SNSでは「中年ユーザーの増加」が若いユーザー離れを招いたが、「TikTok」にも当てはまるのだろうか?(写真:PonyWang/iStock)

ここ最近、動画投稿アプリ「TikTok」を利用する40代男性の増加が注目を集めている。TikTokは、軽快な音楽に合わせて、ダンスや口パクをした動画を撮影、投稿するというもの。

2018年5月にアプリ分析プラットフォーム「App Ape」が発表した分析結果によると、TikTokはユーザーの半数以上を10〜20代が占める若者中心のアプリには違いない。だが、次に利用者が多いのは40代のユーザー(16.8%)だった。さらに40代男性の割合は全体の9.7%に上り、ネットでは「TikTokおじさん」なる造語まで生まれた。

TikTokを利用する40代男性が増えたのは、なぜか? 複数の理由が考えられる。

「TikTok」はどんなアプリか?

2018年11月より、TikTokのCMがリニューアルされた。その内容は、上戸彩さんが、後輩の小芝風花さんに誘われてTikTokを始めるというもの。最初は嫌がっていた上戸さんだが、撮ってみたら予想外に楽しかった……という、ユーザーの心情を代弁するようなストーリーになっている。そもそも10代に人気のタレントではなく、上戸彩さんを採用している時点で、TikTokを広い年代に普及させたい運営元のバイトダンスの意図がうかがえる。

TikTokの動画はスマホで撮影しなければいけないため、上半身アップの動画が多く、若くてかわいらしい女性の投稿が人気を集める傾向にある。ある中年男性は、「やたら若いかわいい女の子の動画が多いと思ったら、あとで『AIで好みそうな動画がおすすめされている』と知り、ちょっと焦った」と言っていた。

別の男性にも話を聞くと、「チックトックじゃないの? まず、アプリ名がよくわからない」と言う。

さらに、「小学生の娘が『最近学校ではやっている』というのでアプリを見たが、化粧をした女子小学生がへそを出して踊っていたり、制服姿の女子高生が教室で双子ダンスをしていたり、何が楽しいのかわからない」とも言っていた。また、「動画投稿者のダンスが別にうまくない」「コメント欄が荒れている」ところも気になったという。

かつてニコニコ動画に投稿されていた「踊ってみた」系動画では、プロ顔負けのダンスを見せるユーザーが人気となった。しかし、TikTokではうまいどころか、振り付けとも言えないようなゆるい動きをしている動画が多い。また、投稿された動画のコメントは全体的に荒れており、匿名で利用できるため誹謗中傷が多い点は、保護者世代には気になるだろう。

一方で、こんな意見もあった。ある男性は、「単純に若くてかわいい子が踊っているのを見ているのが楽しい。誰も知らない素人のグラビア版みたいに楽しんでいる。実はお気に入りの子もいる」と正直に答えてくれた。

また違う男性は、「子どもが利用したいというのでのぞいたのがきっかけ。自分が年を食ったのを感じるので、若い子の文化に接したら多少若返るかなと思って。1本が短いし気に入らないものは飛ばせるし、考えないでいいし気晴らしになる」と言っていた。

このように、「若い女性を見られるのが楽しい」「子ども世代が利用しているので気になる」など理由はさまざまだが、40代男性が気になる要素が多いのがTikTokの特徴だ。中年男性のユーザーが増えているのも決して不思議ではない。

若者の「TikTok離れ」が起きない理由

FacebookやLINE、InstagramなどのSNSは、「中年ユーザーの増加」が若いユーザー離れを招いた。それはTikTokにも当てはまるのだろうか?

昔から若者は自分たちがコミュニケーションする場に大人が介入するのを敬遠するものだ。例えばInstagramで、女子大生同士がリアルで付き合いのある同級生や先輩後輩とコミュニケーションしている中、そこに当事者でない大人が入り込むと、「プライベート空間に無理やり入ってきた」と思われて嫌がられてしまう。

だが、TikTokには、その心配がない。例えばFacebookは、完全に仲間向けの投稿をする場だ。またInstagramの投稿は広く他人に向けて投稿するが、ストーリーズは主に仲間内に向けて投稿する場となっている。一方TikTokでは、フォロワーは「ファン」と呼ぶ。TikTokはそもそも友だち同士でつながる場ではなく、「他人に自分を見てもらう場」なのだ。

またTikTokでは、AIによっておすすめ欄にユーザーの好きそうな動画が出てくる仕組みなので、好みでないユーザーの動画は表示されづらい。ファン(フォロワー)0の状態の新規ユーザーによる投稿も一定割合で表示されるため、40代男性のユーザーが増えるとそのような投稿も増えるが、悪目立ちするほどではない。

嫌がられるのは、むしろコメント欄に出没する40代男性だ。若い女性のアカウントのコメント欄には中年男性とおぼしきアカウントが、「かわいいね」「LINEを交換しよう」などとコメントを付けていることもあり、よくスルーされている。

では、TikTokをおじさんが投稿するのはナシなのか。確かに、基本的にはかわいい、きれいな若い女性が人気を集める傾向にある。だが、裾野が広がってきた今のTikTokはそれだけではない。

人気動画「#祖父母とtikる」

例えば、祖父母がTikTokをしている様子を撮った動画が現在人気を集めている。孫が祖父母に流行のダンスを踊ってもらい、動画に撮っているのだ。


(左)「#祖父母とtikる」と、(右)「#あかちゃん」が人気を集めている(筆者撮影)

70〜80代の祖父母世代が流行の「#だれでもダンス」(両腕を交差するダンス)などをしていると、確かにほのぼのするし、かわいい。「#祖父母とtikる」は、2019年3月時点で980万再生を超えている。

レシピを動画にした「#tiktokレシピ」(約4億5000万再生)、ラテアートを作る動画「#ラテアート」(約3800万再生)、再生するとイラストができあがっていく「#イラスト同盟」(約1億4000万再生)などのハウツー系動画、ペットを撮影した「#自慢のペット」(約12億再生)、赤ちゃんを撮影した「#あかちゃん」(約2500万再生)など、かわいい系動画も人気が高い。

最近は、ずばり「#おじさん」(約1500万再生)や「#おじさんかわいい」(約70万再生)などのハッシュタグも人気が高まっている。例えば、音楽に合わせて女子高生2人が手に顎を乗せた後、おじさんがコミカルに顎を乗せる動画に「かわいい」というコメントが数多く投稿されている。

若者と中年が対立せず、進んで交流をする。これもまたTikTokの強みに違いない。