<まばらな目撃情報だけで長年確認できずにいた未知の4種類目のシャチを、研究者たちが遂に発見したかもしれない。DNA分析の結果に期待が高まる>

「タイプD」と呼ばれる新種のシャチが、アメリカ海洋大気局(NOAA)の研究者たちによって、南米チリ沖で発見された可能性がある。タイプDはこれまで、漁師の証言や、観光客が撮影した写真を通じてしか、その存在が知られていなかった。また、60年以上前にニュージーランドの海岸で座礁したシャチも、タイプDだったのではないかとされていた。

この新種は、ほかの種類のシャチとは異なり、頭が丸く背びれが尖っている。また、目の上のアイパッチと呼ばれる白い模様が小さめだ。

専門家たちのあいだでは何十年も前から、シャチにはタイプA、B、Cがいることがわかっていたが、いくつかの目撃情報などから、もう1種類存在するのではないかと考えられてきた。

1955年、17頭のシャチがニュージーランドの海岸で座礁した。見た目は普通のシャチと違っていたが、当時の研究者たちは、単なる遺伝子変異のせいであろうと判断した。

2005年になって、NOAAの南西水産科学センターでシャチを研究するボブ・ピットマンは、見た目が変わったシャチの写真を見せられた。南インド洋で働く漁師が撮影したその写真に写っていたのは、頭が丸く、白くて小さなアイパッチがあるシャチで、1955年にニュージーランドで座礁した生物とそっくりだった。

「未発見」の動物で最大級

その後、南極圏に観光客が大挙して押し寄せるようになると、同様の「変わったシャチ」の写真がどんどん見つかるようになった。ピットマンは2010年、タイプDのシャチが存在を学術論文で発表した。しかし物的証拠に欠けていたため、ピットマンは同僚研究者たちとともに、タイプDを発見すべく探査に乗り出した。

ピットマンたちは、目撃された地点と漁師たちの証言に基づき、南米最南端であるチリのホーン岬の沖へと向かった。そして、そこで何週間もひたすら待った末に、30頭ほどのシャチの群れが観測船に近づいてきたのを目撃した。

シャチの鳴き声を研究するレベッカ・ウェラードは、群れが発した鳴き声を録音した。また、水中カメラでシャチを撮影し、体形や模様を詳細に観察した。映像には、シャチたちが観測船の周りを泳ぐ様子が映されている。

チリのホーン岬の沖で発見された「新種のシャチ」の群れ

研究チームは最後に、クロスボウを発射して皮膚のサンプルを採取した。このシャチが新種かどうかを明らかにするため、実験室でDNAを分析するためだ。

ピットマンは声明で、「遺伝子解析の結果がわかるのが楽しみだ。タイプDのシャチは、まだ詳しく知られていない地球上の動物のなかで最大級かもしれない。海に暮らす生物について、知られていないことがまだたくさんあるのは明らかだ」と述べた。

(翻訳:ガリレオ)

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ハナ・オズボーン