by Olivier Bruchez

自宅のどこにいても快適にインターネットを使えるように、無線LAN(Wi-Fi)を広範囲に強く届くようにしたいと考える人は多いはず。実際に、アルミホイルで反射させるというアナログな方法や、クッキーを焼くときに使うシートでWi-Fiをパワーアップさせる方法などが編み出されています。一方で、情報通信技術(ICT)のコンサルティングを行うフィンランドのMetis Oyは、「Wi-Fiの送信電力を下げる」ことを提案しています。

8 reasons to turn down the transmit power of your Wi-Fi - Metis.fi

https://metis.fi/en/2017/10/txpower/

Metis Oyは公式サイトでWi-Fiに関するさまざまな知識やアイデアを紹介しています。その中で2017年10月に掲載されたのが、「Wi-Fiの出力を下げることを勧める8つの理由」です。

まず前提として、Wi-Fiは共有するものであり、競合するものではないことが示されています。混雑した環境下では、個人のアクセスポイントが隣のものより強いかどうかは接続しやすさに関係なく、出力を上げたからといって近隣の人が使う分も優先的に使える、ということはありません。そのため強くする必要はありませんが、ではなぜ弱めることが推奨されるのかを、以下の8点に分けて説明しています。

1:アクセスポイントのパワーを上げても有効範囲は広がらない

スマートフォンなどのモバイル端末は、バッテリー消費を抑えるために15ミリワット(mW)程度の無線通信しか行わず、一方でアクセスポイントは2.4GHz帯でも100mW、5GHz帯だと200mWのパワーがあります。スマートフォンとPCとで2.4GHz帯と5GHz帯を使い分ける理由もここにありますが、Wi-Fi接続は常に双方向であるためアクセスポイントだけが高い出力でも意味はなく、2.4GHz帯でも大幅にパワーを無駄遣いしていることになります。



2:ローミング

Wi-Fiにおける「ローミング」とは、場所移動に応じて使用するアクセスポイントを自動的に切り替えていく仕組みを指します。多くのデバイスはこのローミングに消極的で、もともと繋いでいたものよりもはるかに強力なアクセスポイントがすぐ近くにある場合でも、今の接続を切断して切り替えるということはなかなか行われません。接続が切れた時ようやくローミングが行われるので、「このエリアで使う」と決まっているアクセスポイントはパワーを抑え、場を離れたときに切断されやすくするのがよいとMetis Oyは提案しています。



3:バッテリー寿命を抑えられる

無線通信はアクセスポイントから端末に送信電力を知らせ、端末がそれに応えることで成立します。モバイル機器はバッテリー状況に従ってアクセスポイントから送信される電力レベルを選択しますが、翻せばバッテリーに余裕さえあれば強い電力を選択してしまうため、はじめからアクセスポイントの送信出力を5mWに設定することで端末のバッテリー寿命を延ばすことができるとのこと。

4:アクセスポイントは安価で増やせる

Wi-Fiのパワーを抑えると困るのが、弱い信号は壁を貫通しないため部屋ごとにアクセスポイントが必要になることです。かつてアクセスポイントはそれなりに高価だったため「最小限の個数を最も効率的な配置で」と考えがちでしたが、アクセスポイントの価格は問題視するほどではなくなってきているので、「低消費電力アクセスポイントの数を増やすことが高性能Wi-Fiネットワークの鍵です」とMetis Oyは述べています。



by Phil Campbell

5:Wi-Fiは干渉しあう

アクセスポイントを増やす上で電力が弱いものを勧める理由は、先に挙げたローミングのしやすさやバッテリー寿命についてだけではなく、「強力なWi-Fiは隣合うデバイスを妨害する」ことにもあるそうです。アクセスポイント同士は少なくとも3メートルほど離して配置するか、または厚いコンクリートの壁で遮られていることが推奨されますが、これもWi-Fi同士が干渉し合って回路内に余分な信号が発生することによります。送信電力が高いとその分信号も強くなるため、干渉も起こりやすくなってしまいます。

6:出力がゆがむ

カーラジオの音量を最大にするとノイズやハウリングで曲の歌詞が聞き取れなくなるように、Wi-Fiの中継器をフルパワーで稼働すると出力がゆがんでしまうことがあるとのこと。使用している機器にもよりますが、出力を下げることで逆にパフォーマンスが向上するということもあるそうです。

7:近隣に優しい

先に述べたとおりWi-Fi同士は干渉し合うため、強力なWi-Fiは近隣のアクセスポイントも当然に妨害します。また、強力なWi-Fiルーターを使っていると「自宅のWi-Fiに接続したスマートフォンを持って家を出ると、少し離れてもつながったまま」という事例が起きますが、屋外から信号を受信できるという状態はセキュリティ的に問題があるとも考えられます。



8:アクセスポイント自体が長持ちする

端末のバッテリー寿命だけではなく、アクセスポイント自体もエネルギー出力が少ないことで寿命が延びます。アクセスポイントは安価ですが、ふいに壊れたときに代替が効かず「よりによってこんな時に」となってしまう恐れもあるため、安定して稼働し続けてくれることは高い利点があるといえます。