日本代表がボリビアを1−0で下した試合は、森保一監督就任後に限れば、間違いなくワーストゲームのひとつ。いや、いくつかあるうちのひとつではなく、ワーストゲームと言い切ってもいいかもしれない。

 そう感じてしまうほど、ピッチ上では何も起こらず、退屈な時間ばかりが長く続いた。

 森保監督は試合前日の記者会見で公言していたとおり、4日前に行なわれたコロンビア戦から、先発11人を総入れ替えしてボリビア戦に臨んだ。

 新戦力の起用は本来、すでに主軸となっている選手との組み合わせで試してこそ意味がある。

 たとえば、FW大迫勇也(ブレーメン)の代役探し。この2連戦では、コロンビア戦でFW鈴木武蔵(コンサドーレ札幌)が、ボリビア戦でFW鎌田大地(シント・トロイデン)が、1トップとして起用された。

 だが、本当の意味でポスト大迫を探すなら、2列目に並ぶ中島翔哉(アル・ドゥハイル)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)と一緒に起用してみなければ、互いの特長を引き出し合えるかどうかはわからない。幸いにして、鈴木は主軸との”共演時間”を60分以上も得られたが、鎌田のそれは10分あまり。先発メンバーを総入れ替えした結果である。

 しかしながら、主軸中心の編成のなかに新戦力を取り込むことにこだわれば、中島らは常に試合に出続けることになってしまうし、今度は2列目の選手層が厚くならない。

 こちらを立てれば、あちらが立たず。限られた数の試合のなかで、すべての条件を満たす選手起用をすることなど不可能だ。

 それを考えれば、できるだけ多くの選手を、できるだけ長い時間プレーさせることをまずは優先し、GK中村航輔を除き、招集した全選手を2試合のどちらかで先発出場させたのは、決して悪い判断ではなかった。

 ましてや、今はまだ、チームを固める段階でもない。むしろ多くの選手を試し、今後日本代表選手として戦える可能性があるかどうかを探るべき時である。

 実際、この2連戦で代表デビューを果たしたDF安西幸輝(鹿島アントラーズ)、DF畠中槙之輔(横浜F・マリノス)のプレーぶりは、(ともに主力組とのプレー時間はわずかだったが)決して悪くなかった。

 試合序盤こそ、引いて守備を固めるボリビア相手に手を焼いたが、時間の経過とともにMF乾貴士(アラベス)と連係し、左サイドから攻撃を組み立てるシーンを増やした。手詰まり感を漂わせたまま、何の工夫も見られなかった、右サイドのDF西大伍(ヴィッセル神戸)、三浦弦太(ガンバ大阪)、MF宇佐美貴史(デュッセルドルフ)に比べると、確実に試合のなかで変化していった。

 森保監督がよく口にする、「臨機応変」や「対応力」といった点に照らせば、左右どちらのサイドが今後への可能性を示したかは明らかだろう。

 森保監督が、1トップの鎌田について「彼のよさを出してくれた」と評価するに際し、「GKと1対1を作り出した(裏への)抜け出し」を好例に挙げたが、後半13分のその場面にしても、畠中が乾の動きを見逃さずに通した縦パスが起点になっている。

 パスを受けた乾は、タッチライン際をオーバーラップしてきた安西の動きをおとりに使い、ボールを内に持ち出して鎌田にパス。これが決定機につながったものだ。

 とはいえ、全般的に言えば、誰の目にも明らかなほどに傑出したプレーを見せる選手は、残念ながら、新戦力の中からは現れなかった。それが、ボリビア戦を退屈な試合にした最大の要因と言ってもいいだろう。

 試合終盤、2列目の3人に加え、ボランチのMF柴崎岳(ヘタフェ)が交代出場したことで、一気にピッチ上のプレー強度が上がり、そのなかから中島の決勝ゴールが生まれたことも、新戦力に対する物足りない印象を一層強める結果となった。

 森保監督は戦力の底上げについて、「経験の浅い選手の評価としては、ある程度は手応えをつかめたということが総じて言える」と、一定の評価は与えつつも、「試合を決定づけるとか、流れを変えていくとかは、まだまだ力をつけてほしいと、選手にも伝えた」とも話している。客観的に試合内容を振り返れば、後者のほうがより本心に近いと考えるのが妥当だろう。



後半、中島、南野、堂安が入って攻撃の勢いが増した

 しかし、代表経験が豊富とは言えない選手に、たった1試合で目に見える結果を出せ、というのは酷な要求。安西や畠中のように試合のなかで成長を見せた選手がいたことは、それなりの収穫だったはずだ。

 何しろ、森保監督が日本代表を率い始めてから、まだ半年ほどしか経っていないのである。

 すでに主力として定着した感のある中島、南野、堂安にしても、3人がそろって先発出場したのは、わずかに4試合しかない。彼らに次ぐ新戦力に出てきてほしいのは確かだが、彼ら自体がまだまだ連係を深めていかなければならない段階にあるのも、また事実なのだ。

 そもそも、昨年のワールドカップが終わって新旧交代を進めるにあたり、すぐに3人もの主軸となりうる選手が現れたこと自体、驚くべきことだと言ってもいい。

 さらにはDF冨安健洋(シント・トロイデン)も含め、ワールドカップ前まではA代表に縁がなかった、あるいは、定着しているとは言えなかった選手が、短期間ではっきりと頭角を現してきているのである。

 ところが、そのインパクトがあまりに強すぎた結果、彼らへの期待がどんどん膨らむ一方で、半年ほど前にはあった新鮮味はすっかり薄れてしまった。それどころか、少しでもパフォーマンスが低下すれば、停滞感すら漂うようになった。

 加えて、アジアカップ決勝でカタールに完敗を喫したことによって、さらに停滞感は強まり、一時の盛り上がりはどこへやら、日本代表への逆風は強さを増しているように見える。

 もちろん、中島や冨安らが出てきたのだから、それで十分などと言うつもりはない。新戦力探しは常に行なわれるべきだし、新たに起用された選手は、その抜擢に応えるプレーをピッチ上で見せてもらいたい。その点で言えば、ボリビア戦に先発出場した選手たちは、まがりなりにも日本代表に選ばれる選手なのである。急造チームという言い訳はあるにしても、その多くに少なからず失望感を覚えた。

 だが、その一方で、代表チームのレギュラー候補となりうる選手は、それがヨーロッパや南米の強国であろうとも、そうそう次々に出てくるものではないことも理解しておく必要がある。

 国際Aマッチ出場数がまだ8試合にすぎない中島は、もはや日本代表の期待の若手というレベルをはるかに超え、世界的プレーヤーの域に足を踏み入れようとしている。そして、同じく国際Aマッチ出場数がようやくふた桁に達したばかりの冨安にしても、守備ばかりでなく、攻撃の起点となるビルドアップにおいて、従来の日本代表センターバックとは別次元の選手になろうとしている。

 およそ半年前、新旧交代を重要なテーマとして、新生・日本代表が船出したことを思えば、今はそれをもっと喜んでもいいのではないだろうか。