団塊ジュニア世代が、かつて夢中になって読んだ『週刊少年ジャンプ』の「復刻版 週刊少年ジャンプ」。写真は「パック3」(筆者撮影)

今の時代のエンタメコンテンツは、結局は「おっさんホイホイ」が手堅いのだろう。何しろ人口の多い団塊ジュニア中心の、30代後半から50代を意識した「リメイク」「アナザーストーリー」的なものがヒットしている。映画『ボヘミアン・ラプソディ』もそうした世代の心に刺さる偉人の人生を描き、3月に興行収入125億円を突破した。

流行する「団塊ジュニア世代向け」

私のような団塊ジュニア世代にあたる45歳男と同世代の間で話題になる漫画は、『キン肉マン』や『魁!!男塾』の続編や、「島耕作」シリーズのスピンオフ作品だ。CMがガンガン放送されているスマホゲームにしても、『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』『ロマンシング サガ』の派生作品など、もともとはわれわれ世代が熱中したゲームばかり。

アニメにも同様の傾向が見られる。2018年5月にNHKが放送した「全ガンダム投票40th」では、作品部門の1位はいわゆる「ファースト」となった。『ガンダム』は今でもアニメ放送が続いているにもかかわらず、オッサン世代では「ファースト」とその次の「Z」ぐらいしか観たことがないという人も案外多い。

だからこそ、「ザクとうふ」(2012年)が発売されたり、日清のカップヌードルのおまけにファーストガンダムのフィギュア(2011年)が付いたり、昨年の有馬記念のPRにファーストガンダムとコラボした「有馬戦士ガンダム」という企画が生まれたりしたのだろう。

どうも、われわれ世代が「大人買い」をできる年齢になったところに、エンタメ業界や関連業界が懸けているように思えてならない。そして、2017年の週刊少年ジャンプ50周年のときはまさにドンピシャの企画が来た。それは「復刻版 週刊少年ジャンプ」である。

1968年1号(創刊号)と、1995年新年3・4合併号(最大部数号)が「パック1」で833円、発売時の価格は合わせて300円だった。「パック2」は『ジョジョの奇妙な冒険』が連載開始した1987年新年1・2号と、『ONE PIECE』の連載開始号である1997年34号(同833円、380円)。

そして、「パック3」は『北斗の拳』の登場人物・ラオウが死ぬ「第一部」の完結号となる1986年26号と『DRAGON BALL』の人気順位最大得票号となった1991年21・22合併号だ(同833円、370円)。

しかしながら、この3つのパックの出来は正直残念だった。なぜかといえば、「おっさんホイホイ」としての完成度が低かったのだ。「顧客目線ではなく、ジャンプブランド目線」、いや、もっと言えば「編集部・集英社目線・当時の関係者目線」になっていたのに加え、「ジャンプというブランドが大好きでしょうがない人向けの最大のサービス」になっていたからだ。

発売から1年半が経過したのに、いきなり難癖をつけて申し訳ない。もちろん、いったん関係がそれほど良好とはいえなくなった「コアミックス」が、その後も付き合った作者による『北斗の拳』『CITY HUNTER』も収録されているだけに、この企画を実現させた関係者には敬意を表するものの、かつての熱狂的な読者としては、「違う!」と言いたくなったのだ。

なぜグッとこない?

今後、集英社がこうした企画をする場合、おそらく現在45歳前後のボリューム世代が求めるであろうものをここで書いておく。もしもそれが達成された場合は、個人的には毎月3000円ぐらいは使ってしまうかもしれない。

ジャンプの復刻版については、今回6冊あったが、実は3冊しか読まなかった。やはりもっとも熱心に読んでいた小学5年生〜中学1年生あたりの2冊が最高だと感じられた。

私がジャンプを読んでいたのは、小学4年(1983年)から中学2年(1987年)で、「少年」とついているだけに、アメリカに引っ越したというのもあるが、高校生以降は「毎週、少年漫画誌を買う」という習慣が完全になくなってしまった。よっぽどの漫画好き、ジャンプ好きであれば読むだろうし、50歳になってもジャンプは買い続けるかもしれない。その人にとって、「リアルタイム」は延々続いている。

しかし、いつしかその「リアルタイム」を捨てた人間にとっては、そのコンテンツへの愛情は失われるもの。

だからこそ、私にとっては『ハイスクール!奇面組』『銀牙−流れ星 銀−』『きまぐれ★オレンジロード』『聖闘士星矢』『男坂』『魁!!男塾』『ついでにとんちんかん』『キン肉マン』『CITY HUNTER』『キャッツ・アイ』『天地を喰らう』『赤龍王』『シェイプアップ乱』『キャプテン翼』『ブラック・エンジェルズ』以外の作品を、今さら読みたいとは思わない。

リアルタイムで読んでいたにもかかわらず、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は長すぎたので愛着がなかったし、『ジョジョの奇妙な冒険』と『ドラゴンボール』については、自分が読んでいたときと別作品のように変質してしまったため、まったく興味がない。

とんでもないヒット作となった『スラムダンク』『幽遊白書』『ONE PIECE』も読む気はない。むしろ、漫画喫茶に行った場合は、リアルタイムで読んでいた、1巻をかろうじて出すに至った不人気作『すもも』(天沼俊)の第1巻(これですべて)をむしろ読むだろう。

「ケッ、この頭の固いオッサンが!」と思うのもよい。だが、こうした硬直的な考えを持ったオッサンこそ、好きなジャンルについては、金と時間を惜しまない傾向にあるのも事実だ(ちなみに後にジャンプ編集部も反省をしたのか、味をしめたのかは知らないが、2018年からは『キン肉マン』や『ドラゴンボール』『CITY HUNTER』など作品ごとのベストシーンだけを集めたムック本を出版している)。

「オッサンの影響力」は侮れない

実際、こうしたオッサンの影響力は侮れない。5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)を含め、ネット上では同世代と思われる人々によるオッサンホイホイ的な書き込みが多数存在するし、話題になることも多く、企業のプロモーションに生かされるケースも多い。

ここ数年、筆者が特に注目しているのは『北斗の拳』にまつわる書き込みだ。

今年1月に引退を発表した横綱・稀勢の里は「わが相撲人生に一切の悔いなし」と引退会見で語ったが、このときは「ラオウかよ」と散々ネットに書き込まれたうえ、ニュースとしても取り上げられた。『北斗の拳』関連の話題はネットでは拡散する傾向があるので、企業のマーケティングに活用してもいいかもしれない。

2013年、2ちゃんねるまとめサイト「痛いニュース」には、「【画像】 朝日新聞朝刊の『北斗の拳30周年記念全面広告』がヤバすぎると話題に」というスレッドがまとめられた。これは、朝日新聞の両面広告がヤバすぎ、ということを表したものなのだが、この広告の作り手はよくネットのオッサンの気持ちをよくわかっていた。

大ヒット作の30周年記念広告といえば、ケンシロウやラオウ、レイ、トキ、ユリア、リン、バット、ファルコ、シン、サウザーといった主要キャラを出す発想になるだろう。だが、この広告はひたすら名もなきザコキャラを前面に出した。しかも、全員が野卑た笑いを浮かべ「エラそうに新聞なんて読みやがって!!!」というコピーまである。

登場したのはそれこそ「汚物は消毒だー男」やら、「牙一族の下っ端」「獄長ウイグルの子分」「おまえのようなババアがいるか!!の男」などだ。

こうしたキャラが勢ぞろいしただけなのに、ネットで嫌われがちな朝日新聞が高く評価された。さらに「確かにこれは企画勝ちだな。ここでケンシロウを持ってくることしか思いつかない広告マンは三流。ラオウを持ってくるやつは二流」や「朝日嫌いだがこの広告は面白い」といったコメントまで書かれた。

このように中高年は趣味が固定化するものであり、若き日々に読んだコンテンツに対する異常なるロイヤルティーを示すものである。「進歩がねぇなぁ」と言うもよし。だが、これで十分幸せなのである。