ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 話題の多かったGIフェブラリーSが終わり、年明けから早くも2カ月が経とうとしています。週中には非常に暖かい日もあって、春の訪れを感じました。そう、春のGIシリーズ開幕まで、まもなくですね。

 そして今週、関東ではGII中山記念(2月24日/中山・芝1800m)が行なわれます。GIシリーズの幕開けを間近に感じさせるのに十分な、豪華なメンバーがそろいました。

 近年は、例年3月末に開催される『ドバイワールドカップデー(※)』に向かう馬の壮行レースとして認知され、昨年もヴィブロス、それ以前にもリアルスティールやドゥラメンテ、ジャスタウェイなどがここをステップにして、ドバイでの好走につなげています。2011年にここを勝って、GIドバイワールドC(ダート2000m)を制したヴィクトワールピサもまだ記憶に新しいところです。
※UAEのドバイで国際招待競走が開催される日。同日はGIやGIIなど複数の重賞レースが行なわれる。

 また、一昨年から大阪杯(阪神・芝2000m)がGIに昇格。中山記念の勝ち馬には同レースへの優先出走権が与えられるようになり、大阪杯へのトライアルレースといった側面もあります。

 そうした状況にあって、今年もGI馬が5頭も集結。出走頭数は決して多くはありませんが、注目のひと鞍であり、見応えのあるレースになることは間違いないでしょう。

 まず注目は、今や現役ジョッキーの中で”第一人者”という存在にあるクリストフ・ルメール騎手が手綱をとるディアドラ(牝5歳)でしょう。

 今回、昨年のクラシックでルメール騎手が主戦を務めたステルヴィオ(牡4歳)も出走。昨年のGIマイルCS(11月18日/京都・芝1600m)を制した同馬に乗ろうと思えば、乗れたと思います。

 また、ディアドラの次走はGIドバイターフ(芝1800m)の予定。そうです、昨年牝馬三冠を達成し、GIジャパンC(11月25日/東京・芝2400m)も完勝したアーモンドアイが出走予定のレースと同じです。つまり、同馬の主戦ジョッキーであるルメール騎手は、次走でディアドラには乗れないわけです。

 にもかかわらず、ルメール騎手はディアドラを選択。それだけ、この馬の能力を高く評価しているのでしょう。日本のレースにおいては、他のジョッキーには譲りたくないのかもしれませんね。

 ともあれ、乗り役の視点で考えれば、その気持ちは非常によくわかります。

 ディアドラに関してもっとも驚かされるのは、牝馬とは思えないタフさと成長力。3歳クラシックのGI桜花賞(6着。阪神・芝1600m)を使うまでに8戦を要し、さらにその後、条件戦(500万下)を挟んで中1週でGIオークス(東京・芝2400m)に向かいます。並の牝馬であれば、その時点でもうガス欠でしょう。

 しかし、条件戦を勝ったあと、ディアドラはさらにパフォーマンスを上げてオークスで4着と健闘。正直、この時点でもかなり驚かされましたが、この馬がすごいのは、ここで終わらないところです。

 夏場は秋まで休養すると思っていたのですが、なんと8月の札幌で復帰。そこで条件戦(1000万下)を快勝すると、そこからGI秋華賞(京都・芝2000m)の前哨戦には、GIIローズS(阪神・芝1800m)ではなく、長距離輸送のあるGIII紫苑S(中山・芝2000m)に臨んだのです。

 そして、そのステップレースで難なく勝利を飾ると、そのまま秋華賞まで制覇してしまいました。さすがに、その直後のGIエリザベス女王杯(12着。京都・芝2200m)まではお釣りが残っていませんでしたが、そのタフネスぶりと成長力は驚異的です。

 思えば、昔の競馬はそんな感じでした。強い馬でも、トライアルから本番まですべてのレースを使っていましたからね。史上初の三冠牝馬メジロラモーヌは、トライアルでも全三冠を果たしています。使って使って成長していく、芯から強くなっていく――そんな雰囲気でした。ディアドラにも似たようなものを感じます。

 ディアドラは昨年、GII京都記念(6着。2月11日/京都・芝2200m)で始動。ドバイターフ(3月31日)で3着と好走しました。その後、休養明け初戦となった昨夏のGIIIクイーンS(7月29日/札幌・芝1800m)は楽勝。メンバーを考えれば、当然の結果でしょう。

 続く一戦は、GII府中牝馬S(10月13日/東京・芝1800m)。「もう間に合わない!?」というところから、凄まじい決め手を繰り出して快勝しました。ルメール騎手はここで、ディアドラから”何か”を感じたと思いますよ。

 叩きつつのタイプではあると思うので、今回、休み明けの分の割引は必要ですが、別定戦で斤量54kgは明らかに有利。格好はつけてくれると思います。

 ちなみに、ドバイではジョアン・モレイラ騎手がディアドラの手綱をとるようです。ドバイの地で繰り広げられる、アーモンドアイ、そしてヴィブロスを含めた”女傑”対決が楽しみですね。

 その他、中山記念に出走するGI馬は、スワーヴリチャード(牡5歳)、エポカドーロ(牡4歳)、先にも触れたステルヴィオ、そしてラッキーライラック(牝4歳)の4頭。昨年の大阪杯の覇者スワーヴリチャードは、今年はこのあとドバイ遠征の予定で、GIドバイシーマクラシック(芝2410m)に向かうようです。

 ここはそのステップレースとなりますが、基本的に右回り、それも中山コースに対する懸念材料はいまだに残るため、割引が必要でしょう。大阪杯で見せたような”まくり”がうまく決まればチャンスはありますが、はたして……。

 ラッキーライラックも、アーモンドアイとの差を考えると、厳しい戦いになるのではないでしょうか。今回は石橋脩騎手に手綱が戻るようなので、心情的には応援したいのですが……。

 ステルヴィオは、丸山元気騎手が鞍上を務めます。この起用は、大抜擢と言えますね。こういうときは、ジョッキーの心理として”勝負どころ”となり、力が入るところです。丸山騎手は、先週のGIII小倉大賞典を勝ったばかりで勢いもありますし、無視できないと思います。

 残る1頭は、昨年の皐月賞馬エポカドーロ。やや地味な存在で、意外と人気を落としそうですが、この馬こそ、侮れないと思いますよ。

 皐月賞を勝ったこともあって、以降はクラシックロードを歩んできましたが、基本的にはマイラー色が濃く、マイルから2000mぐらいの距離が合っているように見えます。そういう意味では、今回の1800mはベストでしょう。

 加えて、速い上がりが必要な東京コースよりも、小回りにも対応できる器用な脚が使える分、中山コースのほうが合っています。事実、同コースでは2戦1勝、2着1回という実績もありますから、今回の舞台は同馬にとってピッタリだと思います。


中山コースとの相性がいいエポカドーロ 大阪杯(3月31日)への叩き台ではあると思いますが、自信をつけるためにも、それなりに仕上げていきているはず。ここで勝てば、一躍大阪杯での主役候補となるでしょう。そんな期待がもてるエポカドーロを、今回の「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。