鉄道車両の車体には、「モハ415」や「キハ283」といった車両番号のほかにも、いくつかの記号が書かれています。下向きの三角形「▽」や矢印「↓」、ひし形「◆」などがありますが、これらはどのような意味があるのでしょうか。

「小さな逆三角形」はいざというときのため

 鉄道車両の車体には、車両番号や会社のマークなどのほかにも、いろいろな記号や文字が書かれています。


車体の下方に書かれた矢印の下に非常ドアコックのレバーがある(児山 計撮影)。

 たとえば、ほとんどの車両に付いている小さな逆三角形「▽」、もしくは矢印「↓」は、「非常ドアコック」の位置を示すものです。マークの下にはレバーが付いており、このレバーを操作すると乗降用のドアを外から手動で開けられます。

 なぜ外からドアを開ける必要があるのでしょうか。それは事故などにより車掌の操作でドアが開かなくなった際に、乗務員や救助隊員が外からドアを手で開けて、乗客を避難誘導させる必要があるためです。

 最近ではホームドアの設置によって、車体の下のほうにマークを書いても見えなくなってしまったことから、窓と同じ高さにマークを付けている例もあります。

 なお、非常ドアコックは車内にも設置されていますが、これらをみだりに操作すると法律により罰せられます。

ほかにもこんな「業務用記号」が

 非常ドアコック以外にも、鉄道会社によってはいろいろな「業務用記号」が車体に付いています。


ひし形「◆」が付いた車両は中央本線のトンネルを通過できる(児山 計撮影)。

 おもに首都圏を走るJRの電車には、車両番号の前に黒いひし形「◆」が付いているものがあります。これは「中央本線の高尾(東京都八王子市)〜南木曽(長野県南木曽町)間に乗り入れできる車両」という意味です。

 中央本線には、電化されていない時代(車両に電気を供給する架線が線路上空にまだ張られていない時代)に掘られた天井の低いトンネルが複数あります。それらトンネルは後年に電化され(架線が張られ)ましたが、標準規格より天井が低い、すなわち架線の位置も低いため、標準規格の電車は入れません。

 そこで中央本線で使われる電車は、この天井の低いトンネルも通過できるよう屋根を低くしたり、小型のパンタグラフを採用したりするなどの対策を施しています。その車両に「◆」の記号を付けているわけです。

 ちなみにこの「◆」は、中央本線で現在使われていない車両にも付いていることがあります。臨時列車で中央本線を走る可能性がある、などのためです。

 このほかJRでは、丸数字の(1)(2)が車体の隅に書かれた車両があります。これは車両の向きを示す記号です。運転台のない中間車の場合、前後の見分けがつきにくい場合がありますが、丸数字を付けることで、車両の向きが分かります。

 さらに細かく見ていくと、車体には保安装置の識別や部品の収納位置を示す記号、新幹線の床下カバーにはその中にどんな機器が搭載されているかといった文字が書かれています。いつもと違う視点で車体を眺めてみると、思わぬ文字の「発見」があるかもしれません。