2018年の平昌冬季五輪から1年がたった江陵オリンピックパークを歩く男性(2019年1月24日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP

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【AFP=時事】2018年2月の平昌冬季五輪から1年。わずか12か月前に世界最高のスキーヤーやスケーターが金メダルを競い合った会場は、すでに閑散とし、会場の将来や維持費に関する議論が巻き起こっている。

 韓国は平昌五輪に向けて、六つの競技会場と開閉会式用のスタジアムを新設。加えて六つの既存施設を改修するのに合計8億ドル(約885億円)を投じた。

 ところが今、主要会場の江陵オリンピック公園 (Gangneung Olympic Park)は年配の人が時折散歩するのみで、照明の落ちた氷のないスピードスケート会場には空虚な雰囲気が漂っている。地元の尹誠彬(Sung-bin Yun、ユン・ソンビン)がスケルトンでアジア勢初の金メダルを獲得した平昌のスライディングセンターは、施設への道が封鎖されて入ることもできない。そしてアルペンスキーの滑降コースは、リゾート開発の方針と自然を復元する約束との間で板挟みとなり、抗議の対象となっている。

 直接的な費用だけでなく、韓国はソウルから江陵(Gangneung)までの200キロメートルの高速鉄道の開通など、五輪に向けたインフラ整備に100億ドル(約1兆1000億円)以上をつぎ込んだ。韓国でもとりわけ貧しい江陵では、五輪をきっかけに一帯の経済が活性化することが期待されたが、国内の冬季スポーツの人気は限定的で、ボブスレーやリュージュに至っては五輪前はほとんど知られていなかったこともあって、観光ブーム到来への期待は今のところ見込み外れに終わっている。

 会場が大会後に無用の長物と化す問題は、冬季五輪の積年の課題で、国際オリンピック委員会(IOC)も、近年は負担を覚悟で開催に名乗りを上げる国がなかなか見つからずに苦労している。中国の北京に決まった2022年大会は、最終的に立候補したのは2都市のみ。2026年大会も、見送りが相次いだ結果、立候補を表明しているのはイタリア・ミラノ(Milan)とスウェーデン・ストックホルムだけとなっている。

■板挟みの旌善

 アルペンスキーの滑降種目を開催するには、800メートルのまっすぐな斜面を用意することが、国際スキー連盟(FIS)の規則で定められている。冬季五輪の招致に成功した時点で、韓国にその条件を満たす山はほとんどなく、可里旺山(Mount Gariwang)は数少ない候補の一つだった。

 ところが一つ問題があった。一帯の森林が保護区域に指定されていたのだ。

 大会主催者は、山林庁から一時的な開発の許可を取り付け、怒った保護団体には大会後に森林を復元すると約束した。ところが付近の旌善(Jeongseon)郡の住民は、約束は無視して1億7000万ドル(約188億円)を投じた五輪施設を観光資源として維持しろと抗議。会場の未来をめぐって対立が起こっている。江原道(Kangwon Province)の知事によれば、再森林化には、そもそも整備と同じだけの費用がかかるという。

 かつては炭鉱の町だった旌善は、2004年に最後の鉱山が閉鎖された。抗議に定期的に参加しているという地元の50代の男性は、「五輪のレガシーによって観光客が集まり、経済が盛り上がるのに期待していたが、実際はどん詰まりだ」と話し、「ほとんど誰も来ない」ことに「裏切られた」気分だと続けた。

 2018年に開業した宿泊施設は、1月の料金を8割以上も値引きした。地域最大のリゾート地で、回転種目などが行われた竜平(Yongpyong)も、12月と1月の観光客は五輪開催前より少なかったという。

■他会場も将来は不透明

 1億ドル(約110億円)を投じた平昌のオリンピックスライディングセンター(Olympic Sliding Centre)は、莫大(ばくだい)な維持費を払いたくない江原道によって昨年3月から閉鎖されている。国内で唯一のボブスレーとスケルトンの施設が使えなくなったことで、両種目の代表チームはカナダでの練習を余儀なくされている。

 スピードスケートが行われた江陵オーバル(Gangneung Oval)も、利用計画が定まらずに放置されている。開閉会式が行われた平昌オリンピックスタジアム(Pyeongchang Olympic Stadium)は予定通りに解体され、メインスタンド跡に記念館がオープンする見込みだ。

 他の会場も利用状況は寂しい。江陵ホッケーセンター(Gangneung Hockey Centre)は昨年12月には3日間の全国選手権が開催されたが、その前は8か月にわたって利用機会がなかった。2月には二つの国際大会が行われたが、韓国にはプロのアイスホッケーリーグがないため、9500万ドル(約105億円)の建設費を要した会場にどれだけ観客が集まるかは未知数だった。フィギュアスケートとショートトラックの舞台となった江陵アイスアリーナ(Gangneung Ice Arena)はコンサート会場に転用されているが、使われたのはたった2回にとどまっている。

 文化体育観光省の関係者によれば、スライディングセンターとスピードスケート会場、ホッケー会場については、政府の韓国開発研究院(KDI)が調査を行っており、6月に維持費用と負担元などに関する報告が上がる予定だという。

 状況の停滞に、一般市民は当惑している。家族とともに平昌を訪れた30代の起業家男性は、「国は会場の長期的な活用プランを事前に立てておくべきだった」と話した。

「あれだけのお金を投資しておきながら、維持コストが高すぎるのを理由に施設を捨て置くなんて、韓国国民として理解しがたい」

【翻訳編集】AFPBB News