ハイビームが基本ではあるのだが……

 トナラーの記事には大きな反響をいただいたのだが、そこにハイビームのままのクルマも増えたというコメントがいくつかあった。確かに増えているのだが、少し前にネットや雑誌などで、じつは「これが本当はこうなんです的な企画」でよく取りあげられた「ロービムの正式名称は『すれ違い灯』で、ハイビームが走行時の基本」というのを見て、ハイビームにしなくちゃという人が増えたのかもしれない。それでロービームにし忘れて他車に迷惑をかけているというわけだ。

 警察もハイビームを推奨していて、事故軽減の効果ありという報道も出て拍車をかけた気はする。実際、知り合いで眩しいと言ったら、「ハイビームで走るのが正しい」と言い返された者もいるほど。法律的にはハイビームが基本で、ロービームがすれ違い灯と呼ばれているので問題はないのだが、なんでもかんでもハイビームで走ればいいというわけではないのだ。今回は法律に沿って検証してみたいと思う。

そもそも他の交通主体に危害を及ぼすような運転はNG

 まずハイビームが基本となる根拠は、保安基準の32条で「クルマには走行用前照灯と減光するすれ違い用前照灯がある」(筆者要約・以下同)というもの。これでハイビームが走行用で、ロービームがすれ違うときのためにあるということがわかる。実際の使い方としても、道路交通法52条では「夜間に前走車や対向車がいる場合は、ヘッドライトを消すか減光させないとダメ」とある。

 ここまでは今までもよく聞く内容なのだが、暗い路地を歩いていると、わざわざハイビームに切り替えてやってくるクルマがある。「歩行者は対向車や前走車でもないのでローにする必要はなし」と思っているのだろう。上記のふたつの法律だけを紹介する記事は多く、それだけを頭に入れているのかもしれない。

 法律的にはさらに関係するものがあって、ここが重要。道路交通法70条では「運転者には他人に危害を及ばされないような運転が義務付けられている」。つまり、ハイビームを歩行者に照射するのは目がくらむなどの危害を与えるわけで、やはり歩行者に対してもロービームですれ違うなり、追い越すなりするのが正しいということになる。

 結局、前走車も対向車もいない郊外の道や山道、高速道路での使用が前提。住宅街でも人通りが途絶えた深夜ぐらいしかハイビームにすることはないと言っていいだろう。そもそも街路灯があればハイビームにしなくても視界は確保できるはずだ。