提供:週刊実話

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 1月15日に米連邦議会の超党派議員が強力な中国制裁法案を提出した。これは大統領権限をさらに強化するもので、米国の輸出管理法違反の中国の通信メーカーを制裁するのが目的だ。

 米国は「ファーウェイはスパイ機関だ」と確定的に分析しており、ファーウェイ、ZTE以外の通信メーカーにも対象を広げるようだ。こうした米国の対中ハイテク輸出規制強化は日本や台湾、韓国経済を直撃し、ハイテクメーカーは株価を大幅に下げ、好況見通しを消し去った。

 米国は対中技術輸出に厳格な規制を導入するが、中でも先端技術14分野は「国防権限法」により、海外への技術流出は大幅に制限される。その場合、運用次第では各国の対中輸出も大打撃を受ける。

 「規制されるのはAIやバイオ、測位テクノロジー、マイクロプロセッサー、次世代コンピュータ、データ分析技術、ロボット、先端的材料などです。その多くは日本企業に関連が深く、ICなどは米国の基本特許を使っていたり、クロス・ライセンス契約による技術が多いため、実際には米国が国防権限法の運用を強めれば強めるほど日本企業の対中輸出も縮小せざるを得ません。台湾や韓国も同様です」(国際経済アナリスト)

 ちなみにピーク時の2018年10月3日に比べ、19年1月8日までの株価激減率は以下の通りだ(▼はマイナス)。

・TDK:▼38.2%
・アップル:▼35.0%
・サムソン(韓国):▼28.5%
・鴻海精密(台湾):▼25.9%
・日本電産:▼25.5%
・マイクロソフト:▼25.3%
・村田製作所:▼18.8%
・TSMC(台湾):▼17.1%
・テキサツインスツルメント:▼12.8%

 これらの大幅下落には「アップル・ショック」も影響している。アップルのティム・クックCEOは、1月4日に「2018年第四四半期のスマホ売り上げ激減」と発表し、また「2019年第一四半期の生産予定は10%減らすことになる」と衝撃的な予測を語ったため、各国の市場は株価激安に見舞われた。

 「アップルは売上高の予想を下方修正したものの、まだ利益の下方修正をしていません。が、このアップル不振に対して、トランプ大統領は、米国で生産をしない企業の面倒を見ないし、中国生産が落ちても中国が困るだけだとつれない反応ですから、大きな回復は見込めません。このアップル・ショックは日本、台湾、韓国というスマホ部品、中枢部品、液晶パネル、高純度材料、組み立て、販売というビルトイン・システムを根底的に揺らすことは明らかで、また結果的にアップルは、時価総額首位の座をマイクロソフトに譲っています」(経済ライター)

 これらのニュースが日本市場にもたらした心理的悪影響は「日本電産ショック」となって表面化した。日本電産の永守重信会長は「18年10月から異常な注文減少に直面している。未曾有の注文減少だが、中国ばかりか欧州でもビジネスが悪化している」と記者発表したのだ。

 日本電産はすでに19年3月決算の売り上げをマイナス350億円に下方修正しており、ほかに安川電機、日立建機などが売り上げの下方修正を発表した。村田製作所も部品出荷激減を認めている。

 日本企業は決算のピークを控え、日本電産の大幅下方修正に続いて、中国依存度の高いミネベア、ダイキン、信越化学、SMC、マブチなどが株価下落に見舞われており、続いて新日鉄住金、ファナック、コマツなどの株価も揺らした。またシャープを買収した液晶パネルなどの大手「鴻海精密工業」は河南省鄭州工場で5万人、ほかの工場を含めて、10万人のレイオフを実行した。とりあえず15万人ということだから今後もレイオフは続く。

 永守会長は今回のハイテク不況を「リーマンショック級」と分析しており、とすれば、今秋の消費増税は見送られることになるかもしれない…。