日本が5度目の優勝をかけてカタールと対戦するアジアカップ決勝。そのポイントについて語った塩谷司(アルアイン)の言葉が、森保ジャパンの本質を言い当てていた。

「したたかにずる賢く、あとは走るところ、戦うところ、サッカーのベースとなるところで相手を上回っていくことが大事になると思います」


アジアカップ制覇まであと1勝に迫った森保ジャパン

 ボールを握ることを重視しているわけではなく、自分たちのサッカーを貫くことに美学を感じているわけではない。ボール支配率が30%を割ったサウジアラビア戦のように、割り切って引いて守ることもいとわない。

 その一方で、ロシア・ワールドカップから継続して4-2-3-1のシステムで戦い、ベトナム戦やイラン戦の後半のように、後方からのビルドアップや前線中央のコンビネーションを駆使して、2列目のアタッカーたちの能力を最大限に活かそうともする。

 つまり、「カメレオン的な」と長友佑都(ガラタサライ)が言うように、森保ジャパンの顔はさまざまなのだ。とりわけ、今大会では前半はロングボールを多用しながら手堅く進め、後半に入って勝負に出るゲーム運びが際立っている。

 ハリルジャパン的であり、西野ジャパン的でもある――。だが、それも当然のことなのだ。森保一監督自身がこんなことを言っているのだから。

「これまでの代表監督のいいものは、積極的に引き継いでいきたいと思っています。それは西野(朗)さんだけじゃなく、ハリル(ホジッチ)さんもそう。日本代表の歴史を大事にしていきたい」

 そんな森保ジャパンにとってカタールは、試金石として打ってつけの相手だろう。

 育成年代からの”スペイン化”の成果が表れ、中東のチームらしからず、戦術的に極めてよく整備されたチームだ。4-3-3と3-5-2(5-3-2)を使い分け、ディフェンスラインからのボールの動かし方や運び方、相手へのプレスの掛け方やパスコースの切り方からは、間違いなくゲームモデルが存在することをうかがわせる。

 おまけに1トップの19番アルモエズ・アリは今大会、絶好調で、すでに8ゴールをマークしている。「まるでチーターのようですね、彼は」と長友が評したこのエースストライカーだけでなく、左ウイングの11番アクラム・ハッサン・アフィフ、右ウイングの10番ハサン・アルハイドスと、攻撃陣にタレントを抱えている。

 とはいえ、戦術的にカオスなチームよりも、統制の取れたチームのほうが分析しやすいという利点もある。それに、個人レベルのミスもかなり散見され、個々の能力では日本に分がある。組織としてのカタールの強みをいかに封じ、ほころびを突けるかどうか。

 おそらく前半はこれまでどおり、手堅くゲームを運び、牽制しながら相手の出方を観察し、見極めることになるだろう。その45分間でどこに勝機を見出し、後半にそれを手繰り寄せるか。柴崎岳(ヘタフェ)もこんなふうに語っている。

「相手の情報は入れますけど、試合に入ってみて、対応力をもって柔軟に相手に対してプレーしたいと思います」

 一見、面白みを欠く前半に、勝利への布石が打たれているはずなのだ。見る側は、それを楽しみたい。

 カタールはUAEとの準決勝でふたりの選手を出場停止で欠いていたが、決勝はベストメンバーで臨むことが予想される。一方、日本はイラン戦で左太もも裏を痛めた遠藤航(シント・トロイデン)の欠場が濃厚だ。これまで出色のプレーを見せていただけに、遠藤の不在は痛いが、だからこそ、指揮官の言う「総合力」が問われることになる。代わりに入る塩谷のパフォーマンスと、周りの彼へのサポートに注目したい。

 準決勝でアジア最強と謳われるイランを3-0と撃破し、ともすれば、油断の生まれやすい状況にある。さらに、UAEとカタールの国交断絶により、カタール人のUAE入国は原則禁じられているため、カタールサポーターはスタジアムに入れない。おそらく決勝は、日本が白装束をまとったUAE人の後押しを受けるという、一種、異様な雰囲気になるだろう。精神的に難しいシチュエーションであるのは間違いない。

 それでも焦れずに、冷静にゲームを進められるかどうか。もし、チームがナイーブになったとき、森保一監督は立て直すことができるか。この特殊なファイナルを乗り越えて栄光を掴み取って初めて、森保ジャパンは真価を証明することになる。