安倍政権の元で訪れることになる令和相場のスタートは、平成元年とどこが違うのか(撮影:尾形文繁)

先週末の日経平均株価は、5日の雇用統計を控えた週末としては、しっかりの展開だった。ただ、「買いが入っている」と言うよりは、「売りが出ていない」という表現がしっくり来ていたかもしれない。それは東証1部の売買代金が2兆円を割れていたところにも見られる。

それでも強い動きであることは事実で、雇用統計が波乱なく済んで、今週は長期の平均売買コストとして重要視される200日移動平均(約2万1900円)抜けから、いよいよ2万2000円台の展開が期待される。

NYダウは史上最高値まであと約400ドル

一方、注目だったアメリカの3月雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比19.6万人増と、予想の17.5万人増を上回り、2月の2万人増も3.3万人増に上方修正された。

驚いたことに1月分も1万人上方修正され、31.1万人増となっている。また失業率の3.8%にいたっては、50年ぶりの低水準だ。平均時給こそ前月比+0.1%と、予想の+0.3%を下回ったものの、これに対してひところのような過敏な反応はなくなった。すでにNYダウ、S&P500とも年初来高値を更新しており、ダウは史上最高値まであと404ドルに迫った。S&P500はあと38ポイント、ナスダックは171ポイントとなっている。

ダウの史上最高値に匹敵する日経平均の高値は、同時期である昨年10月に達成した27年ぶりの高値2万4270円(引け値ベース)である。この時、ジェローム・パウエルFRB議長は「景気のピークが3年伸びた」とし、FOMC(米公開市場委員会)メンバーの2019年の利上げ見通しは2〜3回となっていた。日本では、日経平均予想EPS(1株あたり利益)は1800円から場合によっては2000円まであるとされ、日経平均3万円説が出ていた。今では、景気不安からパウエル議長はハト派に転換し、日経平均EPSは2000円どころか、1700円も危うい状態だ。

この点から考えると、ダウの史上最高値への挑戦は合理性に欠ける。それだけに、高値警戒感があって当然だが、もし株価の先見性が正しいのなら、今後は金利上昇と企業業績の回復が見えるはずだ。早速、今週から始まるアメリカ企業の1-3月決算がそのカギを握る。また、日本では10連休明け後に本格化する。厳しい新年度の業績予想が出ているが、日経平均も27年ぶり高値から12月の安値の下げ幅の半値戻しを達成している。株価が正しければ、今期業績見通しは予想以上の数字が出るはずだが…。

長年マーケットを見てきた筆者に言わせれば、今市場がなんとなく強いのは、新元号が決まり、新しい時代のスタートという高揚感もある感じがする。そこで、平成元年と令和元年のスタート時を比べて見よう。少なくとも「6つの違い」が明らかになる。

平成と令和のスタート時点はここまで違う

1)平成は昭和天皇崩御の自粛からのスタートだった。昭和64年(1989年)1月7日昭和天皇崩御、同日明仁皇太子皇位継承、翌8日には平成に突入。ただただ慌ただしく、とても新しいスタートを祝う雰囲気ではなかった。従って新テーマを冷静に捜せず、結局のところ、資産バブルに乗って含み資産株だけが、崩壊に向かってひたすら買われた。令和は十分な準備と心構えが出来ており、お祭り騒ぎも心置きなく出来る。5Gを中心に、新しい御代のテーマも豊富だ。

2)平成元年4月1日、消費税が3%でスタートした。令和元年10月には10%への増税が確実だが、減速気味の世界経済や各国の緩和策の中で、日本の増税はいかにも違和感があり、ここへ来て急速に「中止」説が浮上している。もちろん、すでに101兆円予算に代表される対策が打たれており、アベノミクス失敗を意味する消費税中止は、安倍晋三首相からは言い出すはずもないが、外圧なら受け入れられるはずだ。もし消費税増税が中止になると、投資家は「消費税対策」のもらい得となる。

3)平成元年11月9日ベルリンの壁が撤去され、自由貿易の地球規模のビッグバンが起こったが、令和元年ではメキシコの壁が建設される。アメリカの一国主義は、世界を不安に陥れているが、皮肉なことに日本を自由貿易の盟主として、世界へ押し出すチャンスになっている。CPTTP(環太平洋パートナーシップ)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)、そしてEUとのEPA(経済連携協定)は日本経済を活性化して行くことになるはずだ。

4)平成元年は公定歩合引き上げ(金利上昇)の1年だったが、令和元年はマイナス金利。世界でじゃぶじゃぶになっているお金は、当然消去法的に「割安の地」である日本にも流れて来るだろう。

5)平成元年5月20日北京に戒厳令(天安門事件)が敷かれたが、令和元年の中国は社会主義市場経済のもと金融緩和と減税に勤しんでいる。3月のPMI(購買担当者景気指数)に見られるように、その効果は出始めた。

6)平成元年9月4日、日米貿易不均衡の是正を目的として、日米構造協議(Structural Impediments Initiative SII)が開始された。ターゲットはまさに日本だった。この時、アメリカは中国(当時は日本のGDPの約10分の1)など眼中になかったが、「令和元年」は米中協議が主役だ。日米物品貿易協定(TAG)交渉も近々始まるが、やはりアメリカの本当のターゲットは中国。日本の全面協力が必要な今、日本を大きく傷付けることは流石にすまい。為替条項は盛り込まれないと見る。

こうしてみると、いかに違うかが浮き彫りになるはずだ。以上のことから、今週の予想レンジは2万1500円〜2万2300円と予想する。