ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 春のGIシリーズがいよいよスタート。その幕開けを告げるGI高松宮記念(中京・芝1200m)が3月24日に行なわれます。

 例年、ほぼフルゲートで行なわれるこのレース。今年もフルゲート18頭の出走馬が顔をそろえました。

 昨年の「スプリント王」ファインニードル、ここ数年のスプリント界を引っ張ってきたレッドファルクスが引退した今、その出走メンバーを見て思うのは、どうやらスプリント戦線は、新しい時代に突入していきそうだ、ということです。

 古豪レッツゴードンキ(牝7歳)、堅実なナックビーナス(牝6歳)、一昨年のこのレースを制したセイウンコウセイ(牡6歳)、藤田菜七子騎手の騎乗で注目を集めるGI馬スノードラゴン(牡11歳)らはいまだ健在ですが、今年は勢いのある明け4歳馬たちが出走。それらが、今後のスプリント界を引っ張っていくと思うからです。

 本来、まだ3月の段階で古馬相手にGIを戦うには、4歳馬にとっては身体的にも、斤量的にも厳しいものがあります。馬によって違いはありますが、多くの4歳馬は夏を越して本格化するからです。

 実際、このレースの過去の好走馬を見ても、4歳馬は極めて少ないです。2000年からこの時期に施行されるようになりましたが、そのうち4歳馬が勝ったのは3回のみ(2002年のショウナンカンプ、2014年のコパノリチャード、2017年のセイウンコウセイ)。のちにこのレースの覇者となるローレルゲレイロやロードカナロアも、4歳時に挑戦した際には敗れています。

 それでも、今年の明け4歳勢には強く惹かれます。

 まず注目は、前哨戦で勝利を飾ったダノンスマッシュ(牡4歳)と、モズスーパーフレア(牝4歳)の2頭です。

 ダノンスマッシュはロードカナロアの仔で、同馬を管理するのもロードカナロアと同じ安田隆行厩舎。GIII京阪杯(2018年11月25日/京都・芝1200m)、GIIIシルクロードS(1月27日/京都・芝1200m)と連勝してここに挑んでくるのも、4歳時のロードカナロアと同じですね。

 これは、陣営が父ロードカナロアを意識し、それだけの期待を寄せている証拠だと思います。しかも、どちらのレースとも、これまたロードカナロアと同じような勝ち方をしていて、シルクロードSに関しては勝ち時計まで一緒でしたね。

 ロードカナロアは、4歳時に挑んだ高松宮記念では3着でした。それ以上の成績を挙げられるモノがダノンスマッシュにあるのか? と言われれば、まだ疑問もあります。

 ロードカナロアは500kgを超える大型馬でしたが、それを感じさせない、まさにディープインパクトのような、本当に軽くて柔らかい、飛ぶような走りをしていましたからね。片や、ダノンスマッシュは、どちらかと言うと前のほうが勝っていて、重戦車のような走りを見せます。

 その違いが、今回どう出るのか。

 ただひとつ言えるのは、ロードカナロアが敗れたときは、内で苦しい競馬を強いられたことも事実。まして、勝ったのは絶頂期にあるカレンチャンでしたからね。今年のメンバーにはそこまでの古馬は見当たりませんし、それほどのモノを持ち合わせていなくても、十分に勝負になると思います。

 そして、重戦車のような走りでいて、相当な瞬発力を繰り出せますから、もしかすると、ロードカナロアを超える可能性もあるかもしれません。

 一方、前走でGIIIオーシャンS(3月2日/中山・芝1200m)を勝ったモズスーパーフレアも、かなりの素材です。前々走のカーバンクルS(1月5日/中山・芝1200m)を含め、とにかくこの2戦のパフォーマンスは驚くばかりです。

 ともに、スタートからの5ハロン(1000m)通過が55秒1というハイラップを自ら作って、そのまま押し切ってしまうという圧巻のレースぶり。平坦コースならまだわかりますが、直線に急坂のある中山コースですからね、驚異的です。

 とくに、前走はテンの3ハロン(スタートから600m)が32秒3。このペースでは、付いていくほうも大変です。まさしく桁外れのスピードと、ある程度のスピードまで到達するダッシュ力、そしてそのスピードを持続できる身体能力と心肺機能を、モズスーパーフレアは持っているのでしょう。

 同馬の勝ちパターンとしては、下手にタメて逃げるより、スピードに任せて押し切ってしまうほうがいいと思います。今回鞍上を務める武豊騎手も、同馬に過去2回乗って、そんな競馬で勝利していますし、それはここでも変わらないでしょう。

 この2頭、ダノンスマッシュとモズスーパーフレアは人気にもなりそうですが、それだけ注目すべき存在です。

 明け4歳馬ではもう1頭、気になる馬がいます。前走のGIII阪急杯(2月24日/阪神・芝1400m)で7着と惨敗を喫したミスターメロディ(牡4歳)です。今回は人気を落としそうですが、実は侮れません。

 同馬はデビューから東京と中京を中心に使われてきましたが、おそらく陣営としては左回りのほうがいいと踏んでいたのではないでしょうか。そう考えると、前走の敗戦も納得がいきます。

 左回りの前哨戦を使いたくても、走らせたい時期にそういう番組がなければ仕方がありません。それでも今回は、得意とする左回りの舞台。距離短縮も歓迎だと思いますし、巻き返しが見込めそうです。

 ついでながら、前述2頭と同じレースを走った際には、どちらにも先着を許していません。3歳春の段階ですから、比較材料にはなりませんが、負けていないという事実は確かです。

 ですから、当初はこのミスターメロディを今回の「ヒモ穴馬」にしようと考えていたのですが、ここに来て、どうしても気になる馬が出てきてしまいました。

 昨夏のGIIIアイビスサマーダッシュ(7月29日/新潟・芝1000m)を快勝したダイメイプリンセス(牝6歳)です。


ミルコ・デムーロ騎手の連続騎乗で気になるダイメイプリンセス

 以前にも触れたことがありますが、『千直(直線で行なわれる新潟・芝1000m)』というレースは、ときに馬を大きく成長させます。このダイメイプリンセスは、まさにそんな1頭です。

 準オープンで頭打ちかと思われましたが、昨春『千直』に挑戦して連勝。オープン入りを果たすと、その勢いで重賞を制覇し、秋のGIスプリンターズS(9月30日/中山・芝1200m)にも出走しました。そして、余力を持って4着と好走しました。

 その後は休養に入って、今年はさらなる飛躍が期待されました。しかし、休み明け2戦は6着、10着と凡走。すでに6歳牝馬でもあり、「ピークを過ぎてしまった」という見方があるのは当然でしょう。

 とはいえ、気になるのは鞍上です。前走のオーシャンSから続けて、ミルコ・デムーロ騎手が手綱をとる、ということです。

 前走時にも感じたことなんですが、彼がこの馬を選択していることに、違和感があるんですよね。前走も、そしてGIの今回も、彼が選んで乗れる馬は他にもいると思うんです。また、そもそも騎乗を予定していた馬が回避した、というニュースも聞いていません。

 そうした状況にあって、彼が前走で同馬を選び、しかもGI戦まで続けて騎乗するということは、この馬にそれだけの可能性を感じているのではないでしょうか。 本当は、これまでの主戦だった秋山真一郎騎手で挑んでほしい、という気持ちがあります。それでも、予想という意味では、このトピックは面白い要素となりました。ダイメイプリンセスが馬券圏内(3着以内)に飛び込んできても不思議ではありません。