アプリのレビューに対する開発者の回答が話題に(写真はイメージです)

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「あなたの今後の人生のために、社会人として必要なアドバイスをして差し上げましょう」。スマートフォン・タブレット向けアプリのユーザーレビューに返信したデベロッパー(アプリ開発者)の回答が話題を集めている。

20字程度のレビューに800字を超える長文で応対した開発者。諭すように滔々と説くさまはどこか辛辣さも感じてしまうが、ツイッター上では「クレーマー対処はこうあるべき」とその内容に共感の声も相次ぐ。なぜ異例の長文回答をつづったのか、開発者にその理由を聞いてみた。

「やるべきことをやらずに他人に責任転嫁して文句を言うのはいただけません」

「なんとかして!! 三江線が廃線になってねーぞ!!」。レビューはこれだけだった。「App Store」で提供中のアプリ「乗り鉄撮り鉄」に2019年3月28日付で寄せられた。

アプリは日本全国の駅の訪問日時・メモ・撮影写真の記録ができる。駅の場所は鉄道会社・路線一覧や地図上から調べることができる。JR、私鉄、第3セクターを網羅しており、路線ごとに表示される訪問達成率がコンプリート欲をかき立てる。

開発者の回答があったのは翌29日付。「あなたの今後の人生のために、社会人として必要なアドバイスをして差し上げましょう」の1文で始まり、3点の「アドバイス」をした。

1点目は「『他人を疑う前に、自分を疑う』です」。

「最新の路線データでは、三江線は廃線となっています。最新の路線データをオンライン更新して三江線を確認すれば、廃線になってないという意見は出てこないはずですが、アプリを起動して最初の画面で『最新の路線データがオンライン配布されているので更新を実施して下さい』という旨のメッセージが表示されているにも関わらず、やるべきことをやらずに他人に責任転嫁して文句を言うのはいただけません」

JR三江線は島根県江津(ごうつ)市から広島県三次(みよし)市までを走っていたが、18年4月1日付で廃線となった。アプリを開くと、確かに路線データの更新を勧めるポップアップが表示され、具体的な操作手順も示される。

2点目は「『問題が生じた場合は、サポート宛に直接連絡をとって対応を依頼したり指示を仰ぐ』です」。レビューは投稿からApp Storeに表示されるまで12時間以上、さらに開発者の回答もApp Storeに反映されるまで12時間以上かかるとして、「その時間の分だけ対応も遅れます」と指摘。「アプリから操作できるサポート宛のメール送信機能を使用して連絡すれば、即座に必要かつ的確なアドバイスが得られたり、問題に対処することが可能になります」と、より良い連絡手段を提示した。確かにアプリ上には「サポートサイトへのメール送信」というコマンドが用意されており、タップするとメール作成画面に自動遷移する設計になっている。

「他人に敬意を払う」

極めつけは3点目の「他人に敬意を払う」である。

「『なんとかして!!』とは何ですか? 『なってねーぞ!!』とは何ですか? それが他人にモノを言う時の言い方ですか? 自分が見識のない赤の他人からいきなり同じような言葉を投げかけられたらどう思いますか?」

開発者はレビューをしたユーザーの投稿履歴を確認したとして、

「他のアプリにも同じようなぞんざいな論調の投稿をしているようですが、無料で配信されているアプリにすら感謝せず、不平不満を挙げ連ね、アプリ開発者に敬意を払わない姿勢はいただけません」

と諭すように指摘した。そして最後に

「上記3点を理解していただけないということでしたら、直ちにこのアプリを削除して下さい。それが出来ない人物にアプリを使って欲しくはありませんし、このアプリを使用する資格はないと断言します」

との言葉を残していた。

こうした開発者の返答は4月2日にツイッターユーザーが拡散。アプリの内容を超えて礼儀を説く内容は、

「『お客様は神様』という考えが根付いている現代社会で、ここまでユーザーに物を言える運営さんもなかなかいないと思います。さぞ勇気のある方なんでしょうね」
「直ちにこのアプリを削除してください →ここが一番かっこいいし、クレーマー対処はこうあるべき」
「素晴らしいド正論 運営に拍手を贈りたいです」
「ガチ説教で草」

などと注目を集めた。ただ、異例の辛辣な文章には

「ユーザーは客なんだから運営はどんなに腹が立っても立場上こんなことしちゃあかんと思うで」
アプリの評価・レビューへの返信で説教というのも筋違いな気がします」

と嫌悪感を抱くユーザーも散見される。

「投稿者の今後の人生を案じ、的確なアドバイスが必要だという判断」

なぜこれほどの長文を寄せたのだろうか。回答を投稿したデベロッパー「Artisan Force」の開発担当者は3日、J-CASTニュースの取材に、

「投稿されたレビューに対しては、可能な限り真摯に向き合う姿勢をポリシーとして持っているからでございます。また、レビュー回答に記載している通り、投稿者の今後の人生を案じ、的確なアドバイスが必要だという判断から返信を回答いたしました」

と答えた。アプリは自身が「旅行好き」で「こんなアプリがあったらいいなあという思い」から作ったという。

上記のようにレビューへの回答に反響が相次いでいるが、担当者は

「肯定的な意見のほか、否定的な意見もツイッターではあるようですが、各個人それぞれの思想信条に基づく意見があるのは当然であり、表現の自由は憲法で保障されていますので、特に思うところはございません、というところが率直な思いです」

と冷静だった。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)