(図表1)現在、社内失業状態の社員はいますか?(業種別)

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さまざまな業界から深刻な人手不足による悲鳴があがっている一方で、大手企業などで「社内失業者」を抱えていることが、人材サービスのエン・ジャパンが行った調査でわかった。

従業員数が多いほど、「社内失業者」比率が高く、業種別ではメーカーに多いという。

大手企業、メーカーで多い

「社内失業者」とは、正社員として企業に雇用されていながら、雇用契約に見合った仕事を任されていない従業員をいう。

エン・ジャパンの調査によると、「社内失業」状態の社員の存在について、「いる」と答えたのは6%。「いる可能性がある」と回答したのは17%で、社内失業者やその予備軍がいる企業は合わせて23%だった。

従業員数が多いほど、社内失業者を抱える率が高く、「いる」「いる可能性がある」の回答を寄せたのは、1000人以上の企業で41%、300〜999人で37%、100〜299人では24%だった。

従業員が多い企業では、他をカバーできる人材も多いと考えられ、仕事が回ってこない社員が目立つことが考えられる。

現在、社内失業状態の社員はいますか?(業種別)

業種別でみると、「いる」「いる可能性がある」を合わせた回答が多かったのは、メーカーの28%。流通・小売関連が25%、サービス関連は24%、広告・出版・マスコミ関連23%、IT・情報処理・インターネット関連が23%だった=図1参照。

また、「いる」「いる可能性がある」と回答した企業に、該当社員の職種別(複数回答)を聞いたところ、経営企画や広報、人事、事務などを担当する「企画・事務職」が圧倒的に目立った。

これらの管理部門では各企業ともシステム導入やアウトソーシングを進めていることが影響しているとみられる。以下は、営業、MR、人材コーディネーターなどの「営業職」(31%)、IT・ウェブ・ゲーム・通信などの「技術系」(14%)が続いた=図2参照。

加速するか? 人材や雇用の流動化

社内失業者が生まれた要因(複数回答)については、「該当社員の能力不足」が最も多く70%。次いで「該当社員の異動・受け入れ先がない」が51%だった。「職場の人間関係が悪い」が26%、「職場での教育が不十分」の22%と続く。

エン・ジャパンのサイト「人事のミカタ」では、社内失業者が2025年には「500万人規模にまで増加する」と予測。ビジネスの急激な変化で、求められるスキルも合わせて変化するが、これに追いつけず社内で担当できる業務がなくなり失業状態になる従業員が増えると考えられる。

また優れたスキルはあっても、それが社内でしか通用しないと、社外で通用しないので、失業状態に甘んじなければならなくなると考えられる。そういった懸念から、幅広いスキルの修得へのシフトが図られ、終身雇用に背を向ける動きが強まる可能性がある。

少子高齢化の影響などで変わる労働市場では、働き方改革の一方で社内失業の加速などで、人材や雇用の流動化がさらに増すと考えられ、転職の動きがます活発化するとみられている。

なお調査は、エン・ジャパンが運営する人事担当者向けサイト「人事のミカタ」を利用している801社を対象に、社内失業の実態を聞いた。2018年12月26日〜19年1月29日に、インターネットで実施。企業の経営者や人事担当者らが答えた。