トリプルアクセル成功に期待がかかる紀平梨花

 4月11日から「世界フィギュアスケート国別対抗戦」が福岡市で開催され、日本とロシア、アメリカ、フランス、イタリア、カナダの6カ国がエントリーし、シングルは各国男女2名ずつ、ペアとアイスダンスは1組ずつ計24名が出場する。

 ショートプログラム(SP)、フリーともにシングルは1位の12点から12位1点までポイントがつく。ペアとアイスダンスは、1位12点から6位7点のポイントが与えられ、その合計得点で優勝が争われる。

 前回、3大会ぶり2回目の優勝を果たした日本だが、連覇を目指すうえで重要になるのは女子シングルだ。ロシアは世界選手権優勝のアリーナ・ザギトワと3位のエフゲニア・メドベデワが出場せず、8位のソフィア・サモドゥロワと世界選手権補欠だったエリザベータ・トゥクタミシェワが出場する。

 今季、安定感抜群の結果を残しているトゥクタミシェワの底力は要注意だが、日本代表の紀平梨花と坂本花織は、互角以上の勝負ができるはずだ。アメリカのブレイディ・テネル(世界選手権7位)とマライア・ベル(9位)のほか、各国代表よりも、紀平、坂本は上位に入る実力を持っているだけに、ふたりが世界選手権でメダルを逃した悔しさをここでぶつければ、SP、フリーでワンツーを決める可能性も十分ある。

 気をつけたいのはSPでの取りこぼしだ。トゥクタミシェワや好調時のテネルは、ともに70点台を出す力を持っているだけに、ミスをするとここで差を広げられてしまう。とくに紀平は、トリプルアクセルを確実に成功させて、いい滑り出しをしたいところだ。フリーで要警戒となるのは、トリプルアクセルを武器にするトゥクタミシェワになるが、紀平と坂本は最低でも総合3位以内を確保したい。

 男子では、世界選手権を連覇したネイサン・チェンと3位のビンセント・ジョウを擁するアメリカが、強力な布陣で臨んでくる。チェンには、世界選手権での演技を再現するすばらしい滑りを期待したいが、日本が世界王者のチェンに対抗して優勝争いに加わるためには、宇野昌磨の復活が必要だ。

 世界選手権で4位だった宇野が、メダルを逃した失意からどこまで立ち直っているかだが、彼が本来の力を発揮すれば、チェンとも接戦に持ち込めるはずで、ジョウの上に確実に立てる。もうひとりの代表の田中刑事は、今季なかなか力を出し切れず、世界選手権でも14位だったが、シーズン最後の試合でどれだけ意地を見せられるか。ふたりの奮闘が、日本が優勝争いに絡むためのカギになる。

 そのほか、カナダのキーガン・メッシングは世界選手権15位ながらも、グランプリ(GP)ファイナルでは5位と、台風の目になる可能性がある。田中もセカンドグループの中では上位に行ける力を持っているだけに、ノーミスの演技をすることが必要だ。

 また、日本のペアは世界ジュニア14位の三浦璃来/市橋翔哉、アイスダンスは世界選手権21位の小松原美里/ティム・コレトが出場する。

 日本以外の5カ国の代表は、ペアはアメリカ(アシュリー・ケイン/ティモシー・ルデュク:世界選手権9位[以下同])のほか、ロシア(ナタリヤ・ザビアコ/アレクサンドル・エンベルト:3位)、フランス(バネッサ・ジェームス/モルガン・シプレ:5位)、イタリア(ニコル・デラ モニカ/マッテオ・グアリゼ:8位)、カナダ(カーステン・ムーア タワーズ/マイケル・マリナロ:7位)と、いずれも実力者ぞろい。

 アイスダンスはアメリカ(マディソン・ハベル/ザカリー・ダナヒュー:世界選手権3位[以下同])、ロシア(ビクトリア・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ:2位)、フランス(ガブリエラ・パパダキス/ギオーム・シゼロン:優勝)、イタリア(シャルレーヌ・ギニャール/マルコ・ファブリ:8位)、カナダ(ケイトリン・ウィーバー/アンドリュー・ポジェ:5位)と、すべての国のスケーターが世界大会で上位に入った実績を持っている。

 苦しい戦いになるのは必至だが、その中でひとつでも順位を上げられれば日本にとって力になる。そんな状況での優勝争いは、ロシアとアメリカが本命になってくるが、そこに日本がどこまで食らいついて競り合っていけるかが焦点になる。