森保一監督(撮影:佐野美樹/PICSPORT)

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アジアカップで判明した日本の現状と課題は何か。今は決勝戦の勝敗だけでチーム作りがうまくいったかどうかを判断する時期ではない。

まず、これまではアジアカップに優勝すれば、ワールドカップのプレ大会となるコンフェデレーションズカップに出場することになっていた。だが、コンフェデレーションズカップが廃止されるため、アジアカップは、よりチームのテストという位置づけが強くなった。

次に日本はどのような状態で臨んだか。今回招集されるのではないかと思われていた選手が負傷していたり、選手のコンディションがあまりよくなかったのは間違いない。浅野拓磨、中島翔哉、守田英正、青山敏弘は途中離脱し、遠藤航、東口順昭は途中で別メニューの時期を過ごした。

その中で森保一監督はチーム作りをした。選手の適性や能力を観察し、コンディション作りの方法を模索し、戦術を選んだ。

では何が問題となったか。

1. イラン戦がコンディションのピークになった
2. 大迫勇也と他のFWではゲームの全体のパフォーマンスが違った
3. 戦術の修正力が足りなかった

1については、この大会でデータが蓄積されたはずで今後対策が打たれることは間違いないだろう。2と3は同じ原因を含んでいる。

森保監督は就任以来、4バックのシステムを使い続け、戦術を熟成させ続けてきた。そのバリエーションが少なかったため、相手に読まれやすく、また特定の選手がいないと機能せず、攻撃のみならず中盤のバランスを崩すとなかなか元に戻せなかった。

もっとも、このチームで臨機応変にシステムを変えたのは青山がいたパナマ戦のときだけ。森保監督の戦術をよく知る青山が下がって3バックを形成し、膠着したゲームに変化を加えた。今回はその青山が負傷を抱えており、ピッチになかなか立てなかったのも、戦術に変化を付けられなかった一因だろう。

カタール戦の敗戦は、1から3までの要因がすべて絡んできた。トップギアから一段降りてしまったコンディションで、大迫へのボールが寸断され、前半45分間は修正できなかった。相手が4バックか5バックか的を絞らせず、日本を混乱させたのとは対照的だった。

決勝戦の後、ミックスゾーンでも質問に答えた森保監督に「負けて課題が見つかってよかった」と言ったところ「勝っても負けても課題を修正するだけ」という返事だった。

たぶん、今後は新しい選手がどんどん試され、新たな戦術も加わっていくはずだ。チームの最初の段階としては、1つの戦術をきちんとこなせるメンバーが11人以上見つかっているということで、必要条件はクリアしたと言えるだろう。

【文:森雅史/日本蹴球合同会社、撮影:佐野美樹/PICSPORT】