速かろうが遅かろうが追越車線を走り続けるのは違反

 一般道だろうと高速道路だろうと、片側が複数車線であれば右側(中央寄り)の車線は“基本的”には追越車線であって、通常は走行車線と呼ばれる左側の車線を走るのがルールとなっている。

 基本的と書いたのは例外も数多くあって、一般道ではトラックなどは中央寄りを走るべき道路もあるし、首都高速などは左右に出口があるために走行車線と追越車線の区別をしないとなっているからだ。そうした例外は置いておいて、ここでは片側三車線の高速道路をベースに考えてみよう。

 片側三車線の場合、左側二車線が走行車線で、右端が追越車線となる。つまり、右側車線については常時走行しているクルマは存在しないというのが建前だ。三車線のうち中央の車線を走っていて、前方に遅いクルマがいたときに、追越車線に車線変更して、先行していたクルマを追い越し、その後は中央の車線に戻るというのがルールに則った走らせ方である。追越車線を走り続けるクルマはルール違反だ。実際、道路交通法における「通行帯違反」に該当する。

 運転免許のあれこれを学んだ自動車教習所でも3〜5年ごとの免許更新でも、追い越しが終わったら左車線へ戻ることの重要さを言われているだろうが、あらためて基本的なルールであることを確認したい。

 ただ実際には、理想的にはいっていないように思える。そのことに腹を立てて、ついついアオリ運転をしてしまうドライバーもいるようだ。もちろん、法治国家においてはルール違反に対して私刑的に罰を与えることはNGであり、そこは警察の領域である。すなわち、アオリ運転もルール違反であり、腹を立てたからといって行動に出ることは許されない。

スピードメーターの表示はクルマによって微妙に異なる

 また、実際には走行車線を制限速度よりは遅いクルマが連なっているような状況で、追越車線を何km/hで走って抜いていくかがトラブルの元となっているケースもあるようだ。たとえば、制限速度100km/hの高速道路において、「走行車線が90km/hで流れているときに、追越車線を100km/hで走って追い越しをする」というのが、現在の法律下における正しい追い越しである。そこに速度違反で追いついたクルマが100km/hで走っているクルマを「制限速度で走っているのはけしからん!」とアオリ運転をするのは悪質な運転と言わざるを得ない。

 とはいえ、メーター表示というのはクルマによって微妙に異なるのでお互いに100km/hで走っているつもりなのに速度差が生まれてしまうことはあるだろう。そうした要因があることを意識しておいて、追越車線で後方のクルマに追い付かれたときには左側車線に移動して道を譲るというのはマナーとして覚えておきたい。

 しかしながら、走行車線のクルマにブレーキを踏ませてまで車線変更するというのは安全運転の視点からいえばNGであって、追い付かれたからといってすぐに車線変更をするのではなく、走行車線にスペースがあるところまで行ってから道を譲るべきだ。逆に、追い付いた側としてもすぐに道を譲らないからといって腹を立てるのではなく、先行しているクルマが走行車線に安全に車線移動できる場所までは待つことが必要だ。

 車線変更にしろ、先行車に追い付いた状況にしろ、いずれにしても高速道路上で誰かがブレーキを踏むのはスムースな流れを阻害する。ブレーキランプの点灯というのは、それを見たドライバーに減速の意識を生み出し、伝播することで最終的に渋滞につながってしまう。

「情けは人の為ならず」ということわざもあるが、クルマの運転においても同様で、譲り合いの精神が、最終的にはスムースな交通状況を生み出し、誰もが目的地まで渋滞なく到着できる道路状況を実現できるのだ。