「乾は好調アラベスで輝けるか。新天地で待ち受ける“吉報”とは」

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現地時間の1月24日、スペイン1部のアラベスはベティスより日本代表MF乾貴士を獲得したと発表した。

今季からベティスに新天地を求めた乾だったが、セルヒオ・カナレス、ジョバニ・ロ・チェルソらの活躍に押され、リーグ戦は8試合の出場にとどまった。

しかし、エイバル時代にレギュラーを張り、ロシア・ワールドカップでのハイパフォーマンスも記憶に新しい技巧派には複数クラブが獲得を画策。冒頭の通り、アラベスへ今季終了までのレンタルで旅立った。

乾が新たに所属するアラベスは、20試合を終えて5位と目下躍進中。スモールクラブが見せるその戦いぶりには注目が集まっている。

今回の当コラムでは、そんなアラベスの基本メンバー及び戦術をチェックしつつ、乾の活躍度合いについても予想していきたい。

■About ALAVES

本題に入る前に、アラベスの基本情報をおさらいしておきたい。というのも、アラベス自体、多くの日本人にとってあまり馴染みのないクラブだからだ。

設立は1921年で、本拠地はバスク州のビトリア=ガステイス。1部よりも2部で過ごすことが多いクラブではあるが、2000-01シーズンにはUEFAカップ(現・ヨーロッパリーグ)で準優勝、2016-17シーズンにはコパ・デル・レイで準優勝に輝くなど、カップ戦での躍進が話題を呼ぶこともある。

コパで準優勝した2016-17シーズンは11シーズンぶりに1部で戦い、9位でフィニッシュ。翌シーズンは14位で終え、今季はここまで5位と旋風を巻き起こしている。

過去に所属した選手で著名なのは、あのヨハン・クライフの息子であるジョルディ・クライフ、元ルーマニア代表のコスミン・コントラとアドリアン・イリエ、Jリーグでもプレーした元スペイン代表のフリオ・サリナスだ。セルタでの活躍で知られる元ロシア代表のアレクサンドル・モストヴォイは、アラベスで選手生活を終えている。

他には、現指揮官のアベラルドと2年前にコパ準優勝へ導いたマウリシオ・ペジェグリーノ(現・レガネス監督)がかつてプレーしていた。現在バルセロナを率いるエルネスト・バルベルデも実は所属していたことがある。

■基本システムは王道の4-4-2

アラベスが展開するのは、ハードワークを前面に押し出したソリッドな堅守速攻だ。

アトレティコ・マドリー、ヘタフェ、町田ゼルビアとベースは同じであり、クラウディオ・ラニエリ時代のレスター、手倉森誠時代のベガルタ仙台と重なる部分が多い。

守護神はレアル・マドリーの下部組織出身であるフェルナンド・パチェコ。

最終ラインは右からマルティン・アギーレガビリア、DFリーダーのビクトル・ラグアルディア、右SBもこなすシモ・ナバーロ、ルベン・ドゥアルテの4人。

中盤センターはトマス・ピナとキャプテンのマヌ・ガルシアで、サイドハーフは右にルベン・ソブリノ、左はブルギまたはジョニー。

最前線はジョナタン・カジェリとボルハ・バストンの2トップで、スウェーデン代表のヨン・グイデッティがベンチに控える。

■乾に待ち受ける“吉報”

前段で触れた通り、アラベスが志向するのは堅守速攻だ。コンパクトな守備ブロックを形成し、手数を掛けないカウンターで逆襲に転じる。全員がハードワークを怠らず、最後まで諦めず戦う実直なチームである。

乾が所属していたベティスは、ポゼッションを高めてゲームを支配するチームであり、アラベスとは“真逆”のスタイルを志向していた。「ポゼッションが高くなる=相手の守備ブロックが低くなる」ということなので、ドリブラーが仕掛けるスペースは限られる。つまり、ドリブルが武器の乾にとって、持ち味を発揮しにくい環境だったのである。

転じてアラベスであれば、カウンターの際にドリブルで仕掛けるスペースも増え、その回数も多くなることが予想される。思えば3シーズン在籍したエイバルも堅守速攻を標榜しており、アラベスではすぐに適応できるはず。エイバルで鍛えた守備力も存分に発揮できるだろう。

アラベスは1月にサイドアタッカーのイバイ・ゴメスをアスレティック・ビルバオに放出しており、前線はやや手薄となっていた。左サイドハーフでの起用が予想される乾は即戦力として迎えられており、期待は大きい。アジアカップから戻ってくれば、すぐにメンバー入りするだろう。

ライバルと目されるブルギとジョニーには連係面で劣るが、全体的なクオリティーでは上回っているだけに、レギュラー獲得は現実的だ。ベティスでの挫折を経て、バスクの地で暴れる姿に楽しみにしたい。

2019/01/27 written by ロッシ