世界経済の減速が日本の不動産市場に悪影響を及ぼす可能性も

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 長らく首都圏を中心に不動産価格が高騰を続け、“局地バブル”の様相を呈してきたが、ここにきて新築マンションの契約率が50%割れを記録するなど不穏な状況となっている。では、現実に不動産局地バブルが崩壊したら何が起こるのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が予測する。

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 現在のような不動産価格の高騰が始まったのは、2013年のアベノミクス開始以降のことだ。特に2014年の10月末に異次元金融緩和の第2弾、いわゆる「黒田バズーカ2」が発表されてからは、バブルと呼ぶべき現象が起こった。

 しかし、これは主に東京の都心とその周縁、城南エリアと川崎市や京都市の一部での地域限定での現象。だから私は「局地バブル」と呼んできた。

 今、バブル地域はグラデーション的に広がりつつある。大阪市内や東京の近郊でも新築マンションの販売価格が2割程度上昇している。しかし、販売は絶不調と言っていい状況だ。建物が竣工しても販売が続く「完成在庫」になる物件の割合が急上昇しているのである。

 では、この局地バブルはいつ終わるのだろうか? 現象を引き起こした異次元金融緩和が続く限り、バブルは終わらないと考えることもできる。日本銀行の黒田東彦総裁はことあるごとに「物価上昇率2%の目標達成まで今の政策を続ける」と言明している。

 じつは昨年の秋、一時的に円安が進行したときに物価上昇の気配が感じられた。しかし、米中貿易戦争への観測で円高への逆流現象に転じた。その後、物価もすっかり落ち着いた感じになっている。

 しかし、そもそも「2%の物価上昇」というのは、2014年時点で日本が陥りそうになっていた経済減速を回避するという大きな目標を見定めるためのひとつの指標に過ぎなかったはずだ。すでに日本の景気は戦後最長の拡大を続けている。不況感はほとんどない。多くの企業は5月頃に空前の好決算を発表するだろう。なのに、まだ「2%の物価上昇」にこだわる必要があるのか。手段が目的化している──と言わざるを得ない。

 かつて2005年から2008年頃の不動産市場は「ファンドバブル」と呼ばれた。最初は海外、その後は国内勢も交えて日本国内の不動産が買い漁られた。そのファンドバブルはリーマンショックによって一気に崩壊した。結果、マンションデベロッパーがバタバタと倒産した。

 今回も、この局地バブル崩壊は海外での大きな事件がキッカケになる可能性がある。事実、心配の種はいくつもある。

 まず、世界第2位の経済大国であり、日本にとっての最大の貿易相手国である中国が、アメリカとの対立によって不況に陥っている可能性がある。今後は、さらにひどい状況になって日本の企業業績に悪影響をもたらすことも想定できる。

 イギリスは平和裏にEUから脱退できない可能性がある。そうなるとイギリスに進出している多くの日本企業は苦境に陥るはずだ。EUにとってもイギリスの離脱は大きな経済的混乱要因だ。その影響は世界に波及するだろう。

 一方、米中の貿易戦争はアメリカの一人勝ちに終わるとは思えない。アメリカにも少なからぬ影響があるはずだ。アメリカの経済が減速することが、日本経済に悪影響を与える。

 振り返って、日本の不動産市場にはピークアウト感が広まっている。昨年の「かぼちゃの馬車・スルガ銀行事件」によって、個人向け不動産担保融資が引き締められている。その結果、個人投資家向けの収益物件はハッキリと値下がり傾向を示している。中古マンションも、一般人の目に触れる売り出し価格に大きな変化はないが、仄聞する成約価格は下降線をたどっている。

 ただ、新築マンションの値上がり傾向は継続、拡大中である。昨年も都心の事業用地は高値の売買が続いた。

 しかし、新築マンションデベロッパーの多くは「もう限界だろう」と考えている。今より高く買っても売れないのは目に見えている。それでも売り物を作らなければいけないから惰性で買っているだけだ。まさに過去2回のバブル末期と同じ現象といえる。バブル崩壊がハッキリと見えないと、企業組織としては「もう買わない」という方向へ舵が切れないのだ。

 また、このままでは10月から消費税が上がってしまう。そうしたことを考慮すると、早くて2019年中、遅くとも2020年の後半には今の局地バブル崩壊が見えるのではないか。

 では、その後にどんなことが起こるのか。簡単に予測してみる。

・不動産投資ブームで資産を拡大させた個人投資家(サラリーマン大家など)の大量破産、あるいは自殺の急増
・経済合理性を欠いた水準まで値上がりした湾岸エリアのタワーマンション流通価格が暴落
・リート(不動産投資信託)の資産内容悪化から価格が急落(利回りは多少上昇)
・リーマンショック時にも生き残った独立系専業のマンションデベロッパー数社が倒産
・大量に売れ残っている郊外の新築大規模マンションで大幅値引き販売が急増
・都心エリアでは局地バブルで値上がり傾向を続けた中古マンションが可視的に値下がり

 以上のような現象は、ここ5年の局地バブルで起こったことの揺り戻しである。その他、予測不能なこともたくさんあるはずだ。

 今回、日本経済が不況に陥るとリーマンショックの時よりも深刻化する可能性が高い。10年前は中国やアメリカには金融政策の選択肢が多かったが、今はあまりない。日本に至っては、撃てる弾は全部撃ち尽くした“弾切れ”状態だ。

 本来なら弾を補給するための金融引締め(利上げ)を2017年頃から始めておけばよかったのが、時すでに遅し。暗い未来はあまり予想したくないが、明るい材料が少なすぎる。