パナソニックの動画に強いミラーレス一眼「DC-GH5S」が生み出したYouTube時代の成功ストーリーと好循環とは

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レンズ交換式カメラにおいて確固たる地位を築いているミラーレス一眼には、一眼レフにまさるメリットがある。

ミラーレス一眼は、
ビューファインダーや背面モニター上で、撮影結果に近い映像が確認できる。
このため撮影前に写真の明暗や仕上りを確認し、カメラ設定や照明などの変更や調整をしておけるのである。また、映像の拡大表示ができるので正確なピントあわせも可能だ。

もちろん、これは静止画だけではなく動画撮影においても、面倒な操作をすることなく撮影可能であるため、撮影するシーンに応じた交換レンズを選ぶことで最高の映像を撮影する、なんてこともできる。

パナソニックの「GH」シリーズは、そんなミラーレス一眼と動画撮影の相性の良さを早い段階で見いだして製品化してきた。


2009年、HD動画を特徴としたDMC-GH1を発表

初代の「DMC-GH1」は、コンパクトデジカメやビデオカメラよりも大きなマイクロフォーサーズ規格のイメージセンサーの高画質を活かし、ハイビジョン動画を手軽に撮影して、テレビで楽しむことをコンセプトしたモデルである。

カメラとテレビを組み合わせることで新しいニーズを掘り起こすという、AV機器にも強いパナソニックらしい戦略的なプロダクトであった。

以降「GH」シリーズは、イメージセンサーの性能向上によって、アマチュアだけではなく映像クリエイターからも評価されるようになる。
こうした評価とニーズの変化により、段階的に業務用途で必要な機能が追加され、アマチュア向けではなくハイアマチュアやプロを対象としたカメラへと舵を切っていったのである。

現行モデルの「DC-GH5」は、2033万画素のイメージセンサーを搭載し、4K(3840×2160ドット)60フレームの滑らかな映像を時間無制限で撮影を可能とした他社の追従を許さないフラグシップモデルである。
動画撮影の設定項目には、業務用のビデオカメラのような細かい設定が追加されており、画素数アップによって静止画と動画、双方で強い究極のミラーレス一眼となった。

高画質で動画を安定して撮影できると高評価を得てきたGHシリーズは、YouTubeをはじめとする動画SNSの配信者の増加にともない、利用者層を一般にまで広げていった。

GHシリーズは、プロ向けに路線を変更した際にはマニアックな動画カメラとなったのが、これが逆に、他社にはないカメラとなったことで、後の高評価につながったと言える。
思い切った戦略がGHシリーズのブランディングを成功に導いた。


しかしパナソニックはここで製品の進化を止めることはなく「DC-GH5」「DC-GH5S」を生み出したのだ。

前述した「DC-GH5」は、前モデルの1605万画素から2033万画素へアップすることで静止画性能も高めた、いわば正常進化したモデルであった

2018年1月に発売した最新モデルの「DC-GH5S」は、実はイメージセンサーの画素数を1028万画素まで落としているモデルなのだ。

なぜ、新製品である「DC-GH5S」は、画素数を落とす方向へシフトしたのだろうか?

「DC-GH5S」は、DC-GH5のように進化を高解像度に振るのではなく、イメージセンサーの1画素を大きくすることで高いISO感度でも高画質であることを目指した、動画性能の向上に特化したモデルだったのである。


薄ぐらい路地裏もISO5000で明るく撮影できた。ノイズで荒れることなく細部までしっかりと描写している

「DC-GH5S」は、この仕様によってDC-GH5と同等の動画撮影性能を実現しただけにとどまらず、ISO51200の高感度でもノイズが少ない高画質をも手にいれたのだ。
また、照明がない暗闇でも明るく撮影することが可能な最高ISO204800も実装されており、画質よりも映っていることが優先するといったシチュエーションにも対応できる懐の広さを持っている。

「DC-GH5S」は
・室内撮影でもノイズが少ない高画質で撮影できる
・自撮りが可能な可動式の背面モニター搭載
この特徴がYouTuberという市場にピッタリとはまり、動画撮影用のカメラとして高い評価を得ている。

YouTubeなどの動画配信は、今ではスマートフォンのインカメラでも可能だ。
しかし、YouTuberは、なぜこうしたハイエンド機器を導入するのだろうか?

それは、視聴者を増やすためだ。
現在のSNSでの動画配信では、多くの配信者に埋もれないよう、コンテンツのアイディアが必要となる。そして経験を積んでいくと、視聴者目線を意識した綺麗な映像配信も意識するようになる。

人気クリエイターと同じ品質やレベルに合わせるためには、同等の撮影機材を選ぶことが近道だ。
さらに、人気YouTuberが使用している機材ともなれば、後続のYouTuberたちも同じ機材を求めるのは当然の流れだ。

とはいえ「DC-GH5S」は、ボディ単体でも20万円を軽く超える。
交換レンズ込みで考えると、誰でもが簡単に買えるカメラではない。
しかしながら、
「いつかはDC-GH5Sを購入し、動画を制作してYouTubeにアップする」
こうしたサクセスストーリーや憧れを生みだすことができたことこそが、このGHシリーズのプロダクト成功事例と言って良いだろう。

「DC-GH5S」を購入したユーザーが喜びの動画を配信することで、それを観たフォロワーがYouTuberを目指し、次のサクセスストーリーや憧れを生み出す良い循環を生み出しているのだ。


今回、実際にDC-GH5Sを試用してみたが、本体上部で主張する動画撮影ボタンがカメラの個性を物語っているように思えた。

最新のAI技術とソフトウェア技術によって、
・顔認識だけではなく瞳認識のオートフォーカスも自動で切り替わる
・横顔を通り越して振り返ってしまった場合でも、そのまま人物を認識し続ける
こうした強力なオートフォーカス機能を実現している。

一般ユーザーの間では、カメラ機能においてはスマートフォンのほうが優秀という認識があるが、あくまでそれはフルオート撮影でのカメラまかせの画作りという点においてである。

自分らしさを表現するためにクリエイターは動画編集ソフトで画作りを行うことが多い。ある人はフィルムのような柔らかいトーンであったり、またある人は元気がある明るいトーンであったりと映像の個性づけが可能なのである。


デジタルカメラの場合は、こうした編集を前提とした素材を撮影するために、スマートフォンにはない前述したような最新の撮影サポート技術が使われている。そうした技術と編集に耐えうる高画質、そしてプロ仕様の長時間撮影にも耐える安定性があることが、スマートフォンではなく、デジタルカメラを利用する理由なのである。


パナソニックのGHシリーズ、そして「DC-GH5S」は、
妥協しない高い性能と安定性を実現したことで、時代の流れに乗って幅広く支持されるという好循環を生んだのである。
執筆  mi2_303