ミケル・エチャリのカタール戦レポートを読む>>

「日本の選手は攻撃精神がとても強い。ブラジルワールドカップの代表チームは顕著だったが、無意識に前がかりになってしまい、攻守のバランスを失っているときがある。アジアカップのグループリーグでもその気配が見えた。繰り返すが、攻撃しているときには守備の準備を怠ってはならない」

 スペイン人指導者、ミケル・エチャリ(72歳)はそう言って、アジアカップの日本代表を総括している。

 エチャリは選手のスカウティング、発掘、指導に優れている。1992-93からの3シーズンはレアル・ソシエダのBチームを率い、ホセバ・エチェベリア、ハビエル・デ・ペドロ、アグスティン・アランサバルなど、後にスペイン代表として長く活躍した選手たちを輩出している。同チームの強化部長としても、シャビ・アロンソなどとの契約に尽力した。

「森保一監督は選手を積極的に用いており、日本が変革期にあることは間違いない」

 そう語るエチャリは、アジアカップでプレーした日本人選手たちをどのように見たのか?

GK


6試合にフル出場した権田修一

権田修一(ポルティモネンセ)

 初戦、トルクメニスタン戦のプレーは不安定だった。抜け出した相手の決定機をセービングする場面はあったが、CKに対する守備では味方と被ってしまい、決定機を作られる場面もあった。失点に関しても、厳しい表現で言えば準備不足。PKになったシーンも、もう少し体を倒すのを耐えられたのではないか。

 ノックアウトステージに入ってからは安定感が増した。サウジアラビア戦は試合終了間際、前に出て決定機を防いでいる。ベトナム戦は吉田麻也との連係不足でピンチになったものの、窮地を救うセービング。立て続けに浴びたシュートも、敢然とブロックした。

 イラン戦は殊勲者のひとりだった。サルダル・アズムンのシュートを足で止めただけでなく、パンチング技術の適切さを見せ、未然にピンチを防いでいる。しかし決勝のカタール戦の1失点目は反応の鈍さが出た。トルクメニスタン戦もそうだったが、難易度の高いシュートに対しての準備、予測ができていない。


ウズベキスタン戦にフル出場したシュミット・ダニエル

シュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)

 ウズベキスタン戦の試合終盤、ダブロン・ハシモフのミドルシュートをしっかりと弾き出している。決定機を防いだ点は評価すべきだろう。

DF


6試合に先発した酒井宏樹

酒井宏樹(マルセイユ)

 大会を通して安定したプレーを見せた。トルクメニスタン戦は、クロスをブロックしたシーンで1点を救っている。オマーン戦はサイドを攻め上がって攻撃の厚みを作る一方、守備も盤石だった。ヨーロッパの高いレベルでプレーを経験している経歴は伊達ではない。

 ノックアウトステージに入ってからも高いレベルを示した。サウジアラビア戦ではチームとしてリトリートして守るなか、目につくミスはなかった。ベトナム戦も、右サイドで堂安律といい連係を見せた。決定機まで至らなくても、CKや味方のスローインに持ち込むなど、地味だが、今大会でもっとも輝いた選手のひとりだ。

 イラン戦は後半途中にケガで負傷交代するまで、堅実で力強い守備を見せ、カタール戦は右サイドで幅を作って攻撃を活性化していた。大会を通じて質の高いプレーだった。


6試合にフル出場した長友佑都

長友佑都(ガラタサライ)

 酒井と同じく、経験豊富さをピッチで証明。左サイドから奥深い位置まで駆け上がり、相手にダメージを与えた。たとえばトルクメニスタン戦の2点目は、ロングボールを原口元気が落とし、ゴールラインまで上がった長友が折り返して生まれている。オマーン戦も前半だけで2、3回、好機を作っていた。

 サウジアラビア戦は、チームが守りを固めるなか、最後まで集中を切らしていない。ベトナム戦では同サイドの原口と息の合うプレーを見せた。後半、オフサイドの判定を受けたものの、すばらしい攻め上がりもあった。イラン戦は時間、展開ごとに適切に落ち着いてプレーしており、後半には左サイドで効果的に深みを作っている。

 しかし、カタール戦はコンビネーションに苦しみ、攻め上がりも少なく、持ち味を出せなかった。


ウズベキスタン戦に先発、イラン戦は後半28分から出場した室屋成

室屋成(FC東京)

 ウズベキスタン戦で右サイドからの攻撃を活性化させていた。伊東純也とのコンビネーションは悪くなかった。技術精度の低いプレーはあったが、武藤嘉紀に送ったクロスは抜群だった。

 ノックアウトステージのイラン戦は酒井に変わって途中出場。右サイドを積極的に駆け上がったが、クロスの精度は乏しく、大きく流れている。


ウズベキスタン戦にフル出場した佐々木翔

佐々木翔(サンフレッチェ広島)

 ウズベキスタン戦に先発したが、相手の強力な攻撃に対して後手に回ることが多かった。失点シーンでも背後を取られている。


6試合にフル出場した吉田麻也

吉田麻也(サウサンプトン)

 トルクメニスタン戦では、2点目となる原口へのロングパスなど、好プレーもあった。しかし、2失点目のPKにつながる局面では、槙野智章とのポジションが離れすぎ、中央のスペースを与えて独走を許している。全体的に前への意識が強すぎた。オマーン戦は及第点のプレーだった。ビルドアップでは矢印を変えながら、空中戦では強靱さを見せ、高い集中力で守備の対応をしていた。

 ノックアウトステージでは、堅牢さを見せていた。サウジアラビア戦では前半に見事なブロックを見せ、決勝点となるCKでは、冨安健洋との連係で貢献した。ベトナム戦の前半、自陣でのバックパスを奪われたシーンは目を覆ったが、センターバックとしての守りは及第点。VAR判定で取り消されたゴールについて、ハンドは不可避だったようにも見えた。

 イラン戦は冨安とのコンビで、アズムンに仕事をさせていない。カタール戦の1失点目は、明らかに受け身になってしまっていた。3失点目となるハンドのPKはやや気の毒だった。セットプレーで高さを生かし、健闘していたが……。


トルクメニスタン戦、ウズベキスタン戦にフル出場した槙野智章

槙野智章(浦和レッズ)

 トルクメニスタン戦の2失点目となるPKに至るシーンでは、ポジショニングが致命的だった。ウズベキスタン戦は安定した守りを見せていたが、先制点を奪われたプレーでは、エルドル・ショムロドフに完全に走り負けていた。


6試合にフル出場した冨安健洋

冨安健洋(シント・トロイデン)

 トルクメニスタン戦ではMFとして起用され、積極的にシュートを放つなどしたが、攻める意欲が空回りし、ポジション(スペース)を明け渡していた。オマーン戦からはCBとしてプレー。守備は堅固で、南野拓実に送ったロングパスなどで非凡さも見せている。まだ若く、経験によって成長できる選手だろう。

 サウジアラビア戦では決勝点を決めている。CKに、吉田と動きを合わせながらマーカーの背後をとって、ボールを呼び込んだ。マークを外す動きはすばらしかった。ベトナム戦でも、ゴールにはならなかったものの、またもCKから柴崎のボールに合わせている。ただし、やや攻撃に対して意識が強すぎる場面があった。

 イラン戦は相手の高さ、強さに対抗。堅牢な守備を見せ、強力なアタッカーをほぼ完全に封じた。カタール戦は大きなミスこそなかったが、MFと連係が取れず、苦しんだ。


ウズベキスタン戦にフル出場した三浦弦太

三浦弦太(ガンバ大阪)

 ウズベキスタン戦では、槙野と連携し、及第点のディフェンスを見せた。決定機につながるクロスを跳ね返すヘディングもあった。

MF


3試合にフル出場、イラン戦の後半15分に退いた遠藤航

遠藤航(シント・トロイデン)

 オマーン戦で先発すると、前半は展開力の高さを見せ、トルクメニスタン戦で日本に足りなかった攻守のバランスを高めていた。ウズベキスタン戦も、途中出場で攻守のバランスを整えていた。

 サウジアラビア戦は、リトリートしたチームにあって、バランスを取る役割を堅実にこなしていた。終盤にはヘディングで合わせるシーンもあったが、シュートは外れている。ベトナム戦は柴崎と連係していたが、ポジションを空けるシーンもあった。

 イラン戦ではチームプレーヤーとして悪くないプレーを見せたものの、権田との呼吸が合わず、ピンチもあった。その後。イランの選手と接触し負傷退場。欠場した決勝は、チームとして攻守のバランスが取れず、逆にその存在感を感じさせた。


ウズベキスタン戦にフル出場した青山敏弘

青山敏弘(サンフレッチェ広島)

 ウズベキスタン戦では、塩谷司とのコンビで、配球役として攻撃を促していた。終盤はやや動きが落ちたか。


ウズベキスタンにフル出場、カタール戦でも先発した塩谷司

塩谷司(アルアイン)

 ウズベキスタン戦で先発。こぼれ球を叩いて、ミドルシュートの決勝点を決めた。青山と協力関係を保ち、いい出足の守備もあった。

 イラン戦で負傷した遠藤に代わって出場すると、カタール戦では先発出場。しかし、相手への寄せが甘かったり、寄せすぎてしまったりしていた。柴崎との連係が取れておらず、背後へのパスも簡単に通されている。
(後編につづく)

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