アップルがiPhone用の5Gモデムチップ調達に苦労していると観測されるなか、米半導体大手クアルコム社長のクリスティアーノ・アモン氏が「アップルに5Gモデムを供給する用意がある」との趣旨を発言したことが報じられています(写真はOPPOのイベントに登壇した同氏です)。昨年末から「2019年の新型iPhoneは5G対応を見送る」との噂はたびたび伝えられていますが、現在では複数のアナリストが2020年でさえ実現は厳しく、2021年まで先送りされるとの見方に傾きつつあります。

その理由は、アップルが5Gモデムの調達先を探すのが困難であるということ。iPhone最新モデルについてはインテルが唯一のモデムチップ供給元となっていますが、その5Gモデム開発が遅れている事情が1つ。ほか、サムスンやMediaTekといったメーカーも諸要因により選択肢としにくい状況が伝えられていました。

が、アップルが5Gモデム周りで苦戦している元をたどれば、5Gモデム最大手であるクアルコムとの特許やライセンス料など数々の訴訟を含んだ不仲が最大の原因です。今回のアモン氏による発言には「当事者がそれを言うのか」という文脈もあるわけです。

アモン氏は米ニュースメディアAxiosの取材に対して「アップルが苦労しているなら、5Gモデムで喜んで協力を検討する用意がある」と回答。続けて「アップルがしていることにはコメントできない」としつつ、「5G対応が遅れるほど、参入するハードルは高くなる」と述べています。

さらに本当に5G製品に関してアップルと協力する意図があるかどうかについては「我々はまだサンディエゴにいるし、彼らはこちらの電話番号を知っている」「連絡をくれればサポートするよ」とのことです。

が、まさにアップルがiPhone2018年モデルのモデムチップ供給を頼んだ際に、クアルコムに拒否されたとの証言もありました。以前クアルコムはアップルに和解を呼びかけたことがありましたが、その後も世界中で両社の訴訟は続いています。今回のアモン氏のメッセージも、そうした駆け引きの1つかもしれません。