されながら、4試合出場で1ゴール。クラブで出番を失い、難しい状況で迎えた大会だったと思うけど。

田川 そうですね。1年を通していい状態を保てなかった、いい方向に持っていけなかった、というのが正直なところです。だから、5月のU−20ワールドカップにかける想いはすごく強いですね。本番までに東京で少しでも成長して、世界で結果を残したい。その気持ちは今、すごく持っています。

―― 2度目のU−20ワールドカップでもあるし、年長者でもあります。

田川 はい。その責任は間違いなく感じているので、どうやってチームを引っ張っていくかも常に考えています。

―― 同級生の堂安律選手(フローニンゲン)、冨安健洋選手(シント・トロイデン)は今、A代表としてプレーしています。刺激になったり、意識したりする?

田川 もちろん。とくに律は2年前のU−20ワールドカップで活躍して、海外移籍を掴み取った。攻撃の選手は結果を出せば、道が拓けていくじゃないですか。それはチャンスでしかないので、彼らに追いつきたい気持ちは常に持っています。

―― では、最後に。あらためて、プロ3年目の今シーズンをどういうシーズンにしていきたいですか?

田川 まずは自分のストロングをもっと強化していくこと、あと、シーズンを通してスタメンで出場したいですね。途中から出るよりも、頭から出たほうがやりやすいですし。そこですかね、一番は。そのうえでU−20ワールドカップで活躍したり、U−22日本代表に選んでもらえたらうれしいですね。

―― 思い浮かべているゴール数は?

田川 もちろん、結果を出したいですけど、数字は全然気にしてないです。みんなよりも取りたいっていう気持ちだけですね。

【profile】
田川亨介(たがわ・きょうすけ)
1999年2月11日生まれ、長崎県諫早市出身。サガン鳥栖の下部組織出身で、2017年にトップチームに昇格。同年、U−20日本代表に飛び級で選出される。2019年、FC東京に移籍。ポジション=FW。181cm、70kg。