精力的に10年目のキャンプに臨んでいる広島・堂林翔太【写真:沢井史】

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3年ぶりに三塁挑戦「毎日でも特守を受けたいくらい」

 もう10年目なのか。広島のキャンプ地・日南で堂林翔太内野手の姿を見てふと思った。09年に中京大中京をエースとして夏の甲子園優勝に導き、一気にその名が全国区となったあの夏も、今は遠い昔のように感じる。

 だが、当時とは大きく変わらない表情を見ると、そんなに年月が経ったのかと思わされてしまう。高校では投手、外野手の2足のワラジを履いていたが、プロでは打者に専念してきた。毎年のように期待の星と言われながらの今年。「今年こそやらないと」と話す堂林の言葉ひとつひとつに、危機感が織り交ざっているのを感じる。

 2012年には144試合に出場し14本塁打をマーク。これからいよいよ1軍定着かと思われたものの、その年をピークに出場機会が減少し、33試合にとどまった年もあった。昨季の1軍出場も63試合。年を重ねるごとに若い選手が入っていき、今は自分より若くしてチームの顔になった選手も多い。

 期待に応えたいと思うのは毎年のことだが、もう応えたいと思っているだけでは済まない年代になった。今年は3年ぶりに三塁手としてプレーする予定だが、入団直後に挑戦したポジションとはいえ「悪戦苦闘だらけですよ」と本人が苦笑いするように、ゴロのさばきや動きには納得がいかないようだ。

打撃には徐々に手応えも「実戦練習が始まってから見えてくるものもある」

 この日のキャンプの練習メニューには特守のところに堂林の背番号「7」が記されているが、「今日だけでなく毎日でも特守を受けたいくらい。守備コーチに出来るだけ多めにしてくださいとお願いしているんです」と千本ノックでも受けようかという気合いを入れて、毎日ボールを追いかけている。

 逆に打撃に関しては徐々に手応えを感じている。「以前まであった無駄な動きが取れて、良い感じにはなっています。打球の質も悪くはないです。でも、まだ実戦練習が本格化していないし見えない部分の方が多い。実戦練習が始まってから見えてくるものもあると思います」と決して安心はしていない。

 期待が積み重なりすぎると、重圧にもなる。でも、そこは開き直ってまっすぐに自分のプレーに突き進むのも悪くはない。「周りに若くていい選手が入っても自分は自分。そう思いながらやっています」。10年目だろうが堂林は堂林。今年こそ、その曇った表情を吹き払うような爽快なプレーを見てみたい。(沢井史 / Fumi Sawai)