1億円の損害賠償も発生している「自転車ながらスマホ」の恐怖を高校生がVR体験授業で知る! KDDIの自転車安全・安心プロジェクトとは

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●死亡事故や巨額の賠償請求による破産もある「自転車ながらスマホ」の恐ろしさ
KDDIは19日、「自転車安全・安心プロジェクト」の第3弾として、高校生を対象とした「自転車ながらスマホ」の危険性を啓発するVR授業を開催しました。

スマートフォン(スマホ)を片手に持ち、その画面を見ながら自転車を運転する「自転車ながらスマホ」は大きな問題となっています。
歩きスマホよりも各段に速いスピードで走る「自転車ながらスマホ」は、危険性が飛躍的に高くなります。
・死亡事故や重篤な後遺症の残る人身事故が多く発生
・事故に伴う巨額の損害賠償が発生する
・賠償金が支払えずに起こる加害者の自己破産も発生
・被害者は賠償金が貰えず治療ができないため遺族の生活が困窮する
「自転車ながらスマホ」での事故では、こういった深刻な問題が連鎖的に起きています。

KDDIの「au損保」で扱った事案だけでも、
・賠償額約1000万円の死亡事故(2017年)
・賠償額約1億円の死亡事故(2018年)
などが、次々に発生しています。
このほか、500万円を超える賠償請求は毎月発生しており、「自転車ながらスマホ」の防止とその啓発が急務となっているのです。


損害賠償を伴う自転車事故の件数は年々増加しており、事故内容も重症化しつつある



VR体体験による はじめての「自転車ながらスマホ」授業
授業が行われたのは、神奈川県にある鶴見大学附属高等学校の1年生のクラスです。
高校生は自転車の利用頻度が高いことから、人身事故の発生率も非常に高いのが特徴です。

この学校では、校内でのスマートフォンの利用は禁止しています。
しかし、
・生徒の登下校時の安全確保
・保護者や学校との連絡手段
この2点からスマートフォンの所持は認めており、この日授業を受けた1年生のクラスでは、ほぼ全員がスマートフォンを所有していました。


スマートフォンは高校生にとっても必需品


授業では、はじめに「自転車ながらスマホ」の危険性を教える動画が上映され、その後VRキットを用いた「自転車ながらスマホ」のバーチャル体験が行われました。

こういったVRキットを用いた体験授業は、先生も生徒たちもはじめてとのことでした。

使用されたVR体験キットでは、自転車運転中に歩行者が飛び出してくるというVR動画が流れます。そして
・通常の運転
・スマートフォンを見ながら運転
この2回を体験してもらい、歩行者が飛び出してからブレーキをかけるまでの時間を計測します。

結果は、ほとんどの高校生が通常の運転よりもスマートフォンを見ながら運転した時の方が、2〜4秒もブレーキをかけるまでの時間が遅れました。
このことについて生徒からは、
・思ったよりもブレーキをかけるのが遅くなり焦った
・運転中、前を全然見ていないことに気が付き怖くなった
こういった感想が聞かれました。


自転車ながらスマホの危険性について真剣に考える生徒たち


また、その後に行われた生徒同士のワークショップでは、
・「自転車ながらスマホ」をしている人がいたら周囲の人が注意する
・スマートフォンを買う時、こういったVR体験の講習を行ったほうが良い
こうした意見が出たほか、
・スマートフォンで人を検知して危険を知らせる機能がほしい
このようなスマートフォンやIoT技術を用いた先進的な要望なども聞かれました。


VR体験は、頭で考えるよりも実感として危険を感じ取れたようだ



●VR体験授業の全国展開へ意欲を見せるKDDI
KDDIの自転車安全・安心プロジェクトは2017年より継続して行われており、これまでにも、
・「自転車ナビタイム」アプリによる啓発キャンペーン
・「自転車ながらスマホ」は危険!啓発動画の制作
・「自転車ながらスマホ」の危険性を検証する実証実験
などが行われてきました。

自転車事故の増加に伴い、現在では自転車保険への加入を義務化している自治体も増えており、被害者のみならず加害者の賠償金負担への救済が進み始めています。
しかしこれらだけでは
「事故を起こさない」
という根本的な解決にはなりません。

今回授業を担当した情報科の教諭は、
「スマートフォン関連の授業ではSNS利用時のトラブルなどは教えるが、『自転車ながらスマホ』の啓発活動はなかなかできない。
授業だけでは他人事になってしまうが、VR体験なら衝突事故などもリアルに実感できる点が良い」
と、安全に危険を体感できるVR授業の有用性を高く評価していました。


生徒の安全を守る先生の立場でも、VR体験授業は大いに得るものがあったようだ



KDDIは、今後もVR体験キットを用いた「自転車ながらスマホ」の啓発授業は、高校生を中心に全国で行っていきたいとしています。

便利で楽しいスマートフォンも、使い方1つで事故や損害賠償など、人生を狂わす重大な事態を引き起こします。

「自動車ながらスマホ」の危険性は、多くの人々が知るところです。
しかし、自転車でも重大事故が日々頻繁に起きていることは、あまり報道されていません。

高校生が
「少しだけなら大丈夫だろう」
「自分だけは大丈夫だろう」
「学校の行き帰りだけなら大丈夫だろう」
こうした安易な思いから事故を起こし、本人と家族の人生と生活を台無しにしてしまうことのないように、こういったVR体験授業や啓発活動が全国に広がっていくことを期待します。


執筆 秋吉 健