3月22日、日産スタジアム。南米の雄、コロンビアは日本を0−1で下している。

「日本はパーソナリティを感じさせるチームだった。ボールを持ったときの判断、選択が明快だった」

 コロンビアのエースFWで、決勝点を記録したラダメル・ファルカオは、日本の印象をそう語っている。

「日本はいいプレーだった。とくに前半はね」

 同じくコロンビアを代表するファンタジスタ、ハメス・ロドリゲスも敵にそんな評価を与えている。

 賞賛、それに近いだろうか。言葉の端々から、日本サッカーへの敬意が伝わる。しかし、そこには勝者の余裕もあるかもしれない。

 2014年ブラジルW杯、控え組中心のコロンビアは、日本を4−1と粉々に打ち砕いている。しかし、2018年ロシアW杯では、早々に退場者を出したこともあって、1−2と散々の形で敗れ、大会から去った。因縁は深い。

「カルロス・ケイロス監督にとっては船出。1月のアジアカップではイランを率い、準決勝で日本に敗れている。負けられない」

 国内メディアもそう煽っていた。では、コロンビアは日本の実力をどう見たのか?


コロンビアのメディアから高く評価されていた中島翔哉

「日本は4−4−2のシステムで、非常に整備された戦いで挑んできました。中島翔哉の仕掛けは、かなり脅威でしたね。しかしコロンビアは後半になってプレー強度を高め、押し切りました」

 記者会見が始まる前、コロンビアのテレビ局のリポーターがせわしげに状況を伝えていた。選手個人で言えば、中島の評価が高いようだった。

「日本のベストプレーヤーは中島だった。あと一歩で同点にできるプレーもあって。我々のミスも見逃してない」

 国内紙の「el Colombiano」も、そのプレーを賞賛している。実はハメスも、交代する時に一歩近寄って、中島と握手を交わしている。それは気になった選手の証だろうか。ハメスにスター気取りは一切なく、生真面目にプレスバックし、たびたび中島と対峙していた。

 真剣勝負だった。

 ケイロス監督は、4つのスペイン語で日本人選手の特長を形容している。

「RAPIDO」(速い)、「FUERTE」(強い)、「AGIL」(素早い)、「TECNICA」(技術)。

 ケイロスはかつて名古屋グランパスを率い、またイラン代表を率いてアジアを長く戦い、日本のクオリティを知る。速さ、強さは守り(プレッシング)の強度。俊敏さやうまさは攻撃の特長か。

 そしてもうひとつ強調したのが、コンビネーションの高さだ。

「VERTICALIDAD DE PARED」(壁パスの垂直性)

 速さの中で高い技術を生かせる点を、警戒していた。その点では、ゲーム戦略も明確だった。

「日本はディフェンスの裏を狙って、かなりのスピードを持って連係して攻めてくる。中盤の技術レベルが高く、プレー判断もいい。そこで我々は、まず彼らにフラストレーションを与え、自由にさせない必要があった。しっかりプレスし、カバーする。その意味で、いいトレーニングにもなったと言える。できたところと、できないところがあって、もっと自由にさせてもよかったと思うところもある」

 ケイロスは淡々と振り返って、こうも続けている。

「日本は前半、とくによかった。(ロシアW杯でもコロンビアは)10人でプレーし、苦しんでいるわけで。今日はプレー強度を高めることで、裏のスペースをやられず、落ち着いて攻撃へシフトできた」

 ロシアW杯では開始早々、香川真司に裏へのパスを通され、大迫勇也に持ち込まれ、その混乱からPKを献上し、なおかつハンドによる退場で1人少なくなってしまった。今回、同じミスは犯していない。ミドルシュートは数多く打たれたものの、完全に崩される不用意な対応はひとつもなかった。

 そして後半10分過ぎ、ケイロスはセリエAのアタランタで活躍する新鋭FWドゥバン・サパタを投入している。代わりに、中央にいたハメスを右サイドに配置。サイドで自由を得たハメスが効果的なボールを入れるようになって、攻撃は活性化。幅を取って、日本のボランチを前後左右に釣り出し、スペースを作り出した。猛烈なプレスでパスコースを塞ぎ、クリアを拾って、再び仕掛ける。その波状攻撃だった。

 64分に決まったファルカオのPKは、自明の理だったと言えるだろう。

「まだまだ改善すべきところはあります。終盤、ディフェンスは日本の攻撃に脆さを見せ、危険なシーンもありました。新生コロンビアは初陣を飾ることができましたが、課題も見えたと言えるでしょう!」

 リポーターは、早口で伝えていた。0−1の敵地戦勝利で、”復讐”は遂げた。彼らの目は、すでに次の韓国戦に向いているようだった。