リコーが開発を進める車載用ステレオカメラ

写真拡大

 「一眼カメラ市場のミラーレス化は加速し、2020年で全世界の販売台数は一眼レフを抜くだろう」。オリンパスの笹宏行社長は、高級ミラーレスカメラ「OM―D E―M1X」の発表会で、今後のデジタルカメラ市場の動向を述べた。

 18年度の後半から相次いだミラーレスカメラブーム。キヤノンやニコン、パナソニックはイメージセンサーがフルサイズ型の戦略商品を発表し、富士フイルムやソニーもAPS―c型の新モデルをそろえた。デジカメはミラーレスシフトがより鮮明になっている。

 カメラ映像機器工業会によると、デジカメの出荷台数は10年の1億2146万台から17年は2497万台にまで減少した。ただ、ミラーレスの比率は増え、日本での出荷台数はすでに一眼レフを逆転。ミラーレスという伸びる市場が主戦場になりつつある。

 とはいえ、ミラーレスの成長がどこまで持続するかは読めない部分がある。「今は一眼レフからの買い替えが起きているだけ」(業界関係者)。トリプルカメラなどスマートフォンのカメラ機能が発展するのに伴い、ミラーレスもやがてピークを迎える。

 もはや、デジカメ市場が上昇しないことは経営の前提となる。そこで各社が成長戦略として目を付けるのが、IoT(モノのインターネット)時代を見据えた産業用カメラ。ネットワークカメラでは競技場などの監視用だけでなく、人の動きの変化を時系列で把握できるため、マーケティング用途にも需要の伸びが期待される。

 車載用カメラや医療も有望分野だ。リコーは小型ステレオカメラをデンソーと共同開発。山下良則社長は「デジカメ市場で鍛えた技術が、車載でも生きている」と強調する。

 IoTが本格的に普及すれば情報を画像として取り込むカメラの役割はさらに高まる。IoT時代を見据えた布石を打つ企業もすでにある。

 キヤノンはイスラエルの映像解析を得意とするブリーフカムを買収。御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者は「今後もソフト技術に優れた会社の買収は選択肢だ」と話す。ニコンも自動運転の重要パーツであるレーザーレーダー「LiDAR(ライダー)」を手がける米ベロダイン・ライダーに出資。リコーはルクセンブルクの車載センサー大手IEEと連携し、車内センシング用の小型ステレオカメラを開発した。

 消費者向けのデジカメからBツーB(企業間)向けをより意識した戦略にシフトすることで、カメラ各社は新たな成長像を写し出そうとしている。
(文・杉浦武士)